大人が2回、3回とガチャガチャを回してはまってしまうのはなぜなのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
大人がガチャガチャにはまる脳科学的な3つの理由を説き明かします。
みんな大好きガチャガチャ
ガチャガチャの脳科学
- サウナで蒸されてトランス状態となっていると、ついガチャガチャを回し続けてしまいます。
- 大人がガチャガチャにはまる脳科学的な理由は、「期待効用」、「確証バイアス」、「新規探索性」の3つのワナです。
- サウナの後にガチャガチャを回し続けている時は、脳がバグっている時なのでご注意ください。
現代の日本では第3次サウナブームによって多くの施設がにぎわっています。
“サウナブームの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナの醍醐味(だいごみ)は何と言っても、サウナトランス=「サウナでととのう」でしょう。
温かいサウナと冷たい水風呂、休息タイムを繰り返す温冷交代浴では徐々に体の感覚が鋭敏になってトランスしたような状態になっていきます。
トランス状態になると、頭からつま先までがジーンとしびれてきてディープリラックスの状態になり、得も言われぬ多幸感が訪れます。
これがいわゆるサウナトランスであり、そして「サウナでととのう」の状態です。
”サウナでととのうの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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サウナ―達は至高のサウナトランスを味わうためにサウナに通うわけです。
東名厚木健康センターや草加健康センターのラッコガチャは有名です。
自分がよく通うミュージックロウリュで有名なCOCOFUROたかの湯にも最近ガチャガチャが登場しました。
シールがほとんどですが、中にはキーホルダーやTシャツなどレアものや高価な商品も含まれているのでついつい回しすぎて散財してしまいます。
”COCOFUROたかの湯の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ガチャガチャにはまる理由はさまざまなことが言われていますが、脳科学的には3つの要素が大きく関わっています。
なお、今回はゆる〜い広島のサウナ猫「サウニャー」さんの画像を使わせていただきました。
記事の中で紹介されている商品は「サウニャーショップ」で購入可能ですので、ぜひのぞいて見てください。
そもそもガチャガチャってなに?
子どものころから大人になるまでに流行や時代の流れは目まぐるしく変化しています。
それに伴いわたしたちの生活にはさまざまなものが登場し、そして消えていきました。
MD、ガラケー、テレフォンカード…などなどたくさんあります。
デジタル化が進む中、わざわざ小銭を入れて機械を手で回すアナログなガチャガチャは、地味な存在でいつ消えてもおかしくないはずです。
しかしガチャガチャは現在に至るまで息長く存在し続けています。
「ガチャガチャ」とは正式にはカプセルトイと呼ばれます。
カプセルトイとは、「小型自動販売機の一種で、硬貨を入れレバーを回すとカプ セル入りの玩具等が出てくるもの、その取り出した玩具のこと」として経済産業省でちゃんと定められています。
大人ガチャとは、「造形やアイデア等に独特のこだわりがある対象年齢 15 歳以上のカプセルトイのこと」と定義されています。
その後、生物をリアルに表現したり、懐かしのキャラクターを題材とした玩具などがぞくぞくと発売され人気を集めました。
今ではガチャガチャは年間300億円以上の巨大産業となっています。
ガチャガチャは、アメリカからピーナッツを売る「ピーナッツベンダー」というマシンの改良品として輸入され、1965 年に日本に登場しました。
その翌年、アサヒグラフに紹介記事が掲載されて以降、爆発的に注目が集まり、初の国産10円機が誕生しました。
1969 年には100円機が輸入され、 当時流行っていたボウリング場に設置され大人気になりました。
1980年代になると、週刊少年ジャンプによりアニメブームが到来し、キン肉マンシリーズ、ガンダムシリーズがヒットし「第一次ガチャガチャブーム」が到来します。
1990年代には、精巧な作りのカプセルトイHG シリーズが発売されます。
ウル トラマンや仮面ライダーをはじめとしたキャラクターもののHG シリーズは大人をも魅了し、料金の幅も、200円、300円、40 円と広がり、「第二次ガチャガチャブ ーム」が始まります。
その後ガチャガチャは一時人気が低迷します。
しかし2010年に「シリーズ生きる土下座ストラップ」、2012 年に「コップのフチ子」が発売されると、大人ガチャに注目が集まり、「第三次ガチャガチャブーム」で沸き上がります。
その後は、2016 年に「パンダの穴」より発売されたシャクレルプラネットが大人気となりました。
大人ガチャが人気の一番の理由は、「 SNS に投稿するネタの対象として大人ガチャを利用したため、つまり現在増加傾向にある消費行動、ネットで話題になることをねらっておもしろい商品を購入するネタ消費の対象となったことである」と言われています。
