脳の疲れはサウナで解消されるのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
脳疲労の意味を脳科学で説き明かします。
サウナの効果とはなに?
脳疲労の脳科学
- サウナの一番の効果は、なんといっても肉体疲労とともに脳疲労を解消することです。
- ぼーっとして過ごしたり、しっかりと睡眠をとったりしても脳疲労は解消されません。
- 脳疲労を解消する効果的な方法は、デジタルデトックスとサウナトランスによって得られるマインドフルネスです。
- ぜひサウナを習慣化して脳疲労を解消してみてください。
第3次サウナブームの日本では、どこのサウナも多くの人でにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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汗をかいてデトックスしたい。
汗をかいてダイエットしたい。
お肌をツルツルにして美肌にした。
身も心もリラックスして疲れを癒したい
“サウナに期待することの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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これらは多くの人がサウナの効果として期待していることです。
しかし実際にサウナの効果として医学的に証明されているものは、美肌効果と疲労回復効果のみです。
サウナにはデトックスやダイエットの効果はないとされています。
サウナで排出される汗はほとんどが水分なので、体内の老廃物が排出されるデトックス効果は期待できませんし、汗をかいてもサウナ後にはほとんどの人が水分を大量にとりますのでダイエット効果も期待できません。
一方で、美肌効果はとくにスチームサウナで証明されています。
“スチームサウナの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナで一番期待できる効果は、なんといっても疲労回復効果です。
しかも疲労回復できるのは、肉体疲労だけでなく脳疲労も解消できるとされています。
肉体疲労を回復させるためにはさまざまな方法があります。
体の筋肉の緊張をほぐして、食事をして栄養をつけて、睡眠をとって体を休める…これらをどのように実践すればよいかについてはさまざま紹介されていて、多くの人が実践しているでしょう。
しかし脳疲労に関しては意外と知られていません。
そのような質問にすんなり答えられる人はあまりいないでしょう。
しかし脳疲労を理解して、脳疲労の解消法をうまく実践できれば、サウナにおいても場合によってはデトックス効果やダイエット効果が期待できます。
ですから脳疲労を知っていて損なことはありません。
それでは脳疲労を脳科学で説き明かしていきましょう。
脳疲労とはなに?
脳疲労とは、言葉の通り脳が疲れている状態です。
肉体疲労では、体中の筋肉が疲れて筋肉痛を起こします。
脳の中には筋肉はありませんが、脳の回路が疲労してしまうと、最悪頭痛やめまいなどの症状を引き起こします。
脳の回路の中心となるのは、大脳新皮質、大脳辺縁系、間脳の3つの領域です。
大脳新皮質は、思考や言語を理解する知性の部分を担当します。
大脳辺縁系は、食欲や睡眠などの本能や喜びや怒りといった情動を担当します。
間脳は、自律神経を担当します。
これらの3つの領域は個々で勝手に働いているのではなく、お互いに情報を共有してバランスよく働いています。
しかし時にこれらの領域が疲労してしまうと、バランスがくずれて脳は正常に働かなくなります。
その結果、頭が痛くなったり、めまいがしたり、吐き気がしたり、動悸がしたり、意識を失ったり、手足に力が入りづらくなったり…とさまざまな不調がでてきます。
その主な原因は「情報過多」です。
“情報過多の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考情報過多に疲れてストレスを感じていませんか?「情報過多」の意味を脳科学で探る
情報は多い方が良いのでしょうか? それとも最低限の情報さえあればよいのでしょうか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医 ...
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現代社会はさまざまな情報があふれかえっています。
そして多くの人が、「情報は多ければ多いほど、おのずと良い決断を導き出せる」という勘違いをしています。
そのように思っている人は少なくないはずです。
しかし実際には洪水のように襲ってくる情報は、決断の質を上げるのには何の役にも立っていません。
逆に情報過多の状況は、脳を疲労させ決断を鈍らせます。
インターネットやSNSでは、もはや決して追いつけないと思うほどのお知らせメールや最新情報が続々と送信されてきます。
当然すべてに目を通して確認することは不可能です。
しかし大量の情報に囲まれている「情報過多」の状況の中で生きていると、最新の情報に触れ続けていないと何かを見落とすのではないか、世界からおいていかれるのではないか、成功のチャンスを逃すのではないかといった恐怖を感じるようになります。
FOMAでは、インターネットやSNSに限らず常に最新の情報を追い続けていないと、不安や心配におびえ続け、それがいつの日かストレスとなり、作業効率を低下させ、最終的には身も心も疲弊していきます。
脳疲労の解消法
脳疲労がたまった状態を放置するとどのような弊害がでてくるのでしょう?
