日常の脳科学 脳を科学する

アイデアが浮かばない人のためにコツを伝授します~アイデアの意味を脳科学で探る

2021-03-10

アイデア-A1

いいアイデアが浮かぶためのコツってありますか?

 

そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。

 

このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。

 

基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきますね。

 

この記事を読んでわかることはコレ!

  • アイデアが浮かばない人のためにアイデアの意味を脳科学で説き明かします。

 

「右脳派」と「左脳派」なんてもはや都市伝説にすぎないのだ

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アイデアの意味の脳科学

  • 右脳派の人は創造力が優れていてアイデアが浮かびやすい…なんて非科学的な都市伝説に惑わされないでください。
  • 斬新なアイデアは真の意味で新しいアイデアではなく過去の遺物にちょっとしたスパイスを加えたものにすぎません。
  • 年をとるほど脳には情報が詰め込まれアイデアは浮かびやすくなります。
  • いつでもどこでも情報を発信して脳を刺激し続けることがアイデアを湧き上がらせる秘訣です。

世の中には「右脳派」と「左脳派」なる言葉が存在しそれに振り回されている人が大勢います。

 

一般的には右脳とは“イメージ脳”と呼ばれ直感や感覚や感性を司ると言われ創造力に影響すると言われ図形や空間の認知などが優れていると考えられています。

 

一方左脳は“言語脳”と言われ言葉や分析などに影響すると言われ感情に流されず理論的に物事を考えることが得意と考えられています。

 

「右脳派」と「左脳派」を簡単に判断するにはいくつかの方法が提案されています。

 

指を組んでみて右の親指が下になる場合は右脳派、左の親指が下になる場合は左脳派

 

腕を組んでみて右の腕が下になる場合は右脳派、左の腕が下になる場合は左脳派

 

「いいアイデアが思い浮かぶ人は右脳派であり視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感を有効利用して情報をイメージとして認識して新たなアイデアを創造することができる。」

 

なんて言われたりもしています。

 

しかしそれって本当なんでしょうか?

そもそもなぜ「右脳派」と「左脳派」なる言葉が生まれたのでしょう?

 

当然何もないところから突然このような発想が生まれたわけではなく引き金となった研究が存在します。

 

てんかんなどの手術では右脳と左脳を結ぶ橋渡しの役割をしている脳梁(のうりょう)という部分を切断する手術が行われることがあります。

 

研究では手術を受けた人の中で「左脳を損傷しているが右脳は生きている人」「右脳を損傷しているけれど左脳が生きている人」の2つのタイプにわけて実験を行っています。H

それぞれの人にちいさなAの文字で構成された大きなHの文字を見てもらいます。

 

そして自分が見たものを紙に書いてもらいます。

 

すると右脳が生きている人は細かなAの文字は見えない代わりに大きなHは認識することができました。

 

一方で左脳だけが生きている人は大きなHは認識できないものの細かなAの文字は認識できました。

 

ここからわかることは…

 

右脳は細かな部分ではなく全体の輪郭を見渡す能力に優れている。

 

左脳は全体の輪郭ではなく細かな部分を読み解く能力に優れている。

 

つまり右脳と左脳では空間解像度が違うということです。

 

これを物事を考える時に当てはめると…

 

物事の全体像を大まかに把握するのには主に右脳を使う。

 

物事の細部をじっくり把握するのには主に左脳を使う。

 

そんな感じになります。

 

この研究が元となって「右脳派」「左脳派」なる言葉が独り歩きしていったのでしょう。

 

しかし「全体を把握できるから右脳派は創造力に優れている」であったり「細部を細やかに理解できるから左脳派は分析力に優れている」であったりと話を進めるのはちょっと言い過ぎではないでしょうか…

 

このような「右脳派」と「左脳派」の脳タイプ判別にメスを入れた研究があります。

Nielsen JA, et al, PLoS One 8(8):e71275. doi: 10.1371/journal.pone.0071275, 2013

 

この研究では安静にしている時の脳の働きをMRIを使用して分析しています。

 

この研究の結論は

 

脳の機能が左右でわかれているのは紛れもない事実である。

 

注意は右脳で処理され言語はたいてい左脳で処理されることが多い。

 

しかし脳のネットワークにおいて左右どちらの脳がより多く使われているなどと言うことはない。

 