大人がガチャガチャにはまる脳科学的な3つの理由
SNSでは、同じ種類のガチャガチャの商品をコレクションして、何体も並べられている写真をよく見かけます。
ガチャガチャはネットで話題に なることを狙っておもしろい商品を購入する「ネタ消費」にピッタリなのです。
また、ネタ消費はSNSだけでなく、日常の会話を生むきっかけにもなります。
ガチャガチャの商品を会社のデスクに置いておくことで、同僚との会話のきっかけや、友人を家に招いた時の盛り上がりの種にもなります。
どうぶつサウナは現在シリーズ7まで発売されていますが、自作でサウナ室を作り、そこに数々のどうぶつ達が並んで蒸されている情景はいつまでも眺めていたくなります。
期待効用のワナ
「期待効用」は宝くじを購入する時の脳の働きを考えると理解しやすくなります。
“宝くじの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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たとえばジャンボ宝くじは、1枚300円と低額であることとどこでも購入できる手軽さから、購入することに対する損失感は低く見積もられがちです。
その一方で当選したことよって得られる利益は非常に高く、脳は宝くじを簡単に手に入る割に期待感が高くとても価値の高いものと考えます。
一般的に宝くじを購入した人の平均金額は25000円くらいと言われています。
宝くじは1枚300円ですからだいたい80枚くらい購入している計算になります。
大人ガチャも300円くらいします。
脳が300円をガチャガチャに投入する程度のリスクなら危険性は低いと判断すると、期待効用はガチャガチャを回してより多くの報酬を求める方向へと働きます。
しかし何度かガチャガチャを回しても期待していた商品が出てこないと、脳はリスクを感じリスクを避けて安全性を求めるようになります。
脳はリスクが高いと感知すると期待効用はより多くの報酬を求めるのではなく安全な方向へと働きます。
このように脳は期待効用によって損をすることを嫌う一方で、多少リスクを背負っても低リスクであればより多くの報酬を求めるように働きます。
しかし時に脳はバグをおこして、期待効用を誤作動させてわれわれを誤った方向へ導いてしまうことがあります。
損失を招く可能性がある場合でも、利益の発生に複雑さが加わると脳はバグを起こして期待効用の理論通りには働くなります。
ですから宝くじを一度に80枚も購入するわけです。
ガチャガチャも一度に80回も回す人はいないでしょうが、合計すると80回くらい回したことがある人はざらにいるでしょう。
宝くじやガチャガチャは一見すると単純そうなゲームですが、脳を絶妙に刺激する考えつくされた策略と言えるかもしれません。
確証バイアスのワナ
ディドロ効果
『ディドロ効果』
ディドロ効果(Diderot effect)とは、これまでの生活環境になかった「理想的な価値」を持つ新たなものを手に入れた際、その新たな価値に合うような関連するもので統一しようとする心理的傾向のこと。
たとえば、キーボードを3万のモノに買い替えたら、マウスも無線の感度の良いものが欲しくなり、スピーカーも買い替え、最終的にPC本体も買い替えてしまう…1つ何かを手に入れた瞬間から他のモノもその水準に合わせたくなる心理効果がディドロ効果です。
脳は自分が欲しいモノが手に入ると、そこを基準に考え他のスペックが釣り合わないものに矛盾を感じます。
そのような矛盾から解放されたい欲望、欲しい物が手に入った快楽をもう一度経験したい欲望、新しい物がどんどんと頭の中で湧いてきて欲しくなる欲望、このような欲望の渦がディドロ効果を生み出します。
一見するとディドロ効果は悪い考え方であり、そのような考え方にはまるはずがない…と思いがちです。
しかし脳は自分の都合に合うように無理やりモノごとをねじ曲げて解釈する傾向があります。
もっとわかりやすく言えば、確証バイアスとは、自分の考えと一致しない情報=“反対の証拠”を見て見ぬふりをして、自分を正当化しようとする脳の本能です。
確証バイアス
『確証バイアス』
確証バイアスとは、認知心理学や社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。
認知バイアスの一種。
またその結果として稀な事象の起こる確率を過大評価しがちであることも知られている。
“確証バイアスの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考なぜ自分の誤りを認めず都合のいいように物事を処理しようとするのか?「確証バイアス」の意味を脳科学で探る
自分の誤りを認めず、自分の都合のいいように物事を処理しようとするのはなぜなのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外 ...
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確証バイアスは、人が自分の人生においての行動を肯定しながら生きていくのに必要なことなのですが、何か問題が出た時に自分に肯定的な情報で問題にフタをしてしまう状態におちいりやすくなります