どんな快楽も3か月すると飽きてしまうのはなぜなのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
どんな快楽も3か月すると飽きてしまう「快楽の踏み車効果」を脳科学で説き明かします。
サウナブームはいつまで続く?
快楽の踏み車効果の脳科学
- 脳にはどんな快楽も3か月すると飽きてしまう「快楽の踏み車効果」がプログラムされています。
- 「快楽の踏み車効果」は人類が生き延びていくためには欠かせない機能ですが、現代では不安や不幸を増幅させるだけのやっかいな機能にすぎません。
- 「快楽の踏み車効果」に関する知識を身につけて、正しく対処することで、飽きの来ない素敵なサ活を楽しんでください。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ―達は至高のサウナトランスを味わうためにサウナに通うわけです。
みなさんは、何かに満足したり幸福感や快楽を感じたりした時、どのくらいその感情が持続しますか?
逆に言えば、どのくらいで飽きがくるでしょうか?
脳にはどんな満足や幸福を感じても、すぐにその状況に慣れてしまい、「もっといいことはないか」とさらなる快楽を求めてしまう…という傾向があります。
これを「快楽の踏み車効果」と呼びます。
脳はしばらくすると飽きてしまい、さらなる快感を求めてしまいます。
この原理からすると、いつかはサウナブームは終息していくのかもしれません。
「快楽の踏み車効果」のワナ
快楽の踏み車効果
『快楽の踏み車効果』
「あることで一度満足すると、次に同じことを体験しても、人は満足することができない」という心理学用語。
ホイールの中を走るハムスターが決して前に進めないのと同じように、人間の喜びも同じ位置にとどまり続ける心理学的側面を表した言葉。
アメリカの社会心理学者であるデヴィッド・G.マイヤーズは、人間の幸福感について調査をして、
「情熱的な愛、精神的な昂(たかぶ)り、新しい所有の喜び、成功の爽快感など、すべての望ましい経験はいずれもそのとき限りのものである。この点はいくら強調しても足りない。」
と報告しています。
つまり世間一般の人が思う幸せは、一瞬のものであり長くは続かない…これこそが「快楽の踏み車」です。
たとえば宝くじで1億円が当たったとしましょう。
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あなたはどんな気分になりますか?
そしてその気分はどのくらいの時間保たれますか?
政治でも経済でも社会でも日常生活でも、どんな分野においても、脳は「予測」をすることがとても苦手です。
専門家の予測でも、素人が適当に数字を選んだ予測でも、最終的に正解率はそれほど変わらないとさえ言われています。
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では自分の感情くらいは自分でちゃんと正しく予測できるものなのでしょうか?
宝くじで1億円が当たったら、ずっと幸せを感じていられるのでしょうか?
アメリカのハーバード大学の心理学者が宝くじの当選者を調査した結果、当選した時の幸福感は平均して3か月で消えてしまうという報告をしています。
宝くじで1億円を手に入れても、3か月後にはあなたはそれ以前に感じていたのと同程度の幸せ、あるいは不幸せを感じるようになるというのです。
たとえば宝くじで手に入れた1億円で、騒がしい街中を離れ、郊外に新居を建てたとしましょう。
夢のような豪邸には、寝室がいくつもあり、素敵なサウナ、プールも完備しています。
広々とした庭からの景色は最高で外気浴をするにはもってこいの環境です。
これ以上ない新居に何の不満があるでしょう?
しかし新居に引っ越して幸せいっぱいの時間はそう長くは続きません。
時間がたつにつれて満足感は徐々に減っていき、3か月後には満足感は完全に消失し、せっかくの豪邸も特別なものではなくなってしまうのです。
さらに不満までで始めます。
郊外にある豪邸から職場までは車で1時間もかかります。
ある調査によれば、通勤の手段として自家用車を利用する場合がもっとも不満が大きく、時間が経っても慣れることはない…と言われています。
豪邸のサウナは手入れが大変で、わざわざサウナを準備するのであれば、今まで通い慣れたサウナの方がよほど快適です。
このようにして最初は幸せで満ち溢(あ)ふれていた豪邸は、結果的にあなたの人生においてマイナスでしかなくなってしまうのです。
こんな話は信じられない…
自分なら幸せいっぱいで豪邸に住み続けるのに…
そのように思う人もいるでしょう。
しかしどんな快楽も3か月もすると「快楽の踏み車効果」によって飽きてしまうように、脳はプログラムされているのです。
「快楽の踏み車効果」が存在する理由
ではなぜ脳には「快楽の踏み車効果」といったやっかいなものがプログラムされているのでしょう?
なぜ人間は永遠に満たされることのない欲望とイタチゴッコを繰り返さなければいけないのでしょう?
