サウナトランス(ととのう)の極意はサウナにあり?水風呂あり?内外気浴にあり?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
サウナトランス(ととのう)の極意である水風呂を脳科学で説き明かします。
サウナトランス(ととのう)とは?
水風呂の脳科学
- 「サウナトランス(ととのう)の極意は水風呂にあり」と言われる所以(ゆえん)は、水風呂は自律神経を一瞬にして切り替えサウナトランスのための下ごしらえをする重要な役割を担っているからです。
- 最高のサウナトランスを体感するために水風呂にはさまざま条件があります。
- しかし知識だけに振り回されるのではなく、自分自身で実際にさまざまな水風呂を体感して、自分に合った最高のコンディションの水風呂をぜひ見つけ出してください。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
しかしただサウナに入るだけではサウナトランスは体感できません。
体を清めてサウナに入る
汗を流して水風呂に入る
体の水分を拭いて内あるいは外気浴で休憩する
この流れが1セットです。
一般的にはこれを3セット行うと、サウナトランスが体感できます。
温かいと冷たいを繰り返す温冷交代浴によって身体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になります。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナ好き必見】「サウナでととのう」の意味、方法、効果を脳科学で探る
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「最高に気持ちいい」…そんなサウナトランスを体感するには、うまく温冷交代浴を行う必要があります。
当然サウナ室も休憩タイムもそれぞれ重要ですが、
「サウナトランス(ととのう)の極意は水風呂にあり」
そのように言う人もいるくらい、水風呂は重要な意味合いを持っています。
「サウナの聖地」と呼ばれる「サウナしきじ」の最大の魅力は水風呂です。
“サウナの聖地の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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駿河の自然の中で育まれた天然の湧水を使用した水風呂はとても気持ちよく、また天井から滝のごとく降り注ぐ天然水を浴びていると、水風呂から出たくなくなってしまいます。
また「サウナしきじ」と並んで水風呂が有名なのが、「神戸クアハウス」です。
神戸クアハウスを語る上で欠かせないのは、なんといっても「神戸ウォーター」でしょう。
神戸の六甲山系の花崗岩(かこうがん)層から湧出する地下水は、ミネラルバランスが絶妙なことから、昔から飲料水として重宝されてきました。
高純度ゆえに、「赤道を越えても腐らない」といわれたこの水は、「KOBE WATER」として世界中の船乗りから愛されたと言われています。
神戸クアハウスの地下から汲み上げられる高純度でミネラル豊富な水は、「神戸ウォーター六甲布引の水」として商標登録されており一般販売されています。
神戸クアハウスでは、この名水を全館で惜しみなく使用しています。
水風呂やシャワーなどの浴場はもちろんのこと、レストランの調理用水、さらにはお手洗いの水まで、館内全てで神戸ウォーターを使用しているというのですから驚きです。
神戸クアハウスでは、水風呂はチラー(冷却装置)を使用せず、地下から汲み上げた神戸ウォーターが上からかけ流しになっています。
湧出したままの自然の温度(18℃前後)の水は冷たすぎず快適で、高野槙の浴槽の肌触りと相まって、いつまでも浸かっていたくなる水風呂です。
温冷交代浴と水風呂
サウナトランスを語るうえで最も重要なのが自律神経です。
“サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ですからまずは自律神経について知っていることが、サウナトランスを体感するために何よりも大切です。
脳は「気持ちいいこと」を追求すると自律神経が活性化します。
自律神経には交感神経と副交感神経という2つの神経回路があります。
この2つの神経回路は同時に働くことはなく、どちらか一方が働いている時は、もう1つの神経は休んでいます。
ですからこの2つの神経は相反する働きをしています。
交感神経は「闘争と逃走の神経」と呼ばれていて、敵と闘い狩猟をする、敵から逃げる、といった緊張時に働きます。
一方で副交感神経は寝る、食べる、休息する、といったリラックスする時に働きます。
サウナ室内は高温多湿の異常空間であり、脳は生命の危機を感じ戦闘モードになりますので、交感神経が盛んに働きます。
その結果として、体内の血管が拡張します。
血管を拡張させることで、少しでも血液を冷やそうとするのです。
一方で水風呂、休息タイムでは一気にリラックスモードとなりますので、副交感神経が盛んに働きます。
その結果として、体内の血管は収縮します。
血管を収縮させることで血液から熱が逃げるのを防ごうとします。
たとえばせっかくお風呂で温まっても冷え性の人はすぐに体が冷えきって湯冷めしてしまいます。
これは温まって拡張した血管をそのままにしておくと熱がどんどん放散されていってしまうからです。
しかし冷たい水を浴びて血管を収縮させることで熱を閉じ込めて湯冷めを防ぐことができるのです。
つまり温冷交代浴では血管の拡張と収縮によって温かさを持続させる効果があります。
”あまみの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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またそれと同時に血管が拡張と収縮を繰り返すことで血管のポンプ作用がアップして全身の血行が良くなる効果もあります。
当然脳にもたくさんの血液が流れ、血液に含まれる酸素もたくさん脳に取り込まれます。
それにより深いリラクゼーション効果が生み出され「ととのう」の境地にたどり着けるわけです。
サウナ室の高温多湿の過酷な環境で極限状態となり、交感神経がさかんに働いている状況をオフにして、副交感神経が働くリラクゼーションモードに切り替える役割をしているのが水風呂です。
しかもこの切り替えは一瞬で行われる必要があります。
まさに交感神経のスイッチを一瞬でオフにして、副交感神経のスイッチを一瞬でオンにする必要があります。
この切り替えが素早く行えないと、脳の極限状態を維持できず、トランスという境地に達することはできません。
サウナ室から出て水風呂に入らずに水分をとりに脱衣所に行ったり、途中で湯船に浸かったりと他の行動をプラスすると自律神経の切り替えは速やかに行えません。
そして最終セットの内外気浴ではサウナトランスをあまり意識しすぎず、これまでの数セットでトランス状態になりつつある状態から緩やかに着陸して、とにかく脳を「気持ちいい」状態にもっていく、そんなイメージでしょうか。
ですから水風呂は、とにかくサウナ室で極限まで高まった交感神経を一瞬にしてシャットダウンして、副交感神経をオンに切り替えて内外気浴へつないでいく、という重要な役割を果たしているわけです。
サウナトランスのための水風呂の条件
ひたすら冷たい水風呂?
水風呂の水質やpHや硬度は?
メントールなど爽快感を高める水風呂の方がよいのでは?
さまざまな疑問が浮かびます。
水風呂の水温
水風呂の温度は16~20℃くらいのことが多いようですが、中には10℃前後、あるいは10℃以下の「シングル」、「グルシン」、「ジュード・ロウ」などと呼ばれるような冷たい水風呂もあります。
一方で20℃を超える比較的温度の高い水風呂もあります。
温度を考える時にまず大切なのが適温です。
“温度の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考脳の温度センサーの意味って何だろう?温度を脳科学で探る
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適温とは心地よく快適にすごすことのできる温度のことです。
一般に室温は体温-10℃が適正と言われますがそう単純ではありません。
夏と冬では室温の適温は違っていてだいたいの基準が決まっています。
一般的に夏は25~28℃で冬は18~22度が適温とされています。
さらに言えば、人間の経済活動は平均13度程度がピークで、これより高くても低くても活動が低下すると言われています。
つまり脳の温度センサーが心地よく快適と感じる温度は『13℃』なのです。
体感の適温よりも脳の温度センサーの適温が低めに設定されているのは、寒さで滅びた恐竜たちから学んだ教訓なのかもしれません。
基本的に脳は、10℃以上30℃以下では冷受容器が反応し「冷たい」と感じ、32℃以上45℃以下では温受容器が反応し「熱い」「温かい」と感じるように設定されています。
また、温度刺激が33℃前後の場合では脳は冷たいとも熱いとも感じないため、この温度帯は「無関温度(不感温)」と呼ばれています。
ちなみに無関温度の湯に浸かるとエネルギー消費が一番小さくなり、長湯ができると言われています。
実際に入ってみるとわかりますが、シングルの水風呂は「冷たい」を通り超して「痛い」と感じます。
脳のセンサーは10℃以下の冷たい刺激では冷受容器よりも痛覚受容器が反応するわけです。
水質が良いとされる水風呂は、多くの場合20℃前後と水温が比較的高めに設定されています。
なぜなら、このくらいの水温であれば、ある程度の時間浸かってゆっくり身体を冷やすことができるからです。
また、水質の良さを楽しむには「痛み」として知覚される温度よりも、このくらいの少し高めの温度の方がよいのでしょう。
結局、「水温は何度がもっとも理想的なのでしょう?」の質問の答えは明確には言い切れませんが、脳が快適と感じる13℃前後が理想的なのかもしれません。
水風呂の水質
一般的には、肌当たりがなめらか、水が柔らかく感じるなど、水質の違いは体感的に気持ちよく感じられるものです。
水質を左右する要素の中でもっとも重要なものは、水の中に含まれる不純物です。
不純物が多い水は、一般的に安全性が低く飲むことができません。
しかしそれだけではなく、不純物が多い水は熱が伝わりづらいと言われています。
「熱が伝わる」というのは、熱が温度の高い方から低い方へ移動するということです。
熱いお湯の場合は、お湯の熱が身体に伝わってきます。
水風呂の場合は、身体の方が熱いので、身体の熱が水に移動します。
この熱の移動が不純物のない水質が良い水の方がよりスムーズに行われます。
ですから「水風呂では水質の良い水の方がより身体が冷える」ということになります。
さらに言えば、掛け流しで水が循環していれば、より不純物が少なくなり熱の伝わり方が増してより冷える、ということです。
つまり不純物を含んでいるかどうか=水質が良いかどうかによって「冷え方」が変わるということです。
“サウナのマナーの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】銭湯やサウナでマナーを守らない理由はどこにある?マナーを脳科学で探る
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水質を左右する要素の中でもうひとつ重要なのが、溶存酸素量です。
溶存酸素とは水のなかに含まれた酸素のことで、水質汚染の度合いを示す指標として使われています。
より多くの酸素が含まれていれば良い水質であり、逆に酸素があまり含まれていないと汚染されているということになります。
しかし実際に水風呂にどのくらいの不純物が含まれているのか、どのくらいの酸素が含まれているのか、はなかなか知り得ない情報です。
そこで簡単に水質の良し悪しを知ることができる指標があります。
それは、水質が良いということは、飲める水でおいしい水ということです。
「おいしい水研究会」の調査によれば、「おいしい水は、安全な水である」ということが言えるそうです。
つまり「おいしい水」は成分的に安定していて、不純物も少なく、酸素の含有量も多く安全ということです。
実際に先ほど登場した、サウナしきじや神戸クアハウスの水風呂の水は飲むことが可能です。
その他では、サウナサン(佐世保市)、スパ・アルプス(富山市)、新岐阜サウナ(岐阜市)、大垣サウナ(大垣市)、サウナピア(豊橋市)、湧くわく天然温泉ラピスパ(米子市)、白鳳の里(米子市)、ウェルビー栄、今池、名鉄の3店(名古屋)、サウナと天然温泉湯らっくす(熊本市)などが水質が良い水風呂で有名なのではないでしょうか。
逆に「まずい水=水質が悪い水」は明確に示されています。
残留塩素量が多い(カルキ臭がきつい)
臭気度が高い(鉄臭い、錆臭い)
過マンガン酸カリウム消費量(水に含まれる有機物の劣化=水が腐る)
自分はサウナしきじと神戸クアハウスの水風呂に浸かったことがありますが、何かに包まれているような、何とも言えない不思議な快感があり、ずっと水風呂に浸かっていたい気分になりました。
水風呂と硬度
“硬水と軟水の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】「硬水」と「軟水」ってどう違うか知ってますか?「硬水」と「軟水」を脳科学で探る
「硬水」と「軟水」ってどう違うのでしょう? 「硬水」と「軟水」で体い良いのはどちらでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳 ...
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硬度と言っても水の硬さを決めているわけではありません。
硬度とは、1リットルの水の中に含まれるミネラル類のうちカルシウムとマグネシウムの合計含有量です。
簡単に言うとカルシウムとマグネシウムの含有量が比較的多い水を硬水、少ない水を軟水と呼びます。
ではなぜ水にどのくらいのカルシウムとマグネシウムが含まれているかが大切なのでしょうか?
その答えは単純で、「水の硬度が違うと石鹸(せっけん)の泡立ちやすさが違ってくる」というものです。
日本では軟水がほとんどで硬水はあまりがなじみがないかもしれません。
一方、ヨーロッパでは硬水がほとんどなので、海外旅行をした時は軟水との違いが実感できるかもしれません。
軟水の特徴は、硬水とは逆でカルシウムやマグネシウムといったミネラルをほとんど含んでいないことです。
そのため軟水は肌に浸透しやすく、皮膚に潤(うるお)いをあたえ、優しくいたわってくれます。
また石鹸の泡立ちもいいので、頭や体を洗う時には軟水がお勧めです。
肌はつるつるとなり、髪もしっとりとした状態になります。
入浴に関しても軟水は肌に優しいので美肌効果が期待でき、「美人の湯」などと呼ばれています。
しかし先ほど水質の説明で登場したサウナしきじや神戸クアハウスの水は硬度が高めです。
硬水の特徴は、カルシウムやマグネシウムといったミネラルが豊富なことです。
これらは血液をさらさらにし、筋肉の収縮を助け、酸素を活性化させ…と体を機能させるのに重要な役割を果たしています。
結局、硬水と軟水どちらもそれぞれに利点があるので、水風呂に関してはどちらが良い悪いということはなさそうです。
水風呂とpH
温泉に行くと、よくアルカリ性、酸性といった表示を目にします。
このアルカリ性と酸性を規定しているのがpHです。
pHは溶液中の水素イオン濃度を表しています。
一般的には7を中性とし、7より大きいとアルカリ性、7より小さいと酸性になります。
地中から湧き出る温泉水にはアルカリ性や酸性がありますが、水道水は基本的には中性に定められています。
水道水のpHの水道水質基準値(5.8〜8.6)は、水道施設の腐食等を防止する観点から、中性付近の値にあることが望ましいとして決められています。
これは何か科学的な根拠があるわけではなく、自然水のpHがおおむね5〜9であることに由来しているそうです。
ですからほとんどの水風呂は中性ということになります。
中には黒湯温泉を水風呂に利用している施設もあります。
東京都大田区では天然黒湯の銭湯が点在していて、COCOFUROますの湯では黒湯の水風呂を壺湯で楽しめます。
黒湯はpH8~9で弱アルカリですが、このような水風呂はめずしいと言えるでしょう。
ちなみにアルカリ性の水は、肌触りはトロトロヌルヌル、そして皮脂の汚れや油分を落としてくれるのが特徴です。
サウナでは大量の汗をかきますが、基本的に汗のpHは7~8でほぼ中性です。
ですから汗とほぼ同じpHで中性の水風呂は肌への刺激が少なく、肌が弱い人や敏感肌の人でも安心して入れます。
水風呂とメントール
施設によっては水風呂にミントを投入して清涼感をあたえてくれます。
“アロマの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】サウナのロウリュにアロマは効果的なのか?サウナと香りの関係を脳科学で探る
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入浴剤として使われるミントは基本的には2種類でペパーミントかスペアミントです。
ミントの効果、効能はたくさんあります。
疲労回復、血行促進、不安やイライラを落ち着かせるリラックス効果、冷え性の予防と改善、保湿保温効果、抗菌作用、抗炎症作用などさまざまです。
ミントで清涼感を感じるのは、ミントに含まれているメントールの効果です。
メントールは、皮膚の表面にある冷たさ感じる細胞を活性化させます。
ですから実際には、メントールによって皮膚が冷えているわけではなく、脳がバグを起こして冷たいと感じているだけです。
しかしメントールは末梢の毛細血管を広げて血行を促進しますので、発汗効果や新陳代謝によるリフレッシュ効果があります。
夏のジメジメ、ベタベタしたときにピッタリの入浴剤です。
とは言え、悪い考え方をすれば、良質な水にわざわざ不純物であるミントを入れることになるので、おいしく飲める水ではなくなってしまいます。
水風呂と浄化
長崎県佐世保市にあるサウナサンは良質な水風呂で有名です。
水風呂は水温14.5~15.5℃…最高の水温設定です。。
水風呂の特徴はなんといってもその浄化方法にあり、「サウナサン式多孔質材料ブレンド水風呂」と呼ばれています。
サウナサンの水風呂の浄化装置は二段式で、上段に竹炭、下段にサンゴと珪藻土(けいそうど=藻類の一種である珪藻の殻の化石)が入っています。
これにより不純物が吸着され、水の透明度が増し、柔らかく肌触りの良い水質を実現しています。
お風呂の浄化作用目的では、よく備長炭が使われます。
備長炭の表面には無数の小さな穴があり、水道水の塩素(カルキ臭)を吸着してくれます。
また備長炭の浄水作用として、水の中の不純物も吸着します。
さらには備長炭は遠赤外線効果があり、血行が良くなり、体の芯からポカポカに温まります。
少量のお塩(岩塩など)を一緒に入れると、岩盤浴に近い保温効果も得られます。
また、備長炭は天然のミネラルを含んでいますので風呂にミネラルを放出してくれます。
このように備長炭はいいことばかりです。
自分がよく利用する「亀遊舘」では水風呂に備長炭が投入されています。
備長炭が投入される前と比べると、水は明らかに柔らかくなり、体が包み込まれるような不思議な感覚がします。
竹炭も備長炭のような水質浄化、消臭、脱臭、除菌効果を発揮します。
さらにもともと海中にあったサンゴや珪藻は低温の水風呂でも竹炭と同様の浄化作用を発揮します。
特に珪藻は多孔質材料の中では浄化作用が格段に高いとされています。
ちなみに「満天の湯」ではミント水風呂にサウナサンと同じ配合の水質浄化装置を使用しています。
ですからミントの清涼感と最高に浄化された水質のW効果で至高の水風呂を提供してくれていると言えます。
水風呂と青色
ミント水風呂が人気なのは、メントールによる清涼感だけではありません。
ミント水風呂はたいてい青色をしていて、その清涼感をよりいっそう引き立てています。
“青色の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】COCOFUROたかの湯のミュージックロウリュを勝手に脳科学で探る
COCOFUROたかの湯のミュージックロウリュはなぜ多くのサウナ―を惹きつけるのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神 ...
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自分のホームであるCOCOFUROたかの湯では、不定期で「ブルーday」が開催されています。
サウナ室の爆風装置であるパンカールーバーはいつもは赤く照らされていますが、この時だけは青色に照らされています。
また水風呂は鮮やかな青色のミント水風呂に変わります。
青色というと空や海や水といった広大な自然のイメージが浮かびます。
さわやかな空、生命の源の海、体に不可欠な水などの自然と接する機会が多い色です。
そのため青色は好感度が高く、世界的に見ても一番人気が高い色の系統です。
ですから心理学的には、青色は興奮を押さえ気持ちを落ち着かせる、ストレスを軽減し集中力を高める、などの効果があります。
「静」の文字に青があるように、青色によってリラックスした時には、脳はのびのびと良く働く状態になり、セロトニンを大量に分泌します。
セロトニンとは癒しや安らぎをもたらす”幸せホルモン”です。
ですから青色の水風呂は最高にリラックスした状態をもたらしてくれます。
日々のあわただしい生活で疲れ切っていると、セロトニンの分泌は低下し、精神的に落ち着かなくなり不眠症等で精神不安定となります。
水風呂とバイブラ
これはバイブラと呼ばれる装置によるものです。
普通の温かい風呂では、バイブラの効果は主に2つあります。
浮力により上昇する気泡が体にあたって刺激を与え、マッサージ効果をもたらし、血行の促進や筋肉疲労の回復に効果がある。
気泡がプチンと壊れる時に発振する超音波が体を刺激して血液循環を良くしてくれる。
サウナで体温が上がった状態で水風呂に入ると、最初は冷たく感じますが、じっとしているうちに身体を膜が覆うような感覚になり冷たさを感じなくなってきます。
羽衣は「マンガ サ道」で登場した表現ですが、そもそも羽衣とは天女が天に飛び立ち空中を飛翔するために着る衣のことです。
サウナで熱くなった身体で水風呂に入ると、熱交換が起こります。
熱交換とは、温度が高いものから低いものへ熱エネルギーが移動することです。
熱い身体から熱が水に伝わると、自分の身体のまわりの水の温度が少し上がり、冷たい水と自分の身体の間に温度の上がったぬるい水の層=「温度境界層」ができます。
羽衣はじっとしていると発生しますが、動いてしまうと、身体と熱交換をして温度が上がった水が身体の周りにとどまらず、冷たい水が常に体のまわりにいるので発生しません。
つまり常に水を動かして羽衣を作らせないようにしているわけです。
せっかくキンキンに冷えた水風呂でも羽衣ができてしまうと、その冷感が鈍くなってしまいます。
バイブラによって羽衣を作らず急速に身体を冷やして自律神経の切り替えを行う…まさにサウナトランスには絶好の効果と言えるでしょう。
サウナトランス(ととのう)の極意は水風呂にあり
サウナのあとに水風呂に入るのは、単にサウナで火照った身体を冷やすためだけではありません。
すべては最高のサウナトランス=ととのうの準備のためです。
サウナ室から出て、水風呂に入らず、外気浴で体を冷やしてもサウナトランスを体感できるかもしれません。
しかしそれは至高のサウナトランスとは言えません。
最高のコンディションの水風呂に浸かることによって、サウナ室で活発に働いた交感神経を一瞬にしてオフにして、副交感神経が働くリラクゼーションモードに一気に切り替えることが可能となります。
この切り替えが素早く行えないと、休憩タイムで脳の中が脳内麻薬で浸されたサウナトランスの境地にはたどり着けません。
サウナトランスのための水風呂の条件をいろいろと探ってみましたが、結局最後は自分自身が気持ちいいと感じるか感じないかです。
ちなみに自分が今までで最高に感じた水風呂はCOCOFUROたかの湯の水風呂です。
”ミュージックロウリュの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】サウナで脳に影響して響く音楽のジャンルとは何なのでしょう?Brain×Sauna×Musicを脳科学で探る
サウナで脳に影響をあたえ響く音楽とはどのようなジャンルなのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医として20年 ...
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また水風呂の目の前に休憩イスが並んでいるので、すぐに休憩タイムに移動することができます。
多くの知識は知っていて損はありません。
しかし知識にばかり振り回されるのではなく、実際にいろいろな水風呂を体感して自分に合う最高の水風呂を見つけ出すことが大切です。
“水風呂の脳科学”のまとめ
サウナトランス(ととのう)の極意である水風呂を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 「サウナトランス(ととのう)の極意は水風呂にあり」と言われる所以(ゆえん)は、水風呂は自律神経を一瞬にして切り替えサウナトランスのための下ごしらえをする重要な役割を担っているからです。
- 最高のサウナトランスを体感するために水風呂にはさまざま条件があります。
- しかし知識だけに振り回されるのではなく、自分自身で実際にさまざまな水風呂を体感して、自分に合った最高のコンディションの水風呂をぜひ見つけ出してください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
最後にポチっとよろしくお願いします。