大事な場面でホラを吹いてしまうのはなぜなのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 大事な場面でホラを吹いてしまう「戦略的ごまかし」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かします。
「ホラ吹き」ってどんな意味?
「戦略的ごまかし」の脳科学
- 物事を大げさに言うことを「ホラを吹く」と言い、専門的には「戦略的ごまかし」と呼びます。
- 「戦略的ごまかし」は1回限りの事案においては絶大な効果を発揮します。
- 「戦略的ごまかし」は見て見ぬふりをして深く追求しないことが得策です。
- しかし「戦略的ごまかし」によって自分に害が降りかかってきそうな時には「戦略的ごまかし」をしっかり見抜きましょう。
ホラを吹く
『法螺(ほら)吹き』
法螺(ホラ)を吹くとは、誰でもウソだとわかるような大げさなウソをついたり、ショボい男が「今度の仕事で十億円手に入る」といった夢のような話をしたりすることを言う。
「法螺」は法螺貝の意味で、吹くと大きな音がすることから、山伏が深山でお互いの連絡手段として使ったり、軍隊の進軍ラッパの代わりに用いられたりした。
そこから、法螺を吹き鳴らすように大言壮語することを「法螺を吹く」というようになった。
「法螺を吹く」といわれるようなウソは誰にも被害を与えないたわいないウソである場合が多く、悪意のあるウソは耳の中にストローで流し込むようにささやかれる。
みなさんもきっと一度や二度はホラを吹いたことがあるのではないでしょうか?
「ホラ吹き」と混同されやすい言葉に「嘘つき」があります。
“嘘つきの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ホラ吹きと嘘つきはどちらも事実ではないことを話すという点で似ていますが、基本的にはまったく違うものです。
「嘘つき」とは真実でないこと、あるいは人をだますために言う真実とは違う言葉をさします。
一方で「ホラ吹き」は物事を大袈裟に言うことです。
「ホラ吹き」の人の性格としては…
自分をより良く見せよう、すごい人だと思わせようとする見栄っ張り
普通の話を誇張して大袈裟にして人から注目されたい
努力をしないで話だけで人から褒められようとする
怒られたり責められたりしないように自分を守る行動をとりたがる
自分が出来ないことや苦手なことに対して劣等感を隠すためにホラを吹いて自分を大きく見せる
実際にあり得ないような空想や妄想が好き
このような性格が災いして「ホラ吹き」の人は話に一貫性がなく、他人から信用されなくなります。
しかし「ホラ吹き」も損なことばかりではありません。
「ホラ吹き」の人はとにかく話がうまくて注目を集めやすく、しかも人当たりがいいので人気者になりやすい特徴があります。
いずれにしても「ホラ吹き」には多くの場合、マイナスのイメージがついて回ります。
特に大事な場面に「ホラ吹き」はよく登場してきます。
今回は大事な場面でホラを吹いてしまう「戦略的ごまかし」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かします。
なぜホラを吹いてしまうのか?
履歴書は隙間がないくらいにぎっしりと書き込み、完璧に仕上げました。
面接では自分の能力やこれまでの業績を強調して、不利になりそうなことはなるべく言いたくはありません。
そして面接官に次のような質問をされました。
あなたは落ち着いた声でこう答えます。
しかし内心では不安でいっぱいです。
一体どうやってそんなことを実現すればいいのかわかりません。
しかし何としても面接に受かって入社したい一心でそのように答えてしまいました。
何よりもまずは面接で採用されることが第一です。
細かいことは後で考えればいいのです。
現実的な答えをしていては採用の見込みはありません。
「ホラを吹く」を専門用語で言い換えると「戦略的ごまかし」となります。
「戦略的ごまかし」は大きな危機に瀕している時ほど事実を誇張する傾向が強くなります。
しかし「戦略的ごまかし」はどんな状況でも機能するというわけではありません。
たとえば時計の調子が悪くなり修理に出したとしましょう。
そのように言われれば安心です。
しかしこれが5回連続で続いた挙句、一向に時計が直らなければあなたは間違いなくその修理人の言うことを真に受けなくなるでしょう。
「戦略的ごまかし」はその時限りの状況においてだけ効果を発揮するのです。
しかもその効果は絶大です。
だからこそ人は「戦略的ごまかし」をうまく利用して大事な場面を乗り切ろうとするのです。
同じ会社があなたを何度も面接して採用することはありません。
一度きりだからこそ「戦略的ごまかし」が有効なのです。
「戦略的ごまかし」によって世界はまわっている
「ホラを吹く」と「嘘つき」とは基本的にはまったく違うもの
先ほどそう言いましたが現実的にはその区別はとても難しいものです。
たとえば化粧をして素顔を隠している女性は「ホラ吹き」なのでしょうか?