人の性格は確かに脳で発生します。

 

しかしそれを右脳と左脳の機能に関連づけてシンプルに「右脳派」と「左脳派」に分けて考えるほど脳は単純ではないのです。

 

へなお
そもそも指や腕の組み方で左右の脳のどちらが優位かを語るなど単純に考えても非科学的ですよね。

 

ですから現在では「右脳派」「左脳派」なんて概念はもはや都市伝説にすぎないのです。

 

「右脳が司っているのは体の左半分なので左手を良く動かすと右脳が刺激されて創造力が鍛えられてアイデアが浮かびやすくなる。」

 

なんて話も聞きますが脳はそこまで単純ではないですし脳科学的にはその効果は極めて不透明だと言わざるを得ないでしょう。

 

「右脳派」だの「左脳派」だのといった話はコミュニケーションをとるための小ネタ程度にとどめておくのが無難なところですのでくれぐれもご注意ください。

 

斬新と思われるアイデアでも過去から学んだ遺物にすぎないのだ

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右脳を鍛えても創造性を高めることにはつながらないとなると「アイデア力」を高めるにはどうしたらよいのでしょう?

 

そのためにはまずは「アイデア」の意味についてよく理解しておく必要があります。

 

皆さんの回りにももしかしたら斬新なアイデアをどんどん出す人がいるかもしれません。

 

あたかも自分が閃いたかのように新しいアイデアをどんどん出してきますが実は新しいアイデアなどこの世にはほとんど存在しません。

 

へなじんさん

そんなことはない!

アイデアがどんどん浮かび上がるクリエイディブな人は絶対にいる!

 

なんて反論する人も必ずいるでしょう。

 

“クリエイティブの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください

 

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しかしよく考えてみてください。

 

世界中に何十億もの人がいて時代をさかのぼればもっと多くの人が地球上に存在していたわけです。

 

そんなものすごい数の人がアイデアを出し尽くしている現代において誰も見つけていないような斬新なアイデアが果たして残っているでしょうか?

 

世界初!と思っていてもほぼすべてのアイデアがすでに誰かが思いついているものでただそれを知らないだけなのです。

 

逆にもし本当に世界中の誰も思いついていないようなアイデアを思いついてしまったらそのアイデアはきっと誰からも理解されず非難されるでしょう。

 

今までの歴史がそれを物語っています。

 

多くの発明は最初は誹謗中傷され人々の理解を得られず埋もれているものがほとんどです。

 

それが時代を経て後の人々に理解され賞賛されるようになるのです。

 

では斬新と思われるようなアイデアの正体とは一体何なのでしょう?

なぜアイデアがどんどん浮かび上がるクリエイディブな人はこんなにも絶賛されるのでしょう?

 

世界中で誰も見つけ出していないような本当に新しいアイデアを生み出すことはほぼ不可能です。

 

たとえ思いついたとしても誰も評価することはできません。

 

アイデアの意味の脳科学-その1

斬新と思われるようなアイデアの正体は誰もが理解できる無難な発想で人の少し先を行くちょっとだけ新しい感じのするアイデアなのです。

 

クリエイディブな人は「人の少し先を行くアイデア」を提案しているにすぎないのです。

 

では「人の少し先を行く」ためにはどうしたらよいのでしょう?

 

それは「過去の遺物をより多く学ぶ」ことです。

 

人が生きていくうえで本当に必要で求めているものは時代を経てもそれほど大きくは変わりません。

 

ですから何か問題が起きでもそれを乗り越えていくためのアイデアはすでに過去の誰かが何らかの形で生み出してくれているのです。

 

過去を振り返り歴史を学べば多くの知恵がゴロゴロと転がっています。

 

アイデアの意味の脳科学-その2

過去の遺物をたくさん習得して今自分の目の前に起きている問題にもっとも適したアイデアをその中から見つけ出してちょっとアレンジしてあげればよいのです。

すると世の中の人達は「斬新なアイデア」として賞賛してくれます。

 

このような柔軟性こそがクリエイディブな人になれるかなれないかの分かれ道なのです。

 

斬新と思われるアイデアでも過去から学んだ遺物にすぎないのです。

 

アイデアとは思いつくものではなく過去の遺物から学び取った知恵を応用するものなのです。

 

へなじんさん

なんだ!

