「思惑違い」を自分への嘘で「つじつま合わせ」して解消しようとするのはなぜなのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 「思惑違い」を「つじつま合わせ」して解消しようとする心理をわかりやすく脳科学で説き明かします。
イソップ物語に学ぶ「思惑違い」と「つじつま合わせ」
「思惑違い」と「つじつま合わせ」の脳科学
- 脳は無意識に自分に嘘をついて「思惑違い」を「つじつま合わせ」して解消しようとします。
- 「つじつま合わせ」をするのは、自分の間違いを認めず自己満足したいからにすぎません。
- たとえ思惑と違っていても「つじつま合わせ」をすることなく、冷静に自己分析してメタ認知していきましょう。
ある日、キツネはブドウの木の枝に熟したブドウがぶらさがっているのを見つけました。
ブドウは今にも割れて果汁が垂れてきそうです。
キツネはそのブドウがたまらなく食べたくなりました。
しかしブドウの房は高い枝にぶらさがっています。
キツネは木に前足をかけて立ち上がって首をのばしましたが、ブドウには届きません。
今度は思いっきり飛び跳ねてみましたが、やはり届きません。
助走をつけて跳び跳ねてみましたが、また届きません。
何度も何度も挑戦しましたが、結局ブドウには届きませんでした。
ついにキツネは座り込み、うんざりした顔をしてブドウを眺めます。
「ブドウを取ろうとして、こんなにくたびれるなんて自分はなんて馬鹿なんだ…」
「どうせブドウは熟れていないはずさ」
「酸っぱいブドウなんて最初から食べたくなったのさ」
キツネは何ごともなかったかのようなすました顔をして森へ帰っていきました。
この物語が教えてくれることは、わたしたちがよくおちいる「思惑違い」を「つじつま合わせ」して解消しようとする心理です。
キツネは次の3つの方法のいずれかを用いれば、ブドウを食べられなかったという「思惑違い」の腹立たしい状況を解消できます。
もっと工夫や努力をしてなんとかブドウを手に入れる。
自分の能力が足りないことを認める。
あとから自分の考えを変える。
「キツネとブドウ」の話では、3つ目の「つじつま合わせ」をして、「思惑違い」を解消しようとしています。
実はこれはわたしたちもよくおちいる思考の落とし穴です。
無意識に自分に嘘をついていませんか?
思惑違い
辻褄を合わせる
「思惑違い」が起こると、つい自分に嘘をついて「つじつま合わせ」をして、「思惑違い」の腹立たしさを解消しようとすることは頻繁に起きています。
“嘘の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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しかも販売店も当然購入価格では引き取ってくれないはずです。
あなたはきっと無意識に自分に嘘をついて、このもやもやとした「思惑違い」を解消しようとするはずです。
つまり、「特別に安全な車を買ったのだ」…そのように嘘をついて自分自身を説得して「つじつま合わせ」をするわけです。
最終的には「自分の判断はそれほど愚かな選択ではなかった」と考え直し、満足するのです。
「思惑違い」を「つじつま合わせ」するのはなぜなのか?
脳が無意識のうちに「思惑違い」を「つじつま合わせ」して解消しようとする傾向を持っていることは研究で証明されている事実です。
はじめに、学生たちに1時間、非常に退屈な作業をしてもらいます。
その後、学生たちを2つのグループに分けます。
グループAの学生には、100円を支払い、外で待っている他の学生たちに、実際には煩(わずら)わしい作業であったにも関わらず、楽しい作業だったと伝えるように指示します。
つまりお金を支払って、嘘をついてもらいます。
グループBの学生にも同じことをしてもらいますが、グループAと異なるのは支払われる金額が1万円という点です。
最後に2つのグループの学生に、退屈な作業を本当はどう思ったかを報告してもらいます。
小さな嘘をつくために1万円の報酬を得たグループBの学生よりも、100円しかもらえなかったグループAの学生の方が、退屈な作業をとても楽しく、興味深かったと答えたのです。
少ししか報酬をもらっていないのにわざわざ嘘をつく必要はありません。
つまりグループAの学生は、安い報酬で退屈な作業をしたことを認めたくなくて、作業はそれほど煩わしくなかった、楽しかったと、無意識のうちに「つじつま合わせ」をしたわけです。
一方で、1万円を受け取った学生は「つじつま合わせ」をする必要はありません。
嘘をつく代償として1万円受け取っているので、バランスの取れた取引がされています。
つまり脳の中で「思惑違い」がそもそも発生していないのです。
「つじつま合わせ」をしないで美味しいブドウを手に入れよう
ある会社の求人に応募しましたが、あなたは採用されませんでした。
するとあなたの脳は、「自分には十分な専門知識がなかった」と認める代わりに、「本当はこの職にはじめから興味がなかった」と自分に言い聞かせようとします。
そんな無意識の嘘で「つじつま合わせ」をするわけです。
「つじつま合わせ」をし続けていれば、いつになってもどこにも就職することはできません。
たとえばあなたは2つの株のうちどちらを買うか迷っていたとしましょう。
さんざん考えた挙句、あなたが買った株がほどなくして大きく下落したのに対して、もう1つの株は勢いよく上昇したとしましょう。
あなたの判断は間違えていたことになります。
しかしあなたは自分の犯した間違いを認めたくありません。
自分の買った株は、現在はいくらか弱くなっているかもしれませんが、他の株よりももっと大きな“可能性”を秘めているはずです。
友人を説得するように自分を説得するでしょう。
しかしこれは、「思惑違い」を「つじつま合わせ」して解消しようとする愚かな自己欺瞞(じこぎまん)以外の何者でもありません。
そもそもその株が本当に将来的に“可能性”を秘めているのであれば、購入のタイミングを待ち、それまではすぐに儲(もう)かる別の株に投資して様子をみるのが筋でしょう。
物語に登場するキツネのように「思惑違い」を「つじつま合わせ」して解消しても、ブドウは食べられません。
最初にお話ししたように、ブドウを手に入れるには、
もっと工夫や努力をしてなんとかブドウを手に入れる。
自分の能力が足りないことを認める。
この2つの方法のどちらかを実践するしかありません。
冷静に自己分析してぜひメタ認知の能力を高めることがお勧めです。
“メタ認知の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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“「思惑違い」と「つじつま合わせ」の脳科学”のまとめ
「思惑違い」を「つじつま合わせ」して解消しようとする心理をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 脳は無意識に自分に嘘をついて「思惑違い」を「つじつま合わせ」して解消しようとします。
- 「つじつま合わせ」をするのは、自分の間違いを認めず自己満足したいからにすぎません。
- たとえ思惑と違っていても「つじつま合わせ」をすることなく、冷静に自己分析してメタ認知していきましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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