自分の知識や能力を過信して自信過剰になってしまうのはなぜなのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 気づかぬうちに誰もがおちいりがちな「自信過剰」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かします。
自信過剰な人の特徴とは?
自信過剰の脳科学
- 自分本来の実力や地位などを見誤り自ら過大評価して過信してしまう現象を「自信過剰」と呼びます。
- 自信過剰はそもそも生まれつき脳にも備えられている誰もが持っている原始的な機能です。
- 自信過剰は心理的な悪い面だけでなく脳科学的には世の中の動きを活発にする良い面も持っています。
- 自信過剰のワナにはまり込まないためには自分を過小評価して自分自身を見つめなおしてみてください。
あなたのまわりにもきっとプライドが高くていつも上から目線、口を開けば自慢話ばかり…そんな自信過剰な人がきっとひとりやふたりはいるはずです。
自信過剰と聞くときっと多くの人はプラスの意味よりもマイナスの悪いイメージでとらえることが多いのではないでしょうか?
自信過剰な人の一般的な特徴としては…
自分が大好きなナルシスト
まわりから頼りにされるのが大好き
自分に注目が集まるのが大好き
いつでもポジティブな思考を持っている
そこそこ地位が高くてそこそこお金を持っている
自分の弱さを知られたくない
相手を見下したり否定したりすることで自分を肯定したがる
強引にでも自分の意見を通したがる
他人の意見を受け入れない
自分の容姿や能力に自信を持っている
自分の間違いを受け入れようとしない
話がうまい
勝手にリーダー気どりする
まだまだありそうですがざっとこんなものでしょう。
なんだかこれだけ聞いていると悪口ばかりでいいことなんて1つもなさそうに思えてしまいますよね。
たとえ自信満々でも本来の実力や地位を見誤ることなく自らを過大評価することもなければ何ら問題はありません。
自分を過信しすぎて問題となるのはその発言や行動がそもそも間違えている場合です。
しかし当の本人はその間違えに気づいていないことが自信過剰の最も厄介なところです。
そのため自信過剰な人とうまくやっていくにはそれなりのコツが必要です。
相手をほどよく肯定してなるべく否定しない
自信過剰なポジティブさを時には見習う
あまり深くは付き合わず時には聞き流す
しかしそうは言ってもなかなかうまく立ち回れず自信過剰な人の意見に流されてしまうことも少なくないはずです。
多かれ少なかれほとんどの人は自信過剰のワナにはまり込んで生きています。
つまり自分の実力や地位を過信して生きている人がほとんどでそれが当たり前なのです。
もっと言えば世の中自信過剰な人であふれかえっているからこそ世界はうまく回っているのです。
心理的な面からみれば自信過剰はちょっとした悪者ですが、脳科学的に見れば自信過剰は決して悪いことばかりではありません。
世間から自信過剰と言われる人はちょっとその癖が強いだけなのです。
多くの人がはまり込む自信過剰のワナ
あなたは自分の持っている知識をどれくらい信頼できるでしょうか?
自分の専門分野でもない限り自分の持っている知識がいかにいい加減であるかを自覚しているでしょうか?
たとえば
信濃川の長さは?
飛行機の燃料消費量はどれくらい?
日本で人口が最も少ないとされる鳥取県の人口は?
このような質問に対して正解率が98%になるように…逆に言えば不正解率が2%になるように数に幅を持たせて明確に回答してみてください。
この数字を何となく知っていれば答えられるでしょうが、まったく見当がつかない場合には適当に幅をもたせて答えるでしょう。
そのように答えれば正解です。
しかし
こう答えれば不正解です。
しかし実際にはそううまくはいきません。
2%が不正解になるはずなのに実際は40%もの人が間違えた数字を挙げるのです。
何げない質問に対してでも多くの人はさも自信ありげに回答します。
しかし実際に回答に幅を持たせて正解率を上げようとしてもそううまくはいかないのです。
つまり自信ありげに話したり行動したりしていることでも半分近くは間違えている可能性があると言うことです。
専門家でもはまり込む自信過剰のワナ
あえて言えば専門家の方が自信過剰のワナにおちいりやすいと言ってもいいかもしれません。
5年後の原油価格の見通しについて大学の経済学の教授であっても一般人と同じように間違えるものです。
教授は自分自身を過信して予測するので間違えるのです。
そもそも自信過剰に潜(ひそ)むワナとはひとつひとつの予想が当たるかどうかではありません。
自信過剰のワナとはわたしたちが「本当にわかっていること」と「わかっていると思い込んでいること」の間に生まれる誤差を意味します。
“思い込みの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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実際よりも自分は十分に情報を持っていると思い込んだり、自分にはできると過信したりしてしまうことが自信過剰を生み出しているのです。
たとえばフランス人男性の84%が「あなたは平均的な水準よりもよい恋人ですか?」という質問に「イエス」と答えています。
自信過剰でなければ「イエス」と答えた人は全体のちょうど50%になるはずです。
そもそも平均(正確に言えば中央値)とは全体の人数の50%がその上、50%がその下にいるという意味だからです。
このように自信過剰はどんな人の脳にも備えられている原始的な機能なのです。
ですから目の前の人がちょっと自信過剰だからと言っていちいち批判したり否定したりすることはあまりお勧めできることではありません。
なぜならあなた自身にも自信過剰な一面があってただそれに気づいていない、自覚していないだけなのですから。
自信過剰の落とし穴にはご注意を!
