問題はリスクを冒して解決するよりも回避して予防する方がよいのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 問題は解決するよりも予防した方が良い理由を探るため「予防措置」をわかりやすく脳科学で説き明かします。
解決するよりも予防するに限る
「予防措置」の脳科学
- 賢明さとは「予防措置」をほどこすことです。
- リスクを冒して問題を解決するよりもリスクを回避して予防することが賢明に生きることです。
- 「予防措置」は外からは目につかないので自分の賢明さをひけらかすことはできません。
- しかし自慢が良い人生のためにならないことは誰もが知っていることでしょう。
その判断は賢明と言えるでしょう。
なぜならば「問題は解決するよりも予防するに限る」からです。
人生経験豊かないわゆる“賢者”のイメージが思い浮かんだでしょうか?
それとも大自然の中で優雅に勇敢に生きる自然主義者のイメージでしょうか?
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たとえばクイズ番組で歴代の総理大臣の名前と生年月日をすべて正解できる人は賢者でしょうか?
そのような人は知識が豊富で頭はいいかもしれないですが決して賢明な人とは言えないでしょう。
つまり賢明さとは知識の蓄積ではありません。
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賢明さとはもっと実際的な能力です。
人生の舵をうまくとってさまざまな問題を乗り越えていける能力です。
そして人生で起こる問題のほとんどは解決するよりも避けた方が効率的であることに気づく能力です。
言い換えれば賢明さの定義とは「問題に対して予防的措置をほどこすこと」なのです。
実際に人生は難しいものです。
生きている限りあらゆる問題があちらこちらから雨あられのように降りかかってきます
目の前に予想もしない溝が突然口を開けてきたり、行き先をバリケードでふさがれたりします。
しかしどこに危険が潜んでいるかが予測できれば、その危険を防止したりあらかじめ問題を避けたりして通ることができるはずです。
頭のいい人は問題を解決するが、賢明な人はそれをあらかじめ避けるものだ。
アルベルト・アンシュタイン
予防が嫌われる理由
賢明さとは「問題に対して解決するよりも予防的措置をほどこすこと」です。
しかしここには厄介な問題が存在します。
それは「問題を解決する」方が「問題を避けて予防する」よりも華やかで魅力的であることです。
たとえばAとBの2つの映画プロットがあったとしましょう。
Aの映画では船は氷山に乗り上げてゆっくりと沈んでいきます。
船長は使命を果たすべく自己犠牲的に必死になって救出活動をして全乗客の命を救い出します。
そして最後まで船に残った船長が救命ボートに乗り込むと同時に大きな水しぶきを上げて船は完全に沈没します。
Bの映画では船長は十分な距離をとって氷山を迂回し安全な公開を続けます。
もちろんAでしょう。
ただあなたが実際に船に乗っている乗客であればもちろんBを選ぶはずです。
Aの船長はたくさんの情報番組やトーク番組から出演依頼が来たり、本を出版したりして一躍時の人となり、大金を稼いできっと船長の職は辞めてしまうでしょう。
一方でBの船長はその後何年も船長を続け、定年退職するまで障害物を大きく迂回しながら安全に船を航行させるでしょう。
Bの船長の方が船長として賢明で優秀なのは明らかです。
しかし世間から歓声を送られるのはAの船長です。
予防措置で達成した成功は魅力に欠けて目立ちません。
目の前に危険の渦があるのがわかったら、わたしは6メートルどころか200メートルは間をあけて避けるね。
チャーリー・マンガ―(アメリカの投資家)
船が沈没する映画は観たくても沈没する船には乗りたくないはずです。
しかし予防的措置は地味で嫌われやすいのです。
真のヒーローは問題を予防している人たちなのだ
テレビ番組では経営破綻しかけたお店の再生・再建を請け負うスペシャリスト(ターンアラウンド・マネージャー)がもてはやされています。
潰れかけたお店がよみがえって人気店に大変身を遂げる話はとても魅力的です。
再生手腕を評価すること自体は決して悪いことではありません。
しかし本来もっと高く評価されるべきなのはお店が再生・再建が必要な状況に陥ることを未然に防いでいる人たちのはずです。
とはいえ予防措置による成功は外からは認識できないためその業績はほとんどの人の目にはとまりません。
その人たちがどれだけ賢明な判断をしたかを知っているのはごく少数の人たちだけです。
このようにわたしたちは目につきやすい業績を上げた人たちだけを過大評価して、社会や個人が大きな問題に巻き込まれるのを未然に防いだ人たちの役割を過小評価しがちです。
死にそうになった患者を死のふちから救い出した医師は評価されますが、病気にならないように予防接種を実施した人たちは目立ちません。
しかし真のヒーローや賢人は「問題を事前に防いでいる人たち」なのです。
ではあなた自身の人生はどうでしょう?
