リーダーに求められる資質と素質って何なのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年…多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきますね。
この記事を読んでわかることはコレ!
- リーダーシップ論を脳科学で説き明かします。
リーダーシップの一般論
リーダーシップの脳科学
- リーダーには「目的」「目標」「フィードバック」「支援」「奨励」の5つの要素が求められます。
- リーダーになれば、あなたの持つ資質や素質が開花し、きっと立派なリーダーシップを発揮できます。
- リーダーシップ論の真髄はメンバーを信じる愛にあります。
あなたが求めているリーダーシップとはどんなものですか?
あなたにとって最も尊敬すべきリーダーは誰ですか?
リーダーに求められるリーダーシップについてはさまざまな議論がなされています。
ちょっと調べれば多くの意見が出てきます。
なんて思っていませんか?
しかし、仕事でもプライベートでも何かしらの「チーム」に入っていれば、いつリーダーに指名されるかわかりません。
いくら優れた能力を持っていても、必ずしもリーダーになれるとは限りません。
リーダーに求められることは、チームのメンバーの「個」を尊重しつつも、チームとしての統率をとりながら先導してしくことです。
リーダーに求められるものはたくさんありますが、よく言われるのが「目的」「目標」「フィードバック」「支援」「奨励」の5つの要素です。
「目的」を持て!
まずは「目的」です。
チームが存在するにはそこに何か達成すべき「目的」があるはずです。
目的はチームそのものの存在理由にもつながりますが、まずはそこをしっかりとメンバーに認識してもらうことが大切です。
どんなチームにおいても社会から高く評価されることを誰もが望んでいます。
ですから、今自分たちが成し遂げようとしていることが最終的には社会貢献につながり、そして自分たちの評価を高めることになることを認識すべきです。
メンバーの個々が目的をしっかり理解できるようになれば、リーダーの言葉や行動はメンバーの心にきっと届きます。
そのためにもリーダーには責任ある言葉や行動が求められます。
リーダーは誰よりもしっかりと時間と手間をかけて仕込みをして準備を整える必要があるのです。
「目標」を持て!
2つ目は「目標」です。
つらいことや楽しくないことや関心がないことは誰もやりたくないですし、反発や意欲の低下を生み出します。
このような状況ではチームはバラバラになってしまいますし、逃げ出す人も出てくるかもしれません。
そんな時に重要となってくるのが「目標」です。
リーダーは目標を達成することで得られる快感を理解してもらうのです。
脳は快感が大好きです。
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今はつらくても、道の先に快感が待っている思えれば頑張れるものです。
チームとしての目標のみならず、個人の目標もしっかり明示してあげることが大切です。
とは言え、たとえばトラブルが発生したり、思わぬ邪魔が入ったりして目標はそうたやすくは達成されません。
するとまたしても脳は言い訳や逃げ道を探し出します。
リーダーは逃げ出そうとするメンバーの脳を軌道修正するためのスパイスを与えてあげるのです。
無理やりの方向転換は危険です。
目標が達成できないからといって、頭ごなしに叱ったり無理な目標を押し付けたりするのではなく、メンバーが自主的に目標に達成できるように誘導してあげることが大切です。
他人に言われるよりも「自分で考えた」と思うとやる気が出るものです。
”やる気の脳科学”についてはこちらの記事をご参照ください。
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リーダーは自分がチームの目標を設定するのではなく、メンバーが自ら自分の目標を設定するように仕向けてやることこそが重要なのです。
「フィードバック」せよ!
3つ目は「フィードバック」です。
目的を理解し目標に向かって突き進んでいる時に大切なのが「フィードバック」です。
自分の歩んで来た道、これから歩むべき道が間違えていないかを確認する作業がフィードバックです。
さらには、フィードバックして得られた情報を今後の活動に役立てようとする「予測に基づく行動=フィードフォワード」にもつながります。
フィードフォワードによって当初考えていたものとは違う新たなアルゴリズムが生まれることもあるでしょう。
過去のアルゴリズムにとらわれることなく、フィードバックから得られた予測力を活用して目標までの地図を書き換えていくこともリーダーに求められる役割です。
フィードバックをおろそかにすると、時には時代遅れの誤った道を進むことになり、メンバーを路頭に迷わせてしまいます。
「もうちょっとこうしたらいいんじゃないの?」くらいの言葉でも大いに効果は発揮されます。
言い換えればリーダーの言葉はそれくらい大きな意味を持っているのです。
「支援」せよ!
4つ目は「支援」です。
リーダーからのアドバイスは実際の業務だけでなく精神的な「支援」になります。
リラックスして持ち前の能力を発揮するには、それなりの環境整備が必要になります。
ストレス、健康状態なども当然影響を及ぼします。
適度で心地よい緊張感と集中力を保てる状況を作るための支援はリーダーにとって大切な役割です。
ただのお手伝いや指導による支援だけでなく、支援の字のごとく「支える」「援ける」という意識を持った支援こそがリーダーに求められます。
「奨励」せよ!
