ガリガリ君って続々と変わった種類の味が登場しますが脳は味や香りをどのように脳は感じ取っているんですか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 味と香りによる風味を脳がどのように感じているのかがわかります。
40年間愛され続けている『ガリガリ君』
ガリガリ君から味と香りの効果が生み出す風味を脳科学で探る
- 脳は味だけ、香りだけをばらばらに感じ取っているのではありません。
- 味と香りが巧みに絡み合って作り出すハーモニーを風味として脳は感じています。
- ガリガリ君は40年愛され続ける魅力的な風味のアイスバーです。
1981年に発売開始ですから来年ガリガリ君は40歳ということになりますね。
ガリガリ君は現在70円ですが、この40年の間で値段が上がったのは2回のみで発売から20円しか値上げされていません。
発売当初はソーダ味、コーラ味、グレープフルーツ味、イチゴ味の4種類だけでした。
そして現在まで発売された味は100種類以上…
コーンポタージュ味、クレアおばさんのシチュー味、ナポリタン味などちょっと変わった味も登場して話題を集めました。
最近ではガリガリ君リッチから”いちご”味が発売されています。
さて今回はガリガリ君の紹介ではなく、『ガリガリ君から味と香りの効果が生み出す風味』がテーマです。
それにはきっと奥深い要素がたくさん関係しているのでしょうが、今回は”味と香り”に注目してみました。
風味の秘密-その1
ガリガリ君の豊富な味を支えているのは香り=匂いです。味と香りが素晴らしい風味のハーモニーを生み出しているのです。
それでは風味とはいったいなんなのでしょう。
味と香りが生み出す風味を理解しよう
風味の秘密-その2
風味とは“食べ物や飲み物がもっているおもむきのある味わいや香り”です。つまり風味は味と香り=匂いから生み出されているのです。
たとえば“ソーダ味”と言うとソーダの味を思い浮かべますよね。
しかし決して味だけではなく香りもソーダ味を支える大切な働きをしています。
この味や香りはさまざまな化学物質が反応しあって生み出されています。
そして世界で一番高性能の化学物質検出装置は人間を含めた動物と言われています。
人は味と香りをどのように感じてそして脳はどのようにして風味を感じているのでしょう。
脳は香りを感じ続けている
人は何千種類もの香り=匂いを嗅ぎ分けています。
風味の秘密-その3
もっとも原始的な感覚は嗅覚…つまり香り=匂いの感覚です。
人間を含めた動物は進化の過程で匂いをかぎ分けて食べ物をとって生きていくために発達してきました。
匂いはまず鼻から体内に入ってきます。
鼻の奥には嗅上皮という粘膜でおおわれています。
嗅上皮には匂いの素となる化学物質と結合する匂い受容体(匂いをキャッチする受け皿みたいなもの)という分子がずらりと並んでいます。
1つの匂いで1つの受容体だけが反応して働くこともありますが、たいていは1つの匂いに対して数十種類の受容体が反応して一斉に活動を始めます。
匂いには当然たくさんの種類があるので受容体の数もたくさんあります。
人は400種類くらいの受容体がありますが、嗅覚がすぐれている動物では1000種類くらいの受容体を持っています。
受容体は匂いを受け取ると盛んに働き始めて、匂い情報を電気信号に変換して神経を通って脳へ伝えられます。
受符体にはそれぞれ1種類の神経の線維がつながっていてさらにその神経の線維をたばねる線維も存在します。
そのため匂い情報は最終的には何千もの神経の専用回路を伝って脳へ到達します。
脳はそれぞれの回路のパターンを調べることで受け取った匂い情報が何の匂いなのかを識別しています。
外から体の中に入ってくる情報…見たもの、聞いたもの、食べたもの、皮膚で感じたものなどはほぼ同じ神経の経路を通って最終的には脳の中の視床という場所にたどり着きます。
これらの情報は視床から大脳皮質の中でそれぞれの感覚を認識する部分に伝わっていき最終的に脳は感覚を感じます。
しかし匂いの情報だけは視床を通らずに大脳皮質に直接到達します。
しかもその他の様々な感覚の部位へも広がって伝えられ影響を与えています。
その1つに大脳辺縁系回路があります。
大脳辺縁系回路は人の情動反応を取りまとめている脳の特殊回路です。
