銭湯やサウナで見かける常連さんは神様なのでしょうか?
それとも厄介者なのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
銭湯やサウナで見かける常連さんを勝手に脳科学で説き明かします。
銭湯やサウナで見かける常連さん
常連さんの脳科学
- 銭湯やサウナではたいてい常連さんがいます。
- 常連さんのほとんどは神様ですが、なかには“ヌシ”=厄介者の常連さんもいます。
- 男女で常連さんの意識は大きく異なっていて、“常連さんの厄介話”は女性の方が多いとされています。
- 常連さんの“ヌシ”が厄介者扱いされるのは、“ヌシ”自身にも問題がありますが、“ヌシ”を神聖化している周りの人達にも問題があります。
- 時には新しい銭湯やサウナを訪れて、客観的な視線で常連さんを見てみてください。
- 「初めて」を経験することで脳のセンスは磨かれ、自分が常連として通っている施設にフィードバックできるはずです。
第3次サウナブームの日本では街中の銭湯やサウナは平日でも混み合っています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナブームの中、たいていの銭湯やサウナでは常連さんがいます。
常連さんとは「いつもいる決まりきった顔ぶれの人たち」のことです。
お気に入りの銭湯やサウナに通うことは決して悪いことではありません。
施設にとって常連さんは神様のような存在です。
全体のお客さんのうち7-8割がリピーター客で、残りの2-3割が新規客であることが理想
とされていますが、そのように考えると常連さんは大切なお客さんです。
一方で、新規客にとって常連さんは、時にうざくて厄介な場合もあります。
ある調査によれば、
「常連さんのことを“うっとうしい”と感じたことがある」という人は約30%にのぼるとされています。
あたかも自分の家にいるかのように振る舞い、自分の居場所に侵入してくる新参者を排除しようとする常連さんもいます。
常連さんの中にも、施設を私物化するような自分勝手な行動をする常連さんを“うざくて厄介な存在”と思っている人もいるはずです。
男と女でも常連さんに対する意識は大きく異なっています。
“男と女のサウナの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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はたして常連さんは神様なのでしょうか?
それとも厄介者なのでしょうか?
男女で異なる常連さん
一般的に男女で「常連さん」の意識は大きく異なっています。
男女に限らず、男性的な脳思考を持つ人は、一般的に「行きつけの店」を好みます。
一度お気に入りを見つけたら、他に目移りせずにそこに行き続けたがります。
この傾向はなにもお店に限った話ではありません。
自分の好みの洋服、時計、かばんなど身の回りのモノでも、自分のお気に入りに対するこだわりが強く、いわば「常連さん」になりやすい傾向があります。
一方で女性的な脳思考を持つ人は、こだわりが薄く、自分にとってよりお得なモノを見つけると早々に乗り換える傾向にあります。
しかし銭湯やサウナで“常連さんの厄介話”をよく耳にするのは女湯です。
浴室やサウナ室で場所取りをする
自分のお気に入りのロッカーが決まっていたり、浴室やサウナ室で指定席が決まっている
やたらと他人の言動に注意をしてくる
そのわりに自分はルールを守らない
”銭湯やサウナのマナーの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ではどうして常連さんになりにくい女性の方が、“常連さんの厄介話”が男性よりも噴出するのでしょうか?
