ハラスメントはなぜ起こるのですか?なぜなくならないのですか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- ハラスメントが起こる理由、なくならない理由、どう対処したらよいのかがわかります。
ハラスメントはなぜ起こる?
ハラスメント…どうしたらいいの?
- ハラスメントが起こる理由は人が大好きなルール作りにあります。
- ルールを破ると相手の脳のミラーニューロンが発火してハラスメントが過熱していきます。
- ハラスメントから逃れるもっともよい方法は逃げること拒絶することです。
- ハラスメントから逃げ出せない人は相手のルールを壊してみませんか。
今回は”ハラスメントの心理学”ではなくちょっと違った視点で”ハラスメントの脳科学”を探ってみます。
いまやハラスメントの種類はたくさんあります。
ハラスメント-その1
”上司に誘われたら食事に行かなくてはいけない”
”仕事が残っていたら残業しなければいけない”
”女性なんだから食事を取り分けたりお酌したりするのは当然だ”
そんな無茶苦茶なルールがハラスメントを生み出しています。
われわれの生活はさまざまなルールに縛られています。
法律や規則などは代表的なルールですがそれ以外にもたくさんの暗黙のルールがあります。
”朝になったら起きる”
”夜になったら寝る”
”食事は朝昼晩で3食摂る”
そんな日常的なものからお祭りや結婚式、お葬式などなど…すべてのものにたくさんのルールがあります。
中には理不尽であったり不思議であったりするルールもあるでしょう。
しかしそんなルールで社会はまわっています。
ハラスメント-その2
人はそもそも”ルールを作るのが大好きな遺伝子”を持って生まれてきています。
ですから自分独自のルールを作るのが好きな人はそれを破る人に対してハラスメントをするのです。
つまりハラスメントをして罰をあたえようとするのです。
ルールが次々と生まれるのと同じようにハラスメントも次々と生まれていくのは当然の流れなのです。
ハラスメントはなぜなくならない?
それではハラスメントを取り締まるルールを作ればハラスメントはなくなるのでしょうか?
社内でコンプライアンス室なるものがあってもちゃんと機能している会社がどれだけあるのでしょうか?
ハラスメント-その3
ハラスメントは相手があってはじめて成り立つものです。
ハラスメントをした人は自分の言葉や態度で相手がどのような反応にでるのかを必ず見ています。
ハラスメントに従うのかそれとも拒絶するのか?
ハラスメント-その4
ハラスメントから逃れるもっともよい方法は拒絶することとよく言われます。
そんな声が聞こえてきそうですが実際にハラスメントの影響を最も最小限にするのは拒絶と逃避です。
ハラスメントに従わなければそもそもハラスメントは成立しません。
ですからハラスメントをする人は必ず相手の反応を確認してそれに屈しているかを確認します。
この時に脳で反応するのが“ミラーニューロン”です。
ミラーニューロンは相手が何をしているのか何を感じているのかを見て反応する神経細胞のことです。
つまり相手の行動や感じていることを自分に写し出して相手のことを迅速に理解します。
それによって相手の行動に反応し自分がいかに行動するべきかを瞬時に判断するのに役立っています。
たとえば相手がコップを手に取ったら“何か飲みたいのだな…”と想像できるのはこのミラーニューロンのおかげです。
このようにミラーニューロンは社会的交流において大きな役割を果たしています。
自分がもしされたら嫌な思いをするのがハラスメントです。
ハラスメントをするときっと相手は嫌がることを当然本人はわかっています。
ハラスメント-その5
ハラスメントをしている時ミラーニューロンが発火して活発に働いています。
このミラーニューロンの働きがハラスメントのスタートでありさまざまな回路を発火させる根源になっているのです。
ミラーニューロンが働くとまず同情系回路が発火され作動します。
”同情系回路の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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すると脳には相手が嫌がっている姿を見て
“つらいだろうなあ…お気の毒に…”
なんて感情が湧き上がってきます。
ハラスメント-その6
ハラスメントがただの嫌がらせと違うのはハラスメントの行為を正当なことで不正ではないと思っているところです。
食事に誘って相手が嫌がっているものの上司に誘われて食事に行くのは当然の正当な行為であり不正ではない。
まさか断るなんて選択肢はないだろう?