自信過剰の一般的なイメージとしては最初にも話しましたが多くの人にとってはあまりいい印象はないかもしれません。
しかし自信過剰が存在するからこそ世の中の経済的な動きは活発になるのです。
たとえばレストランの経営者ならば誰もが自分の店を一流にしたいと夢見ることでしょう。
しかし現実は多くの店は3年後には閉店してしまいます。
ほとんどのレストランは開店してもなかなか思うような利益が出せないからです。
このような自信過剰が結局は失敗を生んでしまうわけですが、しかし自信過剰によって多くのレストラン立ち並ぶからこそ経済は動き続けるのです。
ところでレストラン経営のような大きなプロジェクトを組む時には予定よりも早く、しかも当初の予定よりも低いコストでそのプロジェクトが実現することはまずないと言っていいでしょう。
ところが逆のケースは無限に存在します。
自信過剰な無謀な計画によってプロジェクトの進行が大幅に遅れ、膨大な超過費用が発生するようなケースです。
そこに待ち受けているのが自信過剰の落とし穴です。
自信過剰の落とし穴とは1つは「自信過剰からくる誤算というワナ」であり、もう1つは「外部からの刺激によるコストの過小評価のワナ」です。
そのプロジェクトから利益を得る他の業者などがコストを過小評価することでプロジェクト実行の後押しをしてきます。
とにかく安い見積もりをちらつかせて相手をその気にさせようとするわけです。
たとえば経営コンサルタントはコンサルティング料を安く見積もって契約を成立させようとします。
建設業者は低い数字を提示することで顧客の気持ちを動かそうとします。
政治家は選挙で少しでも票を獲得するために楽観的な予測をします。
これらは「報酬という刺激による過小評価のワナ」です。
脳は少しでも多くの利益を得るために“報酬系回路”を働かせて反応します。
“報酬系回路の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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脳が報酬に飛びつくのはある意味当たり前の原始的な欲求です。
しかし「自信過剰」と「報酬という刺激」には大きな違いがあります。
自信過剰は外からの働きかけで作用するものではなくあくまでも自分自身の脳から発生する、いわば本能のような生まれつき備わった性質です。
ですからわたしたちは自信過剰から逃れることはできないのです。
そして誰もが自信過剰の落とし穴に落ちるリスクをいつでも持っているのです。
あなたも自信過剰を自覚せよ!
1つ目は誰もが自信過剰ということです。
楽天的な人だけが自信過剰なわけではありません。
悲観論者であっても時には過信して自信過剰のワナにはまり込みます。
後者の方が自信過剰の程度が軽いだけなのです。
2つ目は自信過剰であるのは女性よりも男性の方が圧倒的に多いということです。
女性は男性ほど自分を過信せず自分のことをよく理解しているということです。
3つ目は自信過剰の逆である自分に対する過小評価ではワナや落とし穴は存在しないということです。
つまり過小評価することで失敗を回避できる可能性が高まると言うことです。
“失敗学の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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過小評価するためにはあらゆる予測に対して疑いの目を持つことです。
特に「専門家」と呼ばれる人から発信された情報には注意が必要です。
どんな計画についても常に悲観的なシナリオを考えるくらいがちょうどよいのです。
そうすれば自信過剰を少しでも回避して現実的に判断できるチャンスを手に入れることができるはずです。
“自信過剰の脳科学”のまとめ
気づかぬうちに誰もがおちいりがちな「自信過剰」の意味をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 自分本来の実力や地位などを見誤り自ら過大評価して過信してしまう現象を「自信過剰」と呼びます。
- 自信過剰はそもそも生まれつき脳にも備えられている誰もが持っている原始的な機能です。
- 自信過剰は心理的な悪い面だけでなく脳科学的には世の中の動きを活発にする良い面も持っています。
- 自信過剰のワナにはまり込まないためには自分を過小評価して自分自身を見つめなおしてみてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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