男性は常連さんになりやすいがために、常連さん同士の仲間意識がとても強くなります。
さらに「常連のお店を自分たちが守っていくんだ」という決意があります。
そのため新参者には基本的には優しく接し、ルールを守らない新参者には理屈の通った注意をしてなだめようとします。
一方で女性は常連さんになりにくいので、仲間意識は薄く、“ヌシ”が生まれやすくなります。
一般的に銭湯やサウナでは女湯の方が比較的空いていることが多いので、男湯のようにサウナ室内で座るところをゆずりあうようなシーンは少なくなります。
そのため男湯よりも自由度が高い一方で、新参者がぞろぞろと登場すると、自分の最適な空間が壊されたような気分になり、理不尽な小言を言って新参者を追い出そうとする厄介者になってしまうわけです。
ただしこれはあくまでも男性的あるいは女性的な脳思考という抽象的な考えによるものであり、絶対的なことではありません。
男性の中にも女性的な脳思考の人もいれば、女性の中にも男性的な脳思考の人もいます。
常連さんを脳科学で考える
ひと言で常連さんと言っても、ただ同じ銭湯やサウナに淡々と熱心に通い続ける人もいますし、常連であることを猛烈にアピールする常連さんもいます。
前者は施設にとって神様のような存在でしょう。
しかし後者はタダの厄介者でしかありません。
ではその違いはどのようにして生まれるのでしょうか?
コントロール幻想のワナ
コンコントロール幻想とは、行動経済学において、「客観的には一切コントロールが効かない状況に対して、あたかも自分が影響を与えることができている、と感じてしまうバイアス」のことです。
その結果として、「実現の可能性を自分自身がコントロールしていて、自分に都合の良い結果がより起こりやすくなっている」という錯覚を招きます。
たとえばサイコロを振る時に、たいていの人は大きな数字を出したい時には力を込めて振ります。
一方で小さな数字を出したい時にはできるだけそっと振ります。
サイコロの出る目は振り方を変えても自分でコントロールすることはできません。
しかし振り方を変えることで、あたかも自分の力でサイコロの出る目をコントロールできると思い込んでしまう、そのようなまったく無意味な行動こそが「コントロール幻想」です。
エレベーターで他人がすでに押しているボタンを何度も押しなおした方がエレベーターが早く到着すると信じている。
他人からもらった宝くじよりも自分で買った宝くじの方が当たる確率が高いと信じている。
サッカーの試合を見ながら、その試合に出ている選手と同じように手足を動かしてしまう。
実際には自分ではどうにもできないことに対して、自分で制御でき、影響を与えられると信じてしまう…そんな脳のバグこそが「コントロール幻想」なのです。
サウナ室で決まった場所に座らないとととのえない。
下駄箱やロッカーは37番を使用すると良いことが起こると信じている。
新参者はルールが守れないのだから自分が指導しないといけない。
そのようなコントロール幻想のワナが、常連さんを厄介者=”ヌシ”へと変貌(へんぼう)させていくのです。
”ジンクスの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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自己コントロール感のワナ
コントロール幻想のワナからの続きで、現実的にはほとんどの人は自分で考えているほど自分自身をコントロール出来ていません。
ではなぜ脳はコントロール幻想のワナにはまってしまうのでしょう?
その理由は、脳は「自分こそ世界の中心にいて、自分こそ最強である」という自己中心的な発想に快楽を感じるからです。
“自己中心の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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このような自己中心的な考え方は決して特別なことではなく、どんな人の脳にも仕組まれた発想です。
ですが、実際に自分なりの意見をしっかり持ってそれを実行できている人がどれくらいいるでしょうか?
ほとんどの人は「他人の意見に流されて自分の考えがない…」という、なんとも宙ぶらりんな状態にいるのではないでしょうか?
