なぜ小学生以下はサウナに入れないのでしょうか?
高齢者は何歳まで安全にサウナに入れるのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
サウナと年齢制限の関係を脳科学で説き明かします。
サウナと年齢制限
サウナと年齢制限の脳科
- 多くのサウナで「小学生以下は入室禁止」としている理由は、子どもは体温調節機能が未熟であり、熱中症や低体温症になりやすいからです。
- 高齢者、特に70歳以上でも体温調節機能が低下していることがあるので、サウナでは注意が必要です。
- 脳科学的には、若年者はサウナでストレス解消やリラクゼーション、中高年はサウナで認知機能の維持や改善に役立ちます。
- サウナは年齢別に異なる効果やリスクをもたらしますので、自分に合ったサウナの入り方を理解しましょう。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ―達は至高のサウナトランスを味わうためにサウナに通うわけです。
そのように思っている人は少なくないはずです。
中には明らかに小学生以下であろう子どもを連れてサウナ室に入ってくる大人を時々見かけます。
そういう人に対して、仮に「小学生以下の子どもはサウナに入ってはいけない」と注意したとして、「なぜ小学生以下の子どもはサウナに入ってはいけないのか?」と切り返されたら、みなさんは何と言い返すでしょうか?
たとえ「規則は守るべき」と主張してもおそらく納得はしてもらえないでしょう。
では、なぜ小学生以下の子どもはサウナに入れないのでしょうか?
さらに言えば、大人でも高齢者はサウナに入っても大丈夫なのでしょうか?
年齢の下限があれば上限があっても良いのではないでしょうか?
小学生以下がサウナに入れない理由
サウナに小学生以下が入れない最大の理由は、体温調節機能の未熟さにあります。
“サウナと体温調節の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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小学生以下の子どもは、高温のサウナ室では体温が上昇しやすく、めまいや不快を感じる可能性があります。
その原因となっているのが、自律神経とホルモンの発達が未熟なことです。
自律神経は、体温や血圧、心拍などを調節する神経系ですが、子どもはこの機能が十分に発達していないため、暑さや寒さに迅速にうまく対応できないことがあります。
また体温調節機能が未熟であると、暑い、寒いといった感覚が鈍くなります。
そのため自分の体調を言葉やジェスチャーで伝えることができず、まわりの人に「暑い」や「寒い」といった感覚をうまく訴えることができず、そのままでいることがあります。
その結果、サウナに入ることで熱中症や低体温症などの危険性が高まるのです。
サウナに入ることで体に起こる変化に対応できるかどうかは、個人差や体調によっても異なりますので、当然一概には言えません。
サウナの種類や温度、湿度もサウナの効果や安全性に影響します。
一般的には、ドライサウナ(湿度が低く、室温が70〜100度)よりもウェットサウナ(湿度が高く、室温が低い)のほうが、体温上昇が早く起こります。
また、フィンランド式サウナ(室温が80〜100度)よりもスチームサウナ(室温が40〜60度)のほうが、体温上昇が早く起こります 。
ですから、最初はウェットサウナやスチームサウナなどで保護者の監視のもと、体温調節の程度をしっかり理解する必要があります。
”スチームサウナの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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あえてサウナに入るのに最適な最少年齢を提示するのであれば、個人差や体調によっても異なりますが、8歳以上であることが望ましいと言えるかもしれません。
少なくとも5歳以下の子どもは利用を控え、5歳から10歳の子どもは大人と一緒に低温、短時間で負担がかからないように入るのが望ましいでしょう。
これらを総合して考えて、「小学生以下(12歳以下)はサウナ入室禁止」としてわかりやすく表示している施設が多いわけです。
日本以外の世界中のサウナを見てみると、年齢制限に関してはかなりばらつきがあります。
例えばドイツでは、1歳未満はサウナを使用しないことを推奨しています。
つまり1歳以上ではサウナに入っても良いとしているわけです。
しかし中には16歳以上、つまり高校生以上をサウナ入室可としている国もあります。
その理由は、「子どもが混じることでサウナの落ち着いた雰囲気を壊したくないから」、というものです。
この意見にはきっと異論反論があるでしょう。
子どもだからと言ってサウナのマナーを守れないと決めつけてしまうのは行き過ぎかもしれません。
実際に、おそらく中学生か高校生であろう子どもは黙浴をしてマナーを守っているのに、中高年の大人が大声で話をしていてサウナの雰囲気を台無しにしているシーンを幾度となく見かけたことがあります。
“サウナのマナーの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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いずれにしても、サウナの種類や温度、湿度を考慮して、まずは自分に合ったサウナを選ぶことが大切です。
高齢者もサウナは危険
サウナでは一般的に低年齢に関する年齢制限は設定されていますが、高齢者に対しては、年齢制限は設定されていません。
しかし体温調節が未熟なのは、なにも小学生以下に限った話ではありません。
年齢が上がってくると徐々に体温調節の機能は低下していきます。
そのため高齢者もサウナに入ることで熱中症や低体温症などの危険性が高まります。
これも、サウナに入ることで体に起こる変化に対応できるかどうかは、個人差や体調によっても異なりますので、当然一概には言えませんが、サウナは高齢者にとってもリスクがあることは事実です。
サウナは高温環境で血管が拡張し、血圧が下がります。
その後、水風呂などで急激に血管が収縮し、血圧が上昇します。
このような血圧の変動は、心臓や脳に負担をかける可能性があります。