それとも「嘘つき」なのでしょうか?
経済力があると匂わせるためにデートの時に高級外車をレンタルする男性は「ホラ吹き」なのでしょうか?
それとも「嘘つき」なのでしょうか?
厳密に言えばこれらはすべて「嘘つき」なのかもしれません。
しかし好意的に考えれば「ホラ吹き」と言ってもいいのかもしれません。
脳はこうした「ホラ吹き」や「嘘つき」には気づかないふりをします。
そうすることで世界は平和にうまく回るのです。
これらは極端な例えですが、「ホラを吹く」=「戦略的ごまかし」がもっとも頻繁に見られるのは大規模なプロジェクトを実行する時です。
大規模なプロジェクトで起こりがちなこととして
ちゃんとした責任者がいない…例えばプロジェクトを起動させた責任者が途中で交代してしまい、次の責任者の言うことを誰も聞き入れないような状況に陥ってしまう場合など
大勢の人や団体や会社が関わっていて責任のなすりつけ合いが始まってしまう
プロジェクトが完成するまでに何年もかかってしまいなかなかゴールが見えない
このような状況下でプロジェクトが進行すると、コストも時間も当初の予測から大きく超過して暗礁に乗り上げがちになります。
“予測の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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なぜこのようなことが起こるのでしょう?
その理由は、プロジェクトとして選出されるのが“最適なプロジェクト”ではなく“書類の上で最適に見えるプロジェクト”だからです。
プロジェクトの出来とは関係なしに、ホラを吹きまくって「戦略的ごまかし」を多用さえすれば、予算をより多く獲得できて、より壮大なプロジェクトが動き出すことができます。
しかし「戦略的ごまかし」で動き出したプロジェクトはそううまくいくはずがありません。
それでもみんなでホラを吹き合って「戦略的ごまかし」を多用することでプロジェクトは何とか転がっていくのです。
それを「ホラ吹き」や「嘘つき」と指摘してしまうとプロジェクトは止まってしまいます。
脳が「戦略的ごまかし」を見て見ぬふりをするからこそ世界はうまく回っているのです。
「戦略的ごまかし」を見抜く方法
「戦略的ごまかし」は多くの場合ほとんど無害です。
基本的に“嘘”ではなく“大げさ”に表現しているだけなので見て見ぬ振りができるわけです。
しかし先ほどの時計の修理の時のように害を被(こうむ)る時もあります。
そのような時に「戦略的ごまかし」を見抜く方法があります。
「戦略的ごまかし」を確実に見抜く方法は、ホラを吹いている相手の発言に注目するのではなく、相手の過去の業績に注意を払いようにすることです。
似たような時計の故障をその人が今までどのくらいの数、どのくらいの時間で、どのくらいの費用で直した実績があるのかを調べるのです。
そうすればホラを吹いて楽観的な見通しを立てているのか、そうでないのかある程度見抜けるはずです。
そしてその見通しがあまりに度を越しているようであれば容赦なく批判を加えても良いかもしれません。
“「戦略的ごまかし」の脳科学”のまとめ
大事な場面でホラを吹いてしまう「戦略的ごまかし」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 物事を大げさに言うことを「ホラを吹く」と言い、専門的には「戦略的ごまかし」と呼びます。
- 「戦略的ごまかし」は1回限りの事案においては絶大な効果を発揮します。
- 「戦略的ごまかし」は見て見ぬふりをして深く追求しないことが得策です。
- しかし「戦略的ごまかし」によって自分に害が降りかかってきそうな時には「戦略的ごまかし」をしっかり見抜きましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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