サウナの湿度について考えたことがありますか?
サウナの湿度を知っていますか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
サウナの湿度を脳科学で説き明かします。
サウナと湿度
サウナの湿度の脳科学
- 湿度とは、空気中にどのくらい水蒸気が含まれているのかを表しています。
- 湿度には相対湿度と絶対湿度があり、高温サウナの相対湿度はおおよそ5~20%程度です。
- 高温サウナをじめじめ蒸し蒸しに感じるのは皮膚に発生する結露とそれによる潜熱の影響です。
- 人体の科学では、皮膚表面をはじめとして内臓、そして脳にも湿度を感じとるシステムは解明されていません。
- 湿度の持つ意味は実はとても難しく、そして未開の領域なのです。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ―達は至高のサウナトランスを味わうためにサウナに通うわけです。
しかし、サウナ室では温度計はよく見かけますが、湿度計を見たことがある人はほとんどいないのではないでしょうか?
それはなぜなのでしょう?
そもそもサウナ室の湿度はどのくらいなのでしょうか?
サウナ室はじめじめ蒸し蒸しなので、高湿度に決まっている…そのように思っている人は少なくないはずです。
そんなに低いはずがない…と思うかもしれません。
正確に言えば、高温サウナの湿度を計測することはかなり至難の業です。
では、なぜサウナの湿度を計ることは難しいのでしょうか?
そして湿度を脳はどのように感知しているのでしょうか?
湿度って何なんだ?
サウナに入った時に、「蒸し暑い」「湿度が高い」と多くの人は感じるはずです。
「湿度」という言葉はよく使われますが、実は湿度の持つ意味はとても難しく、そして未開の領域です。
湿度とは、空気中にどのくらい水蒸気が含まれているのかを表しています。
ですから湿度が高いと水蒸気が多く蒸し暑く感じ、逆に湿度が低いと水蒸気が少なくからっと乾燥した感じがするわけです。
そして、湿度には「相対湿度」と「絶対湿度」の2種類があります。
実はこれが湿度を難しくしているのです。
相対湿度とは、空気中に含まれる水蒸気の量が、その温度で空気が保持できる最大の水蒸気量(飽和水蒸気量)に対してどれだけの割合を占めているかをパーセント(%)で表します。
つまり、相対湿度は空気中に含まれる水蒸気の割合を表しています。
相対湿度は温度によって変化します。
温度が上がると、飽和水蒸気量が増えるので、相対湿度は低くなります。
一方で、温度が下がると、飽和水蒸気量が減るので、相対湿度は高くなります。
続いては絶対湿度です。
絶対湿度とは、空気中に含まれる水蒸気の自体の量を絶対値で表したものです。
つまり、絶対湿度は空気中に含まれる水蒸気の量を表しています。
絶対湿度には、容積絶対湿度と重量絶対湿度(混合比)があります。
容積絶対湿度は、空気1m³中の水蒸気量を表します。
重量絶対湿度(混合比)は、空気1kg中の水蒸気量を表します。
しかし両者にはほとんど差がないので、一般的に絶対湿度と言うと容積絶対湿度を用いることが多いようです。
湿度80%では、空気中にかなりの水蒸気を含んでいて蒸し暑く感じます。
一方で、湿度10%では、空気中にはあまり水蒸気を含んでおらずカラカラに感じがします。
サウナの湿度を知ってますか?
サウナ室ではよく温度計を見かけます。
しかし湿度計を見たことがある人はあまりいないのではないでしょうか?
実は、サウナ室では一般的に湿度計で湿度を計測することは極めて難しく、限られた機器に限られます。
通常の湿度計をサウナ室に持ち込むと、サウナ室の高温環境に対応できず結露で曇ってしまい、その水分によって高い相対湿度が表示されてしまい正しい計測はできません。
結露の水分が気化するまで待っていると、高温のため湿度計の多くは壊れてしまいます。
また、たいていの湿度計は、湿度20%以下は計測できません。
しかし、高温のサウナ室の湿度は大抵5~20%と言われています。
ですからそもそも計測できないわけです。
ここでちょっと疑問が湧いてくる人もいるはずです。
そのように思う人も少なくないはずです。
しかし実際には、高温カラカラサウナと言われるように、室温80~100℃のサウナ室の湿度は5~20%しかありません。
もっと言えば、高温サウナで湿度60~80%は科学的にあり得ません。
先ほどもご説明したように、湿度は温度に大きく影響されます。
温度が上がると空気が保持できる最大の水蒸気量は増加します。
そのため空気中の水蒸気量が同じでも温度が高い時は低い時とくらべると相対湿度は低下するのです。
仮に温度が100℃の時に相対湿度が80%とすると、絶対湿度は計算上475g/m3、水蒸気圧は818hPaとなります。
大気圧は通常1013.25hPaですので、かなりの高圧状態となり、通常の部屋ではあり得ない環境となります。
また人の皮膚表面で結露が発生する絶対湿度は60g/m3とされていて、この数字よりも低い環境がサウナでは快適とされています。
ですから絶対湿度が475g/m3の環境は科学的にあり得ないわけです。
ちなみに温度が100℃の状況で絶対湿度が60g/m3となるのは相対湿度がおおよそ10%程度の時です。
ですから、サウナでは通常相対湿度がおおよそ5~20%程度になるのが正常なわけです。
体感は湿度をどのように感じるのか?
高温サウナでは、意外にも相対湿度は低いことを説明しました。
しかし、実際に高温サウナに入るとじめじめ蒸し蒸しして湿度が高いと感じます。
これはなぜなのでしょう?
