「サウナでととのう」は漢方医学において、人の体を構成する「気」「血」「水」とどのような関係があるのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
漢方医学を脳科学で説き明かします。
サウナと漢方医学
漢方医学の脳科学
- 漢方医学は日本の伝統医学です。
- 漢方医学では、人体を構成する基本要素を「気」「血」「水」の3つで表し、この「気」「血」「水」こそが脳疲労や体調の改善に重要としています。
- 漢方医学では、“「心」が脳をコントロールし、「腎」が脳を支えている”、つまり健全な脳の働きには、「心」と「腎」の2つのサポートが欠かせないとしています。
- 「気」「血」「水」がととのった状態は、「心」と「腎」がととのった状態でもあり、これは脳がトランスした最高の状態である「サウナでととのう」と密接に関係しています。
- ぜひ銭湯やサウナで漢方医学の基本理念を実践して、最高の「サウナでととのう」を体感してみてください。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ―達は至高のサウナトランスを味わうためにサウナに通うわけです。
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ところで、銭湯やサウナでは浴槽やサウナにさまざまな入浴剤やアロマが用いられ、香りによってリラックス効果などが期待できます。
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そのなかでも漢方薬は香りのみならず、含まれる生薬の効果もあり、自分は「漢方薬の湯」や「漢方薬アロマ」はお好みです。
漢方医学と聞くと何となく中国のイメージを持ってしまいがちです。
しかし、実は漢方医学は中国を起源とする日本の伝統医学で、中国から伝わった医学(中医学)が日本で独自の発展を遂げたものです。
ココがポイント
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この考え方はまさに「サウナでととのう」に精通していると言えます。
漢方医学はとても奥深くそう簡単に理解できるものではありませんが、少しでも知っていると「サウナでととのう」にお得なことがあるはずです。
漢方医学と中医学と西洋医学
一般的に生薬を用いた医療をまとめて「漢方」と呼びます。
しかしこの「漢方」という言葉には、実は「日本漢方(漢方医学)」と「中医学」の異なる2つの学問が含まれています。
そもそも「漢方」という言葉は、江戸時代に日本に伝来したオランダ医学「蘭方」に対して、それまで日本にあった伝統医学を「漢の国から伝来した医学」という考えをもとに「漢方」と名付けられました。
一方、「中医学」は「中国伝統医学」の略称で、西洋医学とは異なった自然哲学の理論に基づいた中国の伝統医学です。
日本独自の漢方医学とはいえ、そのルーツは中医学です。
しかし、漢方医学は中国から日本に伝来してから日本独自の発展を遂げたため、現在では中医学とは異なる学問としてとらえられています。
ちなみに中医学は「鍼灸(しんきゅう)」「湯液(とうえき)」「推拿(すいな)」「気功」「中医営養学(薬膳)」と大まかに5つに分類され、すべて陰陽学説や五行学説といった中医基礎理論に基づいた医学体系となっています。
よく東洋医学、西洋医学という分け方をされますが、現代の病院などで一般的に行われている診療や手術などは西洋医学に基づいています。
東洋という言葉は、中国では「日本」という意味になります。
東の海(洋)の国という意味であり、そのため東洋医学は日本人が創った言葉であり、日本の医学、つまりは古くからおこなわれている伝統的な民族医学という意味になります。
また東洋医学は、西洋医学を意識し、日本古来の医学を見直そうという気持ちが込められて作られた言葉と言えます。
一方で、漢方医学は、先ほども説明したようにオランダ医学である蘭方と区別する目的で作られた言葉です。
ですから基本的には、漢方医学=東洋医学といってもほぼ問題ないと言えます。
東洋医学は、体の不調を内側から根本的に治すことを目的としています。
特徴としては、治療に時間がかかる、体に負担がかかりにくい、経験的かつ主観的、不調の原因まで追究していく、ということがあげられます。
一方で、西洋医学は、体の悪い部分に直接アプローチし、投薬や手術などで治療します。
特徴としては、短期間で効果が出る、科学的・局所的・理論的、即効性を求めて対処することがあげられます。
たとえば、西洋医学の考え方では、気管支喘息の患者は呼吸器科に、アトピー性皮膚炎の患者は皮膚科で治療を受けることが一般的です。
それに対して、東洋医学では、気管支喘息やアトピー性皮膚炎を患(わずら)っている人そのものの生命力に注目し、細胞や臓器は全体としてつながっていると考え、不調の原因を取り除こうとします。
東洋医学と西洋医学は、どちらが良いというものではなく、それぞれに違った良さがあります。
例えば、西洋医学は病名を特定や急性の疾患に有効ですし、東洋医学は病気の予防や治療後のケア、原因のはっきりしない病態に向いています。
東洋医学と西洋医学は基本的にはまったくの別の医学なのです。
また得意分野も大きく異なります。
しかし、東洋医学と西洋医学は相容れないわけではなく、融合させてぞれぞれの強みを活かすこともできます。
漢方医学の基本理念
ココがポイント
「気」は、体を流れるエネルギーのことで、元気や気力という言葉にも使われている“気”はすべての原動力となっています。
物体として目に見えるものではないため、少しわかりにくいかもしれませんが、この「気」は内臓などの働きや、免疫力、精神状態などに関係しています。
体内で「気」のめぐりが悪くなると、イライラしがちになり、不足すると無気力になります。
「血」は、血管内を流れている液体で、全身に栄養を行き渡らせて組織をうるおします。
この血は、西洋医学の血液に相当しますが、漢方医学では、食物から得た「気」と「水(津液)」が「血」に変化すると考えられています。
体内で「血」のめぐりが悪くなると、肩こりや頭痛、目のクマなどの症状があらわれ、不足すると肌や髪が乾燥したり、貧血気味になったりします。
「水」は、血液以外の体内にある水分のことで、体液、リンパ液、涙、尿などを指しています。
水には、中医学の理論にならって、粘膜などをうるおすサラサラの水分である「津(しん)」と、内臓、骨、脳、関節などに存在するヌルヌルの水分である「液(えき)」の2つがあります。
「水」は消化や排泄作用に影響を及ぼす他、臓器をスムーズに働かせるための潤滑油のような働きも持っています。
体内で「水」の巡りが悪くなると、代謝が低下して、余分な水分が体内にたまります。
その結果、むくみ、手足の冷え、倦怠感といった症状が現れるようになります。
「気」「血」「水」の3つは、お互いに影響し合っています。
大切なこと、この3つがバランス良くめぐっていることです。
どれかが多過ぎても少な過ぎても健康とは言えません。
漢方医学では「その人に何が不足しているのか」や「その人のタイプ(体質)はどのようなものなのか」をパーソナルに診断します。
これを「証」と呼びます。
「証」とは、分かりやすくいうと、「その人の状態(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方などの個人差)をあらわすもの」です。
本人が訴える症状や、体格などの要素から判別します。
そして漢方医学では、その「証」に合った漢方薬が処方されます。
ですから、同じ症状でも、自分の「証」と他の人の「証」が違えば、処方される漢方薬も違ってきます。
自分が服用している漢方薬を同じ症状だからといって、他の人が飲んでも効果が期待できない可能性があるのはこういった理由からです。
「証」には「虚(きょ)」と「実(じつ)」の2つがあります。
体力や抵抗力が充実している人を「実証(じっしょう)」、体力がなく、弱々しい感じの人を「虚証(きょしょう)」と言います。
そしてこれを「気」「血」「水」に当てはめて大別すると、「気血水の不足した状態」…気虚(ききょ)、血虚(けっきょ)、陰虚(いんきょ)、「気血水の生成・運行・代謝の障害によるもの」…気滞(きたい)、瘀血(おけつ)、水毒(すいどく)の6つのタイプに分けられます。
なんだかややこしくなってきましたが、漢方医学では、主にこの「証」と「気」「血」「水」の2つのものさしが、その人の調子を計る判断材料となります。
そしてそれぞれに合った漢方薬が処方されるのです。
漢方薬とは?
漢方医学で用いられる医薬品は漢方薬と呼ばれます。
漢方薬とは、漢方医学にもとづいて、基本的には2種類以上の生薬(しょうやく)を定められた量で組み合わせた薬のことです。
ですからサプリメントとは異なり、一般用漢方製剤は、一般用医薬品販売制度のリスク区分において一 律に第2類医薬品に分類されています。
”サプリメントの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】サプリメントが「サウナでととのう」をサポートするって本当?サプリメントを脳科学で探る
サプリメントが「サウナでととのう」をサポートするって本当なのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20 ...
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ちなみに生薬とは、植物の葉、茎、根などや鉱物、動物の中で薬効があるとされる一部分を加工(切る、乾燥する、蒸すなど)したものです。
例えば、漢方薬で風邪をひいた時によく用いられる葛根湯(かっこんとう)は、7種類の生薬から構成されています。
漢方薬は、長い伝統と豊富な経験から作られてきたもので、体が本来持っている働きを高めるように作用して、体自身の力で正常な状態に戻そうとするものです。
局所的に現れた症状だけを見るのではなく、病気の人全体を見て、心身全体のひずみを治していくという総合治療だと言えます。
つまり、自覚症状を重視して、その人ごとに違う個人差を大切にします。
長い人生、晴れの日ばかりではなく雨の日もあります。
体も同じで、体調が良い日ばかりとは限りません。
とくに女性は、月経や出産などで、一生のうちでも体のバランスが大きく変わり、それについていけずに不調を感じることも多いものです。
病院に行くほどではなくても、「なんとなく不調…」、そのような体のバランスの微妙な変化にこそ漢方薬は対応し、整えてくれるわけです。
また、漢方薬を選ぶ時には、症状だけでなく、その人の体の状態を考慮することも重要です。
たとえば、同じ「冷え症」でも、手足が冷えるのか、足腰が冷えるのか、足は冷えるのに顔はのぼせるのかで、選ぶ薬が違ってきます。
大切なのは、その人が本来もっている体のバランスです。
まずは自分自身を良く知って、そしてそれを伝えて自分に合った漢方薬を処方してもらってみてください。
すぐに効果は現れないかもしれませんが、多くの場合はじわじわとした効果に驚くはずです。
漢方医学における脳
漢方医学では、「五行」を「気」「血」「水」と同様に自分の体を調べる物差しと考えています。
もともと「五行」とは、自然界の代表的な「木」「火」「土」「金」「水」の5つの物質を用いて物事の性質を分類した考え方です。
この考えを人の体に応用して、5つに分類したのが「五臓」という考え方です。
ココがポイント
その中で脳に影響しているのが、「心」と「腎」です。
漢方医学には、「心は神を蔵し神明を主り、腎は精を蔵し脳に通じる」という言葉があります。
その意味は、“「心」が脳をコントロールし、「腎」が脳を支えている”、つまり健全な脳の働きには、「心」と「腎」の2つのサポートが欠かせない、と言うことです。
「心」には「脳や精神活動をコントロールする役割」と「血液循環と拍動をコントロールする役割」があると考えられています。
そのため、意識や思考、判断、また、記憶などの脳の重要な働きは「心」の働きと連動し、「心」の栄養と機能が正常であれば脳は健康的に働けます。
しかし、何らかの原因で「心」に不具合が生じると、脳も影響を受け、健全に働きにくくなり、そのことで、記憶力の低下、思考力、判断力の低下などを招き、ちょっとしたことが思い出せない「物忘れ」などの症状が起こりやすくなります。
特に栄養である「血」は「心」の働きを維持する上でとても重要な存在です。
「血」が不足すると「心」が十分に滋養されず、機能が低下し、物忘れ以外にも、頭のふらつき、眠りが浅い、夢を見やすいなどのトラブルを引き起こしやすくなります。
「腎」には、「生命力を貯蔵する役割」、「生殖や成長発育、老化をコントロールする役割」、「水分代謝を調節する役割」があると考えられています。
漢方医学では、老化は「腎」の弱りが大きく関係しているという考えがあります。
「腎」が弱ると老化は進み、逆に「腎」が元気で強いと老化も緩やかになるので、老化対策には「腎」の強化が欠かせません。
これは“「腎」が老化をコントロールする”という重要な役割も担っているためで、脳の老化も例外ではありません。
「腎」が弱ると脳を支えきれなくなり、脳の衰えにつながります。
そのため、老化とともに物忘れが起こりやすくなるのです。
「腎」の弱りは、老化だけではなく、慢性疲労や虚弱体質、長期間にわたる病気など体力の低下が原因でも起こります。
年齢に関係なく物忘れなどが起こるのはこのためです。
また「腎」には、エネルギーの根本物質である「精」が蓄えられています。
この「精」によってよって人は成長、発育します。
さらに、「精」は、「骨」や「髄(骨髄、脊髄、脳髄)」を生み出します。
「骨」を「髄」が満たし、「脳」にもたくさんの「髄」が蓄えられるので、「脳」は「髄の溜まり」とか「髄の海」(髄が溜まっているところ)と呼ばれることもあります。
「脳」の働きを良くするには、「脳」にたくさんの「髄」が溜まっていなければなりません。
そのためにも、「腎」が元気である必要があるのです。
「心」を強くするには、ストレスをためない、良質な睡眠を心がける、「心」を養う“養心”を助ける食事をする、などが重要とされています。
一方で「腎」を強くするには、疲れを貯めない、体を冷やさない、「腎」を補う“補腎”を助ける食事をする、などが重要とされています。
「脳の機能が正常で、かつ脳の活動に必要な栄養(血)が十分に巡っている状態」を保つため、「心」と「腎」を鍛えることこそが、漢方医学においては大切なのです。
サウナと漢方医学の不思議な関係
ココがポイント
「気」は、Vital Energy(生命エネルギー)であり、血液をめぐらせる、呼吸をする、ウィルスや細菌から体を守る、といった生命活動のもととなる存在です。
「気」は、目に見えるわけではありませんので、なんとも不思議な存在のように思われがちですが、それほど難しく考える必要はありません。
元気、空気、気配、気が強い、気を失う、気が抜ける、気が晴れる、などの日常語を思い返すだけでも、「気」という言葉が持つ意味や雰囲気はつかめるでしょう。
気の存在やメカニズムは、今後科学的に解明されるべき課題です。
ですから、「現代医学で存在を認められていないから…」や「科学的に証明されていないから…」といった理由だけで、何千年もの間生命現象のひとつとして語られてきた「気」を、頭から否定したり超常現象であるかのごとく扱うのはナンセンスと言えるでしょう。
人が活動するためのエネルギー源である「気」は、体を動かすことによって、どんどん生み出されます。
この「動かす」というのは、単に運動をするという意味だけではなく、心臓が脳や体に血液をめぐらせたり、胃腸が食べたものを消化吸収したり、肺が呼吸をしてきれいな空気を取り込んだりといった臓器の動きも含まれます。
つまり、生きている限り、気は生み出されていくのです。
サウナ、水風呂で全身の自律神経、血液、胃腸、呼吸などを盛んに動かして「気」が生み出されると、休憩タイムに「気」が全身をかけめぐり、そして最終的に脳から脳内麻薬が分泌されてトランス状態となるわけです。
「気」は当然、「血」にも作用します。
「血」は、「気」という原動力がなくては、体の中をくまなくめぐることはできません。
そのため、「気」のめぐりが悪くなれば、当然血行も悪くなってしまいます。
漢方医学における「血」は、いわゆる「血液」というだけでなく、「体の各所に栄養を与える物質」という意味も含んでいます。
つまり「気」が「血」を引き連れて体中をめぐる時に、「気」は脳や体にエネルギーを与え、「血」は栄養を与えている、というわけです。
「血」は、パートナーである「気」にも絶えず栄養を与えています。
「気」もまた「血」から栄養を与えられる存在のひとつだからです。
サウナ、水風呂における温冷交代浴では自律神経である交感神経と副交感神経が入れ替わり活発に働き、脳や全身に「血」を送り続け、そして「気」が脳や体をめぐります。
あまみとは、サウナ後に腕や足の皮膚に出現するの赤い斑点状のまだら模様です。
“あまみの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】サウナの“あまみ”ってなんだろう?”あまみ”の正体を脳科学で探る
サウナから出た後に腕や足に見られる“あまみ”の正体は何なのでしょう? “あまみ”は体にいいのでしょうか?それとも悪いのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えし ...
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”あまみ”が出現する時は、自律神経がうまく働き、脳内麻薬が盛んに分泌され、いわゆる「ととのう」を体感しやすい状況です。
逆に、”あまみ”が出現しない時は、自律神経失調の状態であり、無理をすると危険な状態におちいる可能性があり要注意です。
このようにサウナは漢方医学の「血」とも、密接に関わっているのです。
人の体の60%は水でできています。
ですから人が健康に生きていくうえで「水」のコントロールはとても重要です。
西洋医学では、口から摂取した水分はすべて血管に入り、腎臓で尿となって体外に排出されると解釈しています。
しかし、実際にはこのようなルートでスムーズに水が流れるとは限らず、「水」が血管外の組織にたまってしまうことも多くあります。
これには個体差があり、実際の血管内の血液の流れのみならず、血管外の水分も含めた全身の「水」を考えるのが漢方医学です。
「水」のコントロールがうまくいかなくなり、体に水が停滞すると“水毒”という状態に陥ります。
水毒の代表的な症状では、目に見えるほどのむくみがなくても、なんとなく体が重くだるい、朝なかなか起きられない、胃腸がむかむかしやすい、空腹感がない、乗り物酔いしやすい、痰や唾液の量が以前より多くなった、舌に白い苔がべったりとついている、おなかを押すとポチャポチャと音がする、梅雨時や雨の日に体調を崩しやすい、といった症状があれば、水毒を疑う必要があります。
体が運動不足になっていると、筋肉が脂肪に置き変わり、同じ運動をしてもエネルギーの消費が悪くなってしまいます。
このこともまた、「水」の代謝に悪影響を及ぼします。
「水」の代謝を良くするために体を動かすことは良いことですが、それによって汗をかきすぎにも注意が必要です。
汗をかく時には、必ず「気」のエネルギーも一緒に外に排出されるため、汗をかきすぎると体にとって必要なエネルギーと水分を同時に消耗することになります。
サウナに入ったあとに、なんともいえない疲れを感じる時は、汗をかきすぎて必要な「気」や「水」まで失ってしまった証拠です。
体を動かすことは、「水」のみならず「気」や「血」にとっても大切なことですが、“汗をかく”ということは、単なる結果に過ぎません。
大切なのは、汗をかく程度まで「気」「血」「水」をめぐらせることなのです。
全身にじんわりと、まんべんなく汗がにじむ…これこそが、脳科学的にも漢方医学的にも、最も健康的な汗のかき方です。
”汗の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】あなたは汗をかきやすい?それともかきにくい?サウナと脳と汗の関係を脳科学で探る
あなたは汗をかきやすいでしょうか?それともかきにくいでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多 ...
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「水」は、「気」や「血」と一緒に体中をめぐって、各所に潤いを与えています。
そのため、汗によって体が水不足になると、脳や体にさまざまな障害が発生してきます。
このように、体の水分が不足した状態を、漢方では「陰虚」、または「津液虚」と呼びます。
水分過剰と水分不足は、相反する病態のように見えますが、「必要な水は不足しているのに、余分な水分はあふれている」という場合もあります。
サウナ、水風呂でしっかりと体の余分な水分を出して、そのあとはしっかりと「血」となる水分を補給する…これが理想でしょう。
“サウナにまつわる水分補給の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】サウナにまつわる水分補給を脳科学で探る
サウナではなにを、いつ、どれくらい飲むのが効果的なのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年以上多 ...
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「サウナでととのう」の状態は、漢方医学においてその基本理念である、“人の体は「気」「血」「水」の3つで構成されている” を最高にととのえた状態と言えるでしょう。
また「気」「血」「水」が最高にととのった状態は、「気」の1つである「心」と、「血」「水」をコントロールする「腎」が最高にととのった状態であり、「心は神を蔵し神明を主り、腎は精を蔵し脳に通じる」が極まった状態と言えるのではないでしょうか。
つまり、「サウナでととのう」は「心は神を蔵し神明を主り、腎は精を蔵し脳に通じる」を極めた、最高の脳の状態ということにもなります。
銭湯やサウナで「漢方薬の湯」や「漢方薬アロマ」がしっくりくるのは、漢方医学と「サウナでととのう」が実は密接に関係じているからといっても過言ではないかもしれません。
“漢方医学の脳科学”のまとめ
漢方医学を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 漢方医学は日本の伝統医学です。
- 漢方医学では、人体を構成する基本要素を「気」「血」「水」の3つで表し、この「気」「血」「水」こそが脳疲労や体調の改善に重要としています。
- 漢方医学では、“「心」が脳をコントロールし、「腎」が脳を支えている”、つまり健全な脳の働きには、「心」と「腎」の2つのサポートが欠かせないとしています。
- 「気」「血」「水」がととのった状態は、「心」と「腎」がととのった状態でもあり、これは脳がトランスした最高の状態である「サウナでととのう」と密接に関係しています。
- ぜひ銭湯やサウナで漢方医学の基本理念を実践して、最高の「サウナでととのう」を体感してみてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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