最後は「奨励」です。
脳は自分の行動や発言に対してご褒美がもらえると脳内ホルモンが分泌されて快楽を得ます。
快楽は次へのモチベーションにもなります。
「奨励」は「強化」とも呼ばれます。
つまり「うまくいった」やり方を実行する回路を太く強化するのです。
強化学習は新たな学習のアルゴリズムとして注目されています。
強化はAIにも取り入れられています。
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個々の才能や正確には決して言及せず、「やり方=方法論」にフォーカスを当てて才能を伸ばす手助けをしてあげるのです。
個人の変えがたい動かしがたいものに焦点をあてても何も得することはありません。
リーダーシップの脳科学
リーダーに求められる5つの要素である「目的」「目標」「フィードバック」「支援」「奨励」について説明してきましたが、チーム全体のみならずチームを構成する個人への愛を持つことこそがリーダーに求められる資質であり素質なのです。
動物からリーダーシップ論を学ぶ
ここまでは一般的なリーダーシップ論について説明してきました。
多くの動物は群れをなして行動し生活しています。
動物の集団行動は眺めているだけでも壮観であり美しいですが、そこには合理性や効率性も備わっていて、私たち人間の生活や仕事にたくさんのヒントを与えてくれます。
動物を長時間モニターすると思いがけないことが見えてきます。
たとえばある種の渡り鳥はヨーロッパからアフリカ大陸の最南端まで気の遠くなるような距離を毎年往来しています。
飛行経路だけでなく、どこで食事をとり、どこで繁殖し、どこで群れが合流・分裂をするのかも決まっています。
火山の山腹に生息するヤギの群れは噴火の数時間前に危険域からうまく逃げ出します。
なぜ災害を予知できるのかは解明されていませんが、わずかなガスの臭いを感じ取るのかもしれません。
そのような動物の不思議な行動は多くのことを教えてくれます。
当然リーダーシップ論も学ぶことができます。
ハトの行動解析を行った研究をご紹介しましょう。
Pettit B, et al, Curr Biol 25(23):3132-7. doi: 10.1016/j.cub.2015.10.044, 2015
ハトのリーダーは仲間を効率良く率いることが知られています。
ただしどのようにして優秀なリーダーが選ばれるのかは謎でした。
研究では群れのすべてのハトにGPSを装着しリーダーが選ばれる過程を観察しました。
すると意外なことに、群れができた当初は引率能力の高い個体がリーダーとして選ばれる傾向は見られませんでした。
むしろ飛翔能力の高いハトがリーダーとなる傾向がありました。
つまりリーダーは「選ばれた」のではなく、単に速く飛ぶので先頭に立ったがために、気づいたらリーダーになってしまっただけなのです。
ところが、先頭に立つ機会の多いリーダーとなったハトは、次第に効果的な経路を選ぶ能力が高まってきます。
『必要は発明の母』
なんて言葉がありますが、まさにその通りです。
群れを先導する回数が多ければ多いほど、リーダーシップを発揮しなければならない機会も必然的に多くなります。
1週間も先導を任されるだけで、精度の高い経路を習得する力は身に付きます。
一方でリーダーについていくだけの仲間たちにはこれといった能力の向上は見られません。
『地位がヒトを作る』
とはよく言ったものです。
置かれた立場がその人の能力をそれ相応に高めてくれるという社会原理は、なにもハトだけではなく人間にも当てはまります。
リーダーシップの脳科学-その1
自分にリーダーとしての資質や素質があるかないかを悩むよりも、リーダーに選ばれたのであれば精一杯リーダーシップ論を学び、自分の資質や素質を高めていけばよいのです。
そうすれば自ずとリーダーとしての道は開けてくるはずです。
さらに動物からリーダーシップ論を学ぶ
動物からはまだまだたくさんのリーダーシップ論を学ぶことができます。
群れをなす動物は集団の進むべきルートをどう見定めているのでしょう。
動物の集団行動からリーダーシップ論を調べた研究をご紹介しましょう。
Couzin ID, et al, Nature 433(7025):513-516. doi: 10.1038/nature03236, 2005
群れをなす動物には正しい知識を持ったリーダーが少数いることが知られており、こうした優等個体が集団をけん引しています。
先ほどの項目でもご紹介しました、が自然と群れの先頭に立ち、気付いたらリーダーになっていた個体です。
現在では高速なコンピュータに個々の動物の行動癖のプログラムを組み込むことで、集団行動のパターンを再現することが可能です。
計算結果によれば、集団に占める「正しい知識を持った個体」の割合が増えるほど、群れは正しい進路をとることができます。
しかし意外なことに、知識個体率が同じ場合…たとえば10%のメンバーが正解を知っている時などでは、集団の規模が大きいほど群れは正解にたどり着きます。
さらにおもしろいことに、知識層のメンバーが正解性にあまり固執しすぎると集団は分裂崩壊してしまうのです。
リーダーは確固たる意図をあえて明示せずに、一見曖昧な行動をした方が結果として集団を正しい方向に導くことができるのです。
ここにはやはり、メンバーを信じるリーダーの愛があるのではないでしょうか。
リーダーシップの脳科学-その2
チームのメンバーの脳を活性化し、効率の良い行動や発言を導き出すためには、メンバーの成長を信じる誠実なリーダーの愛こそがリーダーシップ論の真髄なのでしょう。
“リーダーシップの脳科学“のまとめ
リーダーシップ論を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- リーダーには「目的」「目標」「フィードバック」「支援」「奨励」の5つの要素が求められます。
- リーダーになれば、あなたの持つ資質や素質が開花し、きっと立派なリーダーシップを発揮できます。
- リーダーシップ論の真髄はメンバーを信じる愛にあります。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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