しかし他人の意見に左右されることは、脳にとって不快以外の何者でもありません。
そのため脳は自己を過大評価して、自分のことはちゃんと自分でコントロール出来ていると思い込むわけです。
とは言え、脳は無意識のうちに他人の判断を気にしています。
そして他人の判断をあたかも“自分自身の意見”であるように脳にインプットしていきます。
わたしたちの知性は知らず知らずのうちに、他人の強い影響下に置かれあやつられているわけです。
しかも他人に操作されていることに気づかずに、“自分で判断を下した”と勘違いをして自尊心を保っているだけにすぎないのです。
自分がお気に入りの銭湯やサウナは、自分が一番よくわかっているので、常連さんである自分は自由に振る舞っても許されるはず。
常連さんである自分のこのような振る舞いはお店の人も理解してくれていて特別視して許してくれる。
しかし新参者は自分と同じ振る舞いは許されない。
だから常連さんである自分が注意して追い出さないといけない。
自分こそは自分自身をコントロール出来ているという自己中心的思い込み=自己コントロール感のワナが、常連さんを厄介者=”ヌシ”へと変貌(へんぼう)させていくのです。
権威のワナ
初めて訪れた銭湯やサウナでは、そこでのしきたりやローカルルールを知るまでは、ちょっとした緊張感が続きます。
とりあえず常連さんと思われる人となるべく同じように振る舞い、粗相(そそう)のないように大人しくすごすのが無難と言えます。
つまり「常連さん」という権威の前に屈してこそ、安心して銭湯やサウナの時間を過ごせると思い込むわけです。
“権威のワナの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考権威や名誉や地位に屈してはいけない!?「権威のワナ」の意味を脳科学で探る
なぜ権威や名誉や地位に屈して服従してしまうのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病 ...
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脳は権威や名誉や地位の前に屈する「権威のワナ」にはまり込む傾向があります。
旧約聖書の中のアダムとイブの逸話は、ざっくりと言えば「神への裏切りと傲慢(ごうまん)」…つまり「偉大な権力に背(そむ)くとどうなるのか?」という話です。
結末は、皆さんご存じの通り、アダムとイブは楽園から追放されてしまいます。
このことを学者、医師、弁護士、教師、CEO、政治家、専門家などが自分の権威や名誉や地位を悪用して、わたしたちすべての人間に信じ込ませようとしているのです。
これが「権威のワナ」の正体です。
1つ目は、「権威や名誉や地位があるからといって間違いをおかさないとは限らない」ことです。
“専門家の予測の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考専門家の予測は外れて当たり前?「予測」を脳科学で探る
専門家の予測はなぜ外れてばかりで当たらないのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病 ...
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2つ目は、「権威や名誉や地位を信じすぎると、自分自身で考えなくなってしまう」ことです。
脳は権威のない人の意見には慎重になる反面、権威のある人の意見はなんの躊躇(ちゅうちょ)もなく聞き入れてしまいます。
時には理性や道徳に反するようなことでさえも権威や名誉や地位の前では服従してしまいます。
つまり、自分のパーソナリティーが不在となり、すべての判断の根拠は権威や名誉や地位という自分の外部に存在するようになってしまうのです。
常連さんの問題にこれを置き換えると、常連さんが厄介者扱いされるのは、なにも常連さんだけが悪いという訳ではないということです。
“常連さん”というだけで、「その施設内では“ヌシ”であり、権威がある人と思い込み、その人の言いなりになってしまう」、そんな権威のワナにはまり込んだ人たちにも問題があるということです。
とは言え、脳が権威や名誉や地位に屈してしまうのは、いわば本能であり、ある意味避けがたいことです。
ですから黙っていれば誰でも簡単に「権威のワナ」にはまり込んでしまいます。
その見本を示してくれているのが、航空会社で行われている「クルー・リソース・マネジメント」です。
飛行機では機長がミスをおかし、副操縦士がそれに気づいても、権威には逆らえないと黙っていれば重大な事故につながって、多くの命が一瞬のうちに奪われます。
実際に多くの航空事故はこのことが原因で発生しています。
最近ではほぼすべての航空会社の操縦士は「クルー・リソース・マネジメント」と呼ばれる研修を受けるようになっています。
この研修では、矛盾点に気づいたら、率直に、しかも迅速にそれを指摘するような訓練が徹底的に行われます。
いわば権威や名誉や地位を強制的に排除する教育です。
そして現実的には「クルー・リソース・マネジメント」の効果により航空事故はぐんと減っています。
しかし航空会社以外の多くの企業ではこのような研修はあまり行われず、何十年も遅れをとっています。
特に支配的なCEOがいる企業では、ほとんどの従業員が「権威のワナ」にはまり込んで、CEOの言いなりです。
このような環境はとても危険で問題です。
銭湯やサウナでも同じことが言えます。
常連さんの厄介話を耳にするようなことがあれば、自分1人で立ち向かうのはなかなか難しいかもしれませんが、施設のスタッフに相談することをお勧めします。
施設側も「大切なお客様だから…」といった曖昧(あいまい)な対応をするのではなく、毅然(きぜん)とした態度でルールを示すことを望みます。
リピートするかわからないような新参者のために、大切な常連さんを手放すことはなかなか出来ないかもしれません。
しかし1人の常連さんの“ヌシ”のせいで、多くのリピーターを失っている可能性があるかもしれません。
最初にも言いましたが、3分の1の人は「常連さんのことを“うっとうしい”と感じたことがある」と思っています。
常連さんは神様なのか?それとも厄介者なのか?