あなた自身は気づいていないかもしれませんが、あなたは人生で達成した成功のうち少なくとも半分は「予防措置」による成功です。
誰でもこれまでの人生で多くの失敗をしているはずです。
それでも失敗した回数よりも愚かな行動を慎んで問題を事前に回避した回数の方がずっと多いはずです。
健康、仕事、金銭面、異性との関係…さまざまな場面においてあなたが賢明にも事前に避けて通った危険を思い返してみてください。
予防措置の大切さが実感できるはずです。
人生における問題について想像しよう
「予防措置」をとるのに必要なのは正確な知識と情報です。
しかしそれだけでは問題は回避できません。
もう一つ必要なのが「想像力」です。
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しかし残念ながら多くの人は「想像」について間違ったイメージを抱いています。
考えごとをしていて頭に浮かんでくるのが「想像」だと思っているかもしれません。
しかしそれは「想像」ではなく以前に考えたことを頭に思う浮かべて思い返しているだけにすぎません。
「想像」とは“物事のあらゆる可能性とそこから予測できる結果を持てる力を最後の一滴まで振り絞って結末まで含めて綿密に推測すること”です。
ここまで考えて想像している人は少ないかもしれません。
想像することは実はとても大変で骨が折れる作業なのです。
しかし本当にまだ起こってもいない問題について「想像」をめぐらせて常に考えて備えておかなければならないのでしょうか?
とはいえ現実はそんなことはありません。
これまでの人生を通してわたしはずっと考えられる限りのあらゆる困難について想像してきた。
だが問題を先取りするのを憂鬱(ゆううつ)に感じたことはない。
その問題が現実になった時に備えておけるわけだからね。
チャーリー・マンガ―(アメリカの投資家)
「想像」に要する時間は1週間のうちたった10分で十分です。
短い時間であっても自分の人生で起こり得る「大きなリスク」について集中して考える時間を持つことが大切なのです。
10分のあいだいに起こり得る失敗とその可能性をこと細かに予想して「予防措置」を講じておくのです。
ますは「大きなリスク」の引き金となった原因を徹底的に分析します。
そして最終的にその問題が現実とならないように予測される原因を取り除くのです。
そうすれば残りの時間はそれらのリスクのことは忘れて何も心配せずにリラックスして過ごしても何も問題はないはずです。
もちろんこのような作業を定期的にちゃんと実行したとしても時には危険を見逃して間違えた判断を下すこともあるかもしれません。
しかし結果的に大きな問題が起きたとしても現実を直視しすぐその問題に対処すれば、何もしていない時とくらべれば被害は少なく済むはずです。
とはいえとにかく困難は解決するよりも避けた方が簡単なのは間違いありません。
“「予防措置」の脳科学”のまとめ
問題を解決するよりも予防した方が良い理由を探るため「予防措置」をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 賢明さとは「予防措置」をほどこすことです。
- リスクを冒して問題を解決するよりもリスクを回避して予防することが賢明に生きることです。
- 「予防措置」は外からは目につかないので自分の賢明さをひけらかすことはできません。
- しかし自慢が良い人生のためにならないことは誰もが知っていることでしょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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