実は、人体の科学では、皮膚表面をはじめとして内臓に湿度を感じとる構造は解明されていません。
というよりは、湿度を感じとるシステムがそもそも存在しないのではないかと考えられています。
では、どうやってじめじめ蒸し蒸しして湿度が高いや、乾燥していて湿度が低いと感じているのでしょうか?
それは、皮膚表面の汗の蒸発具合によって、体感的に湿度が高いや低いと感じるような構造になっているのです。
汗をかいてすぐに乾いてしまうと熱も奪われるのでカラッとした感覚になり乾燥して湿度が低いと感じます。
一方で、汗をかいてもすぐに乾燥せず皮膚表面にじっとりと残っているとじめじめ蒸し蒸しとした感覚になり湿度が高いと感じます。
ですから同じ湿度でも蒸し暑く感じたり、乾燥して感じたりと個人差がかなりあるわけです。
人が生きていく上では、絶対湿度を感知して空気中の水分量を正確に把握する必要はありません。
体感的にじめじめ蒸し蒸しして湿度が高いや乾燥していて湿度が低いといった大まかな情報さえあれば生きていく上では何ら問題はありません。
ですから湿度を正確に感じる器官は人体には存在しないのです。
では、サウナで相対湿度が低いにもかかわらず、じめじめ蒸し蒸しして湿度が高いと感じるのはなぜなのでしょう?
サウナ室では高温によって大気中の気体(水蒸気)が皮膚の表面で液体に変化します。
サウナで汗と思っている皮膚についた液体の少なくとも14%、多い時は67%が汗ではなく結露と言われています。
結露が発生する時皮膚の表面では潜熱という熱が発生して皮膚が熱く感じます。
また結露は汗とともに蒸発していきますが、次第に蒸発しきれなくなった液体が皮膚表面に残るようになります。
これらの効果によって体感はじめじめ蒸し蒸しした感覚となり湿度が高いと感じてしまうわけです。
”サウナと汗の関係”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】あなたは汗をかきやすい?それともかきにくい?サウナと脳と汗の関係を脳科学で探る
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実際にロウリュなどで絶対湿度は上昇しても、室温の上昇によって飽和水蒸気量も上昇するので相対湿度はあまり変わりません。
にも関わらず、体感は湿度が高いと感じるわけです。
脳は湿度をどのように感じるのか?
先ほどもご説明したように、人体の科学では、皮膚表面をはじめとして内臓に湿度を感じとる構造は解明されていません。
それは脳も例外ではなく、脳自体が直接湿度を感じる能力は解明されていません。
しかし、「体感は湿度をどのように感じるのか?」でご説明したように、わたしたちの体は湿度の変化に対応するための様々なメカニズムを持っています。
湿度を感じるセンサーは主に皮膚や粘膜にあり、これらのセンサーは湿度の変化を感知し、その情報を脳の体温調節中枢に伝えます。
例えば、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体温調節が難しくなるため、脳は暑さを感じます。
これは、汗が蒸発するときに肌表面の温度を奪っていく性質があるためで、汗が乾くと体温が下がり涼しく感じます。
しかし湿度が高いと汗が蒸発しません。
したがって、脳は皮膚からの情報によって間接的に湿度の影響を感じていると言えます。
これらの感覚情報は、わたしたちが快適な環境を選ぶため、または体温を適切に調節するために使用されます。
“サウナと脳と体温調節の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】あなたは暑さと寒さとどちらが得意?サウナと脳と体温調節の関係を脳科学で探る
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このような湿度を感知して体温調節する機能は意識的に行われますが、実は自律神経を通して下無意識的にも行われます。
無意識的とは、暑さや寒さを意識しなくても、暑さや寒さに対して脳や体が勝手に反応して体温調節することで、このようにさまざまに変化する温度環境に意識せずとも対応できるからこそ人類は生き延びてこれたと言えます。
特にサウナは日常生活ではあり得ない高温の環境です。
そのような中で湿度はとても重要な意味を持ってきます。
脳にも体にも、温度とともに湿度は当然大きな影響を与えます。
ですから、特にロウリュなどによって湿度が大きく変化する場合などは、意識的に汗をかいて体温調整しているだけではとても追いつきません。
脳からの指令で自律神経が活発に働いて、無意識的に体温調整を行う必要があるのです。
この自律神経の働きは、ホメオスターシス(生体恒常性)という機能を維持する働きであり、生命維持には欠かせないシステムです。
サウナは極限の環境であり、またロウリュなどによって瞬間的に温度と湿度が変化して劇的に環境が変化します。
そのような中で生きていくためには、ホメオスターシスは絶対的に必要なシステムです。
しかし、ホメオスターシスに関してはいまだ解明されていない部分も多く残っています。
特に湿度に関してはわからないことだらけです。
今後、脳科学の分野で湿度に関する脳の調節機構が解明されていけば、もっと湿度についてわかってくることも増えてくるかもしれません、
“サウナの湿度の脳科学”のまとめ
サウナの湿度を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 湿度とは、空気中にどのくらい水蒸気が含まれているのかを表しています。
- 湿度には相対湿度と絶対湿度があり、高温サウナの相対湿度はおおよそ5~20%程度です。
- 高温サウナをじめじめ蒸し蒸しに感じるのは皮膚に発生する結露とそれによる潜熱の影響です。
- 人体の科学では、皮膚表面をはじめとして内臓、そして脳にも湿度を感じとるシステムは解明されていません。
- 湿度の持つ意味は実はとても難しく、そして未開の領域なのです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
最後にポチっとよろしくお願いします。
このブログが、FUROGIWA LAST BOYさんのブログ「Chill湯♨ 東京シャワー オフロとボクと、時々、サウナ」に紹介されました。
FUROGIWA LAST BOYさんのブログでは、おもに東京の銭湯・スーパー銭湯・温泉に関連することやその他、興味のある分野などが紹介されています。