「快楽の踏み車効果」が存在する理由を一言で言えば、人類が未来永劫(みらいえいごう)繁栄して遺伝子をたやさないためです。
脳は幸せに慣れてしまうと、「無理しなくてもいい」「自ら苦痛を選択する必要はない」とより楽な現状維持を選ぶように仕組まれています。
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古代においては、人間は現状に満足して獲物を捕らえたり植物を採取したりするなどの食糧確保をせず過ごしていれば、やがて飢餓(きが)におちいり生き残ってはいけませんでした。
そのため、脳は常に現状に満足せず、「足りない」、「満たされない」と喚起(かんき)し続けました。
危険だと思うからこそ、不安だと思うからこそ、次を考えて行動できるのです。
ですから「快楽の踏み車効果」は、人類が生き延びていくためには欠かせないプログラムだったのです。
しかし現代において「快楽の踏み車効果」は、時に不要の産物となっています。
わざわざ手に入れた快楽を3か月程度で飽きてしまうシステムなんて、無駄なプログラムに他なりません。
なぜなら「足りない」、「満足できない」と思う感情は一般的に不幸なものだからです。
現代社会において生きづらいと感じる原因の多くは、「快楽の踏み車効果」のように人類が絶滅せずに生きながらえるように人間の脳に組み込まれたデフォルトの設定によるものです。
アメリカのある研究によれば、多くの人は余計な心配を抱えながら生きていると報告しています。
何かに不安を抱いている人の心配事の85%は実際には起きなかった。
心配事が現実になった場合でも、そのうち79%は予想より良い結果であった。
心配事が予想よりも悪く終わるのは全体の約3%にすぎなかった。
つまり、心配事の97%は最初から杞憂(きゆう)であり、脳が勝手に不幸を増幅しているにすぎないわけです。
しかしそのようなことがわかっていても、脳は現状に満足せずに飽きてしまうのです。
「快楽の踏み車効果」から逃れる方法
どんな快楽でも、良いことがあっても、すぐにその状況に慣れて飽きてしまい「もっといいことはないか」とさらなる快楽を求め始めてしまう…そんな「快楽の踏み車効果」に脳は縛(しば)られています。
ですから、たとえどんなに素晴らしいサウナに出会ったとしても、3か月も通い続けていると飽きてきて、「もっといいサウナはないのか…」と探し求めてしまうのです。
では「快楽の踏み車効果」から逃れて飽きることなく生きていくことは可能なのでしょうか?
先ほどもご説明したように、「快楽の踏み車効果」は人間の脳に組み込まれたデフォルトの設定によるものですので、完全に断ち切って逃れることは難しいでしょう。
しかし少しでも長く飽きることなく快楽を感じ続けるためのヒントは存在します。
そのいくつかをご紹介しましょう。
「快楽の踏み車効果」を知っておく
どんなことでもまずは知識を身につけることです。
”知識を身につける方法の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考効率的に知識を身につけて頭が良くなる方法を脳科学で説く
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たとえわずかな知識でも知っているのと知らないのとでは大違いです。
たとえどのようなことでも最初に満足や幸福を感じていても、3か月すれば飽きてしまい、さらなる快感を求めるものであって、それは自分が悪いわけでも他人が悪いわけでもありません。
いわば自然の摂理です。
ですからたとえ今までお気に入りであったサウナに飽きてしまい、他のサウナを探し求めても誰も何も悪いことはないのです。
「快楽の踏み車効果」をうまく利用する
「快楽の踏み車効果」を知っていれば、快楽を感じていられる期間があとどれくらいなのかの見当をつけることができます。
つまりポジティブ思考で考えれば、飽きるまで3か月も猶予(ゆうよ)があることになります。
ですからそのあいだに何か手を打てばいいわけです。
何もしなければほぼ確実に飽きがおそってきます。
たとえば、サウナの施設によっては、少なくとも3か月1度は何かイベントを催(もよお)したり、新しいグッズを発売したり…と変化をつけて飽きが来ないように仕掛けてきます。
変化があれば、またそこから新たな3か月が始まるわけですから、最終的にはいくら通い続けても飽きがこないことになります。
ですからこのような施設は脳科学的にはとても良い施設と言えるでしょう。
”COCOFUROたかの湯の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】COCOFUROたかの湯のミュージックロウリュを勝手に脳科学で探る
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「快楽の踏み車効果」を発動させない
「快楽の踏み車効果」は最初に満足や幸福を感じることから始まります。
つまりそこから3か月というカウントダウンが始まるわけです。
ですからいくら至高のサウナトランスを体感したからといって、その施設に通い続ければ3か月後にはほぼ間違いなく飽きが訪れます。
それを逆手にとるならば、その施設に通い続けなければいい訳です。
その施設が素晴らしいとわかっていても、あえていろいろなサウナを体感して、時々その施設を訪れるくらいがよいのです。
”はしごの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】2軒目、3軒目と「はしご」をしてしまうのはなぜなのか?はしごの意味を脳科学で探る
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そうすれば快楽の踏み車を踏み続けてくるくる回り続けることはありません。
こっちの踏み車、あっちの踏み車…とさまざまな踏み車を渡り歩いていれば、「快楽の踏み車効果」は発動されません。
自分の脳を自分の脳でバグらせて、うまくだますことです。
サウナブームはいつまでも続く
「快楽の踏み車効果」を知らずにお気に入りのホームサウナに通い、サウナトランスを味わい続けていれば3か月で飽きてしまいます。
これは避けられない事実です。
そうすればそこが新たなホームサウナになるかもしれませんし、結局元のサウナに戻ってくるかもしれません。
現在のサウナ事情はサウナブームのおかげでとても盛況です。
あらゆる施設で多くのイベントが行われ、新たなサウナグッズが発売され続けています。
“サウナハットの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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そのように考えているうちは「快楽の踏み車効果」に邪魔されず、3か月たっても飽きはこないはずです。
“快楽の踏み車効果の脳科学”のまとめ
どんな快楽も3か月すると飽きてしまう「快楽の踏み車効果」を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 脳にはどんな快楽も3か月すると飽きてしまう「快楽の踏み車効果」がプログラムされています。
- 「快楽の踏み車効果」は人類が生き延びていくためには欠かせない機能ですが、現代では不安や不幸を増幅させるだけのやっかいな機能にすぎません。
- 「快楽の踏み車効果」に関する知識を身につけて、正しく対処することで、飽きの来ない素敵なサ活を楽しんでください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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