特に高血圧や心臓病などの持病がある場合は、サウナに入ることで心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な事故を引き起こすリスクが高まります。
また、サウナでは大量の汗をかくため、脱水症状や電解質のバランスの乱れを起こす可能性もあります。
腎臓の機能が低下している高齢者は、水分補給や塩分補給を適切に行わないと、腎不全や尿毒症などの危険性があります。
サウナに入る際には、自分の体調や持病をよく把握し、無理をしないように注意する必要があります。
またサウナでの脳内の動きにも高齢者では一般成人と違いがあります。
サウナに入ると、脳内麻薬と呼ばれるエンドルフィンやセロトニンなどの神経伝達物質が分泌されます。
“サウナと脳内麻薬の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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これらの物質は、気分を高揚させたり、痛みを和らげたり、ストレスを軽減させたりする効果があります。
しかし、高齢者はこれらの物質の分泌量や感受性に一般成人と違いがあり、年齢と共に徐々に低下していきます。。
そのため、サウナに入ることで感じる快感やリラックス感にもかなり個人差があり、サウナトランスも感じにくくなる傾向があります。
またサウナに入ると、脳の活動状態も変化します。
サウナに入っている間は、脳波はアルファ波やシータ波と呼ばれるリラックスした状態を示します。
しかし、サウナから出て水風呂に入ったり、外気浴をしたりすると、脳波はベータ波やガンマ波と呼ばれる覚醒した状態を示します。
このようにサウナでは温冷交代浴によって脳の活動状態が切り替わりますが、高齢者はこの切り替えにうまく対応できないことがあります。
そのため、サウナに入ることで感じる集中力や創造力にも個人差がかなりあると言えます 。
以上のことから考えると、サウナでの最適な最高年齢は、個人差や体調によっても異なりますが、少なくとも 70歳以下であることが望ましいと言えるかもしれません。
これはあくまでも私見であり、決して70歳以上の高齢者がサウナに入るなと言っているわけではありません。
実際サウナの本場であるフィンランドやサウナが広く普及しているドイツでは、70歳以上の方でも日常的にサウナを利用している人は多いようです。
しかし70歳以上の高齢者がサウナに入る時は、かかりつけの医師の同意を得てからサウナを利用することをお勧めします。
ある日本の地域の消防本部が過去10年間に管轄地域内で起きた、サウナ利用者の緊急搬送に関する調査を実施しました。
その結果、70歳以上の高齢者が救急搬送されるケースが最も多かったことが報告されています。
搬送理由としては、失神・意識障害が最多で、続いて熱中症・脱水症状、脳卒中などの脳疾患となっています。
失神すると転倒のリスクが高まるほか、冷水浴中に溺れる恐れがあるため大変危険な状態となります。
しかし、サウナの温度や時間を調整したり、水風呂を控えたりすることで、リスクを低減することもできます。
サウナは健康に良い効果もありますが、高齢者にとってはメリットだけではなくデメリットもあるということを忘れないようにすることが大切です。
サウナと年齢の関係についての脳科学見解
脳科学の観点から、サウナが年齢別にどのように影響するかを見てみましょう。
まず、若い人にとってサウナはストレス解消やリラクゼーションに役立ちます。
”メディテーションサウナの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナに入ると、体温が上昇し、血管が拡張して血流が増えます。
これにより、脳に酸素や栄養が多く届き、脳の活動が活発になります。
また、サウナに入ることでエンドルフィンやセロトニンなどの快感ホルモンが分泌され、気分が高揚します。
さらに、サウナの熱で汗をかくことで老廃物や毒素が排出され、新陳代謝が促進されます。
これらの効果は、若い人の脳にとって有益であり、精神的なストレスや疲労を軽減することができます。
次に、中高年の人にとってサウナは認知機能の維持や改善に寄与します。
中高年になると、脳の血管が硬化したり詰まったりすることで脳血流が低下し、認知機能が低下するリスクが高まります。
しかし、サウナに入ることで血管が拡張して血流が増えるため、脳への酸素や栄養の供給が改善されます。
これにより、記憶力や集中力などの認知機能を維持したり向上させたりすることができます。
また、サウナに入ることで脳内の炎症を抑えたり神経細胞の老化を防いだりすることも可能です。
これらの効果は、中高年の人の脳にとって重要であり、認知症やアルツハイマー病などの予防に役立ちます。
最後に、高齢者にとってサウナは注意が必要です。
高齢者は体温調節能力が低下しており、サウナで過度に発汗することで水分や電解質を失いやすくなります。
これは脱水症状や低血圧などを引き起こす可能性があります。
また、高齢者は心臓や血管の機能も低下しており、サウナで血圧や心拍数が急激に変化することで心筋梗塞や脳卒中などを起こすリスクも高まります。
したがって、高齢者はサウナに入る際は医師の許可を得たり体調をよくチェックしたりする必要があります。
また、サウナの温度や時間を低く抑えたり水分補給を十分に行ったりすることも大切です。
以上のように、サウナは年齢別に異なる効果やリスクをもたらします。
“サウナと年齢制限の脳科学”のまとめ
サウナと年齢制限の関係を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 多くのサウナで「小学生以下は入室禁止」としている理由は、子どもは体温調節機能が未熟であり、熱中症や低体温症になりやすいからです。
- 高齢者、特に70歳以上でも体温調節機能が低下していることがあるので、サウナでは注意が必要です。
- 脳科学的には、若年者はサウナでストレス解消やリラクゼーション、中高年はサウナで認知機能の維持や改善に役立ちます。
- サウナは年齢別に異なる効果やリスクをもたらしますので、自分に合ったサウナの入り方を理解しましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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