情動反応とは美味しい、楽しいなどの一時的に一気に湧き上がる本能的な感情です。
風味の秘密-その4
大脳辺縁系には学習能力があるので匂いの情報がインプットされると情動反応と匂いを結びつけることができます。
これはコーヒーの香りによって大脳辺縁系が刺激されて情動反応を起こしているのです。
人は寝ている時は視床も活動が低下しているためさまざまな感覚を感じにくくなっています。
しかし匂い情報だけは視床を通過しないので寝ている間も脳は匂いを感じています。
この効果を利用して寝ている間に香を嗅ぐことで記憶力を高めるなんてこともされています。
このように香り=匂いは脳にとってとても重要な情報となっているのです。
風味はうま味と香りのコラボレーション
匂いと違うのは味の受容体が舌にあることだけです。
味は匂いよりずっと単純で、基本的なものは5つしかありません。
この5つの味にはそれそれに対応する1種類、あるいは複数の受容体が存在して味の情報を伝えています。
たとえば苦味を感じる受容体は何十種類もあります。
これは動物の進化の過程で周囲にある有毒物質を苦みで探し出して危険を回避する必要があったためです。
また生きていく過程で危険と感じるものは変化するため苦みに対する嫌悪は変化していきます。
ここで5つの味のなかで他の味と大きく違う特殊な味がありますがどれだかわかりますか?
風味の秘密-その5
うま味は他の味を混ぜ合わせてもつくることのできない独立した特殊な味のことです。このうま味が味と香りの融合である風味のもとになっています。
味覚と嗅覚は最終的に大脳皮質に到達して感じられます。
風味の秘密-その6
味は大脳皮質の島皮質が終点となっていますが、匂いの信号も島皮質に伝えられます。
しかも味と匂いの情報は島皮質に伝わる前にすでにある神経の中で結びついていたりもします。
それだけ味と匂いは密接な関係なのです。
味の中でも特殊な味であるうま味が香りとコラボレーションして生み出されたものが風味なのです。
味だけではけっして風味を作り出すことはできないのです。
そこには香りが重要な作用をしているのです。
ガリガリ君ではソーダ味、コーラ味などさまざまな種類を“〇〇味”と味で表現しています。
“〇〇の香り”と匂いでは表現しませんよね。
こうなると美味しいどころか逆に嫌な風味を感じてしまうかもしれません。
風味の秘密-その7
味はそれに合った香りと合わさって風味を作り出すことでその良さが活きてくるのです。
たとえば例えば日本の伝統食のひとつである“蕎麦(そば)”。
実は蕎麦には香り成分だけで、甘味やうま味、酸味など味覚で感知できる成分は含まれていません。
しかし皆さん蕎麦を食べて”美味しい”って言いますよね。
これは蕎麦の香りが風味を引き立てて脳に美味しいと感じさせているのです。
ガリガリ君は風味の王様です
良く”味音痴”なんて言う人が、いますがこれは決して正しい言葉ではないでしょう。
風味の秘密-その8
風味は味と匂いの作り出す絶妙なハーモニーでありその感じ方は人それぞれです。
そもそも匂いや味の情報を受け取る受容体は人によってまったく違います。
そのため同じ匂いや味でも人によって感じ方は全く異なります。
ですから味と匂いが合わさった風味はますます人それぞれ感じ方は違います。
ガリガリ君は今まで100種類以上の風味を生み出してきました。
最近では“大人なガリガリ君”と銘打って果汁を増やしたシリーズも出ています。
これだけのさまざまな風味を表現できるのは驚くべきことです。
これからもかき氷のシャキシャキ感をアイスバーで味わえるガリガリ君が作り出すさまざまな風味にわれわれの脳はいい意味でだまし続けられて魅了されていくのでしょう。
”ガリガリ君から味と香りの効果が生み出す風味の脳科学”のまとめ
今回味と香りの効果が生み出す風味をガリガリ君から学び脳科学的に解説しました。
今回のまとめ
- 脳は味だけ、香りだけをばらばらに感じ取っているのではありません。
- 味と香りが巧みに絡み合って作り出すハーモニーを風味として脳は感じています。
- ガリガリ君は40年愛され続ける魅力的な風味のアイスバーです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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