自分のお気に入りの銭湯やサウナの常連さんになっている人からみると、「納得いかない」「理解できない」「受け入れられない」そのように思っている人もいるでしょう。
しかし常連さんと言ってもさまざまです。
今回取り上げた「常連さん」は、文中でも登場しましたが、常連さんの中でも厄介者=“ヌシ”と呼ばれる、施設を私物化しているような人です。
何度もリピートしてくれる常連さんがいてこそ、その施設は潤(うるお)っているはずです。
とは言え、自分でも気づかないうちに常連さんの“ヌシ”になっていて、厄介者扱いされていることもあるかもしれません。
しかし少なくとも常連さんとしては、厄介者=”ヌシ”にはなりたくないでしょう。
客観的な立場でその施設の常連さんを眺めてみることで、今まで気づかなかったこともきっと見えてくるはずです。
通い慣れた銭湯やサウナで過ごす時間は、居心地の良い至福の時間でしょう。
脳は出来る限り“省エネ”を目指しますので、決まりきったパターンで行動することを好み、突発的な未知の行動を嫌います。
しかしどのようなことでも習慣化されすぎると、脳への刺激が少なくなり脳のセンスは退化していきます。
“センスの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【超わかりやすく解説】センスが良い人と悪い人の違いはどこにある?センスの意味と磨き方を脳科学で探る
センスが良い人と悪い人の違いはどこにあるのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気 ...
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たとえば仕事を終えて家に帰る時に、いつもと違う道を通ってみてください。
普段とは違う景色や人の流れに気づき、時に新しいお店や気になる施設が発見できるかもしれません。
「初めて」は脳にとって最高の刺激です。
自分のルーチンを崩して新しい銭湯やサウナに行くことはリスクも伴います。
なかには自分にとってハズレの施設もあるかもしれません。
しかし隠れた名店に出くわす可能性もあります。
そのようなことを続けていると、自然と自分に合った施設と、そうでない施設のそれぞれの特徴や共通点が見えてくるはずです。
その経験値は、そのまま自分の脳のセンスにつながります。
新しい施設に飛び込むことで脳はフル回転して、全身の感覚は研ぎ澄まされていきます。
あなたの磨き上げられたセンス脳は、きっと自分が常連としている施設にもフィードバックできるはずです。
“常連さんの脳科学”のまとめ
銭湯やサウナで見かける常連さんを勝手に脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 銭湯やサウナではたいてい常連さんがいます。
- 常連さんのほとんどは神様ですが、なかには“ヌシ”=厄介者の常連さんもいます。
- 男女で常連さんの意識は大きく異なっていて、“常連さんの厄介話”は女性の方が多いとされています。
- 常連さんの“ヌシ”が厄介者扱いされるのは、“ヌシ”自身にも問題がありますが、“ヌシ”を神聖化している周りの人達にも問題があります。
- 時には新しい銭湯やサウナを訪れて、客観的な視線で常連さんを見てみてください。
- 「初めて」を経験することで脳のセンスは磨かれ、自分が常連として通っている施設にフィードバックできるはずです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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