これが食事にまつわるハラスメントである“メシハラ”です。
これに対して相手が自分の要求に屈すると今度は報酬系回路が発火されて作動し始めます。
”報酬系回路の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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相手が屈した姿を見て脳は喜びや優越感を感じるのです。
報酬系回路が働くのは圧倒的に男性が多いとされています。
男性は社会のルールや法律は当然ですが自分独自のルールから外れたものさえも排除したがります。
”女性に対するセクハラ”
”年下の者に対するモラハラ”
ハラスメント-その7
数々のハラスメントがありますがハラスメントの行きつく先はただの嫌がらせではなくルールから外れたものへの罰と優越感です。
この優越感こそハラスメントがなくならない最大の理由です。
ハラスメントをする人は自分の中で次々とルールが出来上がっていきますから1つ注意してもまた新たなハラスメントが出来上がっていきます。
ミラーニューロンは相手の脳を自分の脳の鏡に写し出して相手のことを考える重要な回路ですが悪い方向に働くとハラスメントの引き金になるのです。
ルールを打ち破って相手のミラーニューロンを鎮火しよう
ハラスメントの根源は理不尽な個人のルールの押し付けにあります。
いい歳なのにそんなこともできないの?
そう考えるとルールは悪者にされがちです。
自分勝手なルールなんて無視して相手にしなければハラスメントは成り立ちません。
しかしなかなかハラスメントから逃れることは難しいのが現実です。
芸術はルール破りから偉大な作品が数々世に送り出されています。
クラシックが好きな人は良くご存じかもしれませんが交響曲やソナタといった形式を生み出したのはハイドンです。
曲のテンポや曲調などさまざまなルールが作られました。
しかしそのルールを真っ先に壊したのはハイドンの弟子であるベートーベンです。
ベートーベンはハイドンの作り上げたルールを破壊するような新しいアイデアを見つけ出した時だけ曲を作り上げたので交響曲は9つしかありません。
ちなみにハイドンは104曲もの交響曲を作っています。
しかしハイドンよりもベートーベンの交響曲の方が一般的には有名ですよね。
ハイドンの作ったルールでは交響曲は長くても25分くらいまででしたがベートーベンの作った交響曲は1時間近くあります。
CDが世の中に出回った時にベートーベンの有名な交響曲の『第九』が1枚のCDに収まるようにとCDの最大収録時間が74分という極めて中途半端な規格になったのは有名な話です。
ちょっとこれはスケールの大きな話でしたが人はルールを作るのも大好きですがルールを壊すのも大好きな遺伝子を持ち合わせています。
ルールに縛られた“マンネリ化”とルールを壊すことで生まれる“新鮮さ”は二律背反的なものではありますがこれらが次々とおこるからおもしろいのです。
ハラスメント-その8
ルールを打ち破ったあなたの発想はきっと相手の想像を超えていて相手の脳には写し出されないでしょう。
相手のミラーニューロンを鎮火してしまえばハラスメントは起こりません。
あなたも思い切ってルールを打ち破ってみませんか?
きっとあなたに賛同してくれる人がいるはずです。
自分がたとえできなくでもルールを打ち破った人に賛同してあげてください。
ハラスメントについてもっと脳科学的に知りたい方は脳科学者 中野信子先生のこちらの本をぜひご参照ください。
”ハラスメントの脳科学”のまとめ
ハラスメントが起こる理由、なくならない理由、どう対処したらよいのかについて脳科学的に解明してみました。
今回のまとめ
- ハラスメントが起こる理由は人が大好きなルール作りにあります。
- ルールを破ると相手の脳のミラーニューロンが発火してハラスメントが過熱していきます。
- ハラスメントから逃れるもっともよい方法は逃げること拒絶することです。
- ハラスメントから逃げ出せない人は相手のルールを壊してみませんか。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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