集中力が低下する
記憶力が低下する
夜ぐっすり眠れない(睡眠不足)
食欲が低下する
お腹の調子が悪い(便秘や下痢症状)
などなどさまざまな症状が出現してきます。
これらの症状の原因のほとんどは自律神経失調に伴う症状です。
自律神経は規則正しく整った日常生活を送れるように、体をうまく調整する働きをしています。
自律神経失調におちいると、今まで普通にできていたことがうまくできなくなる、面倒くさくなる…などの症状が出現し、さまざまなことに支障を来してきます。
脳疲労は、ぼーっとして過ごしたり、睡眠をたくさんとったりしても決して解消されるとは限りません。
正しい知識を持っていなければ脳疲労を解消することはできませんし、誤った知識で行動していると逆に脳をますます疲労させてしまうこともあります。
デジタルデトックス
さきほど脳疲労の一番の原因は情報過多であることはご説明しました。
情報過多=情報の洪水状態は、FOMAを引き起こし身も心も疲弊していきます。
そこでFOMAに対してもっとも有効な手段とされているのが「デジタルデトックス」です。
「デトックス」とは「detoxification(解毒)」という英単語の短縮形で、「体に溜まった毒素を体外へ排出する」という意味の言葉です。
わたしたちは日頃から食事や呼吸などによって、無意識に体内に毒素を溜め込んでいます。
この溜め込んでしまった毒素を排出して、健康体を取り戻そうとすることを「デトックス」と呼びます。
情報に関してもこれと同じです。
情報過多で脳の中が整理できていない状態が続くと、脳は容量オーバーとなり働きが極端に低下してしまいます。
デジタル情報に頼って生きている人にとって、スマホやパソコンから完全に切り離された生活を送ることは、はじめはとても不安でしょう。
そのことが逆にストレスを生み出す原因になるかもしれません。
しかしデジタルデトックスに慣れてくると、いつも見過ごしていたことがよく見えるようになってきます。
情報よりも、あるがままのモノ、コトをしっかりと感じ取れるようになり、今まで感じたことのない幸福感や安心感を得られるはずです。
完全にデジタルツールから遮断できなくとも、自分なりに最低限の情報だけで生活するように心がけてみるだけでも、脳疲労はかなり解消されます。
知らなくてもいいことに価値はないのです。
たとえそれを知ったところで自分にとって無価値なものは無価値なままです。
”ニュースダイエットの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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銭湯に行ってサウナ、水風呂、休息を繰り返しす温冷交代浴の時間は、スマホやパソコンをながめることはできませんので、外界からの情報は完全にシャットダウンされます。
サウナトランス
脳疲労の解消法の1つは情報を遮断するデジタルデトックスですが、ただ情報を遮断しただけでは脳疲労は完全には解消されません。
なぜなら情報を遮断してぼーっとしている時でも、脳は活発に働き続けているからです。
何も考えずぼーっと過ごしているつもりでも時には80%近くのエネルギーを消費していることもあります。
そのような経験をしたことがある人はたくさんいるはずです。
逆に、「色々考えすぎて脳が疲れた」なんて言う人がいますが、脳を意図的に使っている時でも実際に脳のエネルギー消費量は5%程度しか上昇していません。
つまりデジタルデトックスを行っても脳の消費量は5%程度しか減らないということです。
ぼーっとしている時に脳が消費する80%近くのエネルギーを、少しでも減らすことが脳疲労を解消するためにはより重要になってきます。
ではいったい脳はぼーっとして休んでいるはずの時でも、どうしてこんなにもたくさんのエネルギーを消費してしまうのでしょう?
その原因は「レミニセンス効果」にあります。
“レミニセンス効果の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考誰でも簡単に記憶力を上げる方法を発見!レミニセンス効果を脳科学で説く
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「レミニセンス効果」とは、ぼーっとしている時に脳が記憶された情報を整理して記憶力をアップさせる効果です。
つまりぼーっとしているだけで記憶力はアップするのです。
そんな夢のような話を実現させてくれるのがレミニセンス効果です。
勉強や仕事をしていてなかなか覚えられなかったり、アイデアに詰まったりした時に、一度作業を終了して一晩おくと、「次の日にはばっちり記憶できていた」、「いいアイデアがひらめいた」…なんて経験したことありませんか?
これはまさにレミニセンス効果が働いているからです。
レミニセンス効果では、脳が忘れかけた情報を呼び起こして記憶を補強する作業を行います。
しかもその際に脳は必要な情報と必要でない情報の仕分け作業をしています。
つまり必要な情報は記憶としてしっかりと脳に刻み込み、脳が不必要と判断した情報はどんどん消去されていきます。
“記憶の仕組みの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考記憶力を上げる方法は存在するのか?記憶の仕組みを脳科学で探る
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実際に脳に刻み込める情報量はとても少ないので、どんどん消去していかないと新しい情報が入るスペースがなくなってしまいます。
なんて言いますが、まさにそんな具合に脳ではさまざまな情報をどんどん切り捨てて消去しています。
つまり脳は情報を記憶することよりも、情報を消去して忘れることに多くのエネルギーを消費しているのです。
では脳は必要な情報とそうでない情報をどのように仕分けしているのでしょう?