斬新なアイデアを生み出すなんて簡単なことじゃないか!

 

なんて思ったら大きな間違いですよ。

 

世の中でクリエイディブと言われている人のほとんどは必死に過去の遺物を脳の中にたたき込んで目の前の問題に立ち向かっているのです。

 

それは生半可な努力でできることではありません。

 

へなお
ですからやはりクリエイディブな人は賞賛されるべきなのです。

 

年をとるほどアイデアはどんどん湧き出るのだ

アイデア-3-min

へなお
続いては「過去の遺物から斬新なアイデアを生み出す」方法を探っていきましょう。

 

ただひたすら過去の情報を脳の中にたたき込んでも限界があります。

 

なんでもかんでも記憶できるほど脳の容量は大きくはありません。

 

“記憶の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

 

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ではどうしたらアイデアを生み出すことができるようになるのでしょう?

 

それには脳の知能が大きく関係しています。

 

“知能の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

 

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既存の枠にとらわれず自由で柔軟な発想を生み出す時に必要な知能は「非言語性知能」と呼ばれています。

 

非言語性知能とは今まで出会ったことのない問題に直面した時に自由で柔軟に対応して解決する能力のことです。

 

非言語性知能は生まれつきでおおよその能力は決まっていて20歳ころがピークでその後は年齢とともに衰えていきます。

 

へなじんさん
ということはアイデアを生み出す能力は若いうちが良くてどの後はどんどん衰えるのでしょうか?

 

へなお
そんなことはありませんから安心してください。

 

非言語性知能はアイデアに関してはいわば「まだ誰も思いついていないような真の新しいアイデア」を生み出すような知能です。

 

しかし先ほども説明したように真の新しいアイデアを生み出すなんてほぼ不可能に近いと言ってもよいでしょう。

 

ですから非言語性知能が高いからと言って斬新なアイデアがどんどん生み出せるかと言うとそう簡単なことではありません。

 

しかし世の中には特異的に非言語性知能が高い人がいることは確かです。

 

そんな人はもしかしたら斬新なアイデアを今この瞬間にも生み出しているかもしれません。

 

しかしいつの時代でも斬新すぎる時代を先取りしすぎるようなアイデアは一般には受け入れられません。

 

後の世界では高く評価されるかもしれませんがとりあえず生きているうちに評価されることは難しいかもしれません。

 

ですから非言語性知能はほとんどの人においては生きていくためにはたいして役には立たっていません。

 

実際に非言語性知能の高さと人生で成功者になれるかどうかはまったく関係がないとされています。

 

IQテストで高得点が取れないからと言って悲観的になる必要などないのです。

 

アイデアを生み出すことに関係しているのはもう1つの知能である「言語性知能」です。

 

言語性知能とは簡単に言えば脳の中にたまっている記憶のデータベースをうまく使いこなす能力のことです。

 

脳の中には生きた分だけどんどん情報がたまっていきます。

 

単純に人の名前などから状況に応じてどのように対応すればよいのかなどまで本当にさまざまな情報が刻み込まれています。

 

しかしただ脳の中に刻み込まれているだけでは宝の持ちぐされです。

 

アイデアの意味の脳科学-その3

データベースの中にあるアイデアと別のアイデアを比較して損か得かを合理的に計算し取捨選択してそこにスパイスを加えて斬新と言われるようなアイデアは生まれます。

 

それを行う能力が言語性知能です。

 

ですから言語性知能は非言語性知能と違い年齢を重ねることでどんどん能力が上げることが可能です。

 

当然学習能力には個人差があります。

 

学習が速い人もいれば遅い人もいます。

 

しかしどちらの人も学習や経験によって年をとってもアイデア力を伸ばすことはできるのです。

 

言うならば命が尽きる死ぬ直前こそがもっともその人にとってアイデア力がピークを迎える瞬間なのです。

 

へなお
ですから「自分はもう年だから何も思い浮かばない…」なんてことは言わないでどんどんアイデアを生み出していってみてください。

 

アイデアをどんどん湧き出すための秘訣を知っておけば怖いものなし

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へなお
最後は「アイデアをどんどん湧き出すための秘訣」です。

 

アイデアの意味の脳科学-その4

斬新と思われるアイデアは過去から学んだ遺物にすぎずそこに少しのアレンジを加えるだけで新たなアイデアが生まれる。

だから年をとっても脳に刻み込んだ情報を応用すればどんどんアイデアを生み出すことはできる。

 

そんなことを説明してきました。

 

では脳のデータベースにある情報を必要な時に引き出して次から次へとアイデアを繰り出せるようになるにはどうしたらよいのでしょう。

 

じっくり考えた末にアイデアを思いつくことも大切な時もあるでしょう。

 

しかし場合によっては1つの要求に対して次から次へとアイデアが浮かんでくることが必要な時もあります。

 

しかし現実的にはいざという時に限って

 

へなじんさん
なんかいいアイデアが思い浮かびそうなのに出てこない…

 

何て感じで結局他の人にいいところを持っていかれてしまう…なんてこともあるでしょう。

 

そうならないためには「アイデアをどんどん湧き出すための秘訣」を知っておくと断然お得です。

 

その方法とは「アイデアを常に生み出し続ける」ことです。

 

たとえば本棚に並んでいるたくさんの本の中で普段からよく見る本は必要な時にさっと取り出すことができます。

 

しかしあまり見ない本は探し出すのに苦労します。

 

脳もこれと同じです。

 

本棚は脳のデータベース、本は情報に相当します。

 

脳のデータベースに多くの情報をしまい込んでいても普段から多く使っている情報はさっと思い出せる反面使っていない情報はなかなか思い出せません。

 

情報が出てこないといいアイデアも思い浮かんできません。

 

ですから常にアイデアを生み出し続けることで脳のデータベースから頻繁にさまざまな情報を引き出していればよいのです。

 

へなお
では具体的にはどうしたらよいのでしょう?

 

とても簡単なことです。

 

それは他人によく話をすることです。

 

本を読んだりネットやテレビを見たりしてアイデアの源となりそうな情報を仕入れたら他人に話をするのです。

 

重要な情報に関しては相手を変えて何人でも同じ話をしてもよいでしょう。

 

同じ情報が何度もアウトプットされると脳は「重要な情報」として認知していざという時により引き出しやすくなります。

 

“アウトプットの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。

 

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情報をアウトプットし続けることでその情報をもとにしたアイデアも思い浮かびやすくなるのです。

 

そのようにして生み出されたアイデアもまたどんどんアウトプットしていくことが大切です。

 

どんな些細なことでもどんどん発信することが脳にとっては刺激的で快感なのです。

 

身近に話を聞いてくれる人がいなくてもSNSでアウトプットしてもよいでしょう。

 

実際にクリエイティブな人はSNSをうまく利用してアイデアを常に発信し続けています。

 

いいアイデアだからといって自分の中で温めていても何も良いことは起こりません。

 

情報を発信することは誰でも簡単にできることです。

 

しかし実際にアウトプットを日々継続することは面倒ですしなかなか続かないものです。

 

クリエイティブな人は一見簡単そうでしかしやってみるとなかなか面倒なことでも努力することを惜しみません。

 

だからこそどんどん湧き出るアイデアを生み出せるのです。

 

へなお
皆さんもぜひ気軽に試してみてください。

 

 

“アイデアの意味の脳科学“のまとめ

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アイデアが浮かばない人のためにアイデアの意味を脳科学で説き明かしてみました。

今回のまとめ

  • 右脳派の人は創造力が優れていてアイデアが浮かびやすい…なんて非科学的な都市伝説に惑わされないでください。
  • 斬新なアイデアは真の意味で新しいアイデアではなく過去の遺物にちょっとしたスパイスを加えたものにすぎません。
  • 年をとるほど脳には情報が詰め込まれアイデアは浮かびやすくなります。
  • いつでもどこでも情報を発信して脳を刺激し続けることがアイデアを湧き上がらせる秘訣です。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

 

今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。

 

最後にポチっとよろしくお願いします。

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  • この記事を書いた人

へなお

▶脳神経外科専門医でアラフィフおじさんの「へなお」です。▶日々脳の手術、血管内治療、放射線治療を中心に某総合病院で勤務医をしています▶一般の方でも脳についてわかりやすく理解していただけるように、あなたのまわりのありふれた日常を長年の経験からつちかった情報をもとに脳科学で探っていきます▶多くの方に脳に興味をもっていただき、少しでもこれからの生活の役に立つ知識をつけていただければと思います!

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