つまりレミニセンス効果で記憶として脳に刻み込まれるのはどのような情報なのでしょう?
このような情報に対して脳は、
「こんなに何度も脳に同じ情報を送ってくるなんて本当にしつこいなあ…」
「そんなにしつこく送ってくるんだからきっと重要で必要な情報なんだろうなあ…」
このように脳が認識すると、その情報はレミニセンス効果によって脳にしっかりと刻み込まれます。
ちょっと話が長くなりましたが、脳はぼーっとしている時でも情報の整理とレミニセンス効果を働かせて記憶を定着させる作業を行っているため、多くのエネルギーを消費しているわけです。
ですから、この作業を強制終了させることができれば、ぼーっとしている時の消費エネルギーを少しでも減らし脳疲労を解消できるはずです。
サウナの醍醐味(だいごみ)はなんと言っても温冷交代浴によって身体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になることにあります。
サウナトランスの状態では、強制的に脳の活動がオフの状態となるため脳疲労が解消されていきます。
サウナトランスを生み出すのは脳内麻薬と自律神経です。
温冷交代浴で脳内麻薬が大量に分泌されると、日常では味わえない快楽、幸福感、リラックス効果を生み出します。
また自律神経が活発に働くと、腸管の動きが活発になり、食欲増進、快便、快眠などにつながり、デトックス効果やダイエット効果も期待できます。
このようなトランス状態は日常ではそう簡単に体験できるものではなく、かなり特別な感覚です。
「ランナーズ・ハイ」という言葉がありますが、この状態もサウナトランスにかなり似た状況です。
ランナーズ・ハイとは、「走る辛さがピークを超えるとなぜか爽快になり、いつまでも走り続けそうな気がしてくる」…というものです。
これはまさに脳内麻薬の効果です。
しかしランナーズ・ハイの状態になるまで走り続けるのはなかなか難しいものです。
サウナでマインドフルネス
せわしない日常の中で脳疲労を解消することはなかなか困難なことです。
そもそも脳疲労を自覚せず動き続けている人はたくさんいるはずです。
自分ではぼーっとしているつもりでも、何かを考えてしまうものです。
そして脳が疲労した状態で動き続けいていると、どんどんパフォーマンスが低下し、いつもはしないようなミスをおかしてしまったり、ちょっとしたことが大きなトラブルに発展したり…なんてことも起きかねません。
ですから脳の活動を一度完全に強制終了させることはとても大切なことです。
脳疲労を引き起こす一番の原因は、たくさんの情報に惑わされ、過去や未来のことをあれこれと考えすぎて心ここにあらずで心がさまよってしまう”雑念”です。
過去の失敗や未来への不安といったネガティブな思考によって脳はどんどん疲弊していきます。
このような思考をいったん断ち切り、脳の思考を”今”だけに向けた状態を「マインドフルネス」と呼びます。
マインドフルネスは一見すると難しそうに思えてしまいますが、実は単純で簡単に行うことができます。
たとえば、なにか近くのものに集中してじっと見つめる、耳を澄ます…これだけでも脳活動は一時的にシャットダウンされます。
しかし瞑想は慣れていないとすぐに雑念によって打ち破られ、脳活動は再開してしまいます。
ですから短時間でもマインドフルネスを繰り返し行い習慣化することが重要となります。
サウナでの温冷交代浴は短時間で簡単にマインドフルネスを行うことが可能です。
しかも習慣化することもそんなに難しいことではないでしょう。
なぜなら誰でも基本的には毎日入浴して体を清めるわけです。
そこにサウナでの温冷交代浴を追加してあげればよいのです。
しかしここまで色々と脳疲労やマインドフルネスについて考えてサウナに入る人はほとんどいないでしょう。
とは言え、このような知識を脳の片隅にでも持っているかいないかで、その効果は格段に変わります。
繰り返しサウナに入っていると、きっと脳疲労が解消されていく効果を実感できるはずです。
“脳疲労の脳科学”のまとめ
脳疲労の意味を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- サウナの一番の効果は、なんといっても肉体疲労とともに脳疲労を解消することです。
- ぼーっとして過ごしたり、しっかりと睡眠をとったりしても脳疲労は解消されません。
- 脳疲労を解消する効果的な方法は、デジタルデトックスとサウナトランスによって得られるマインドフルネスです。
- ぜひサウナを習慣化して脳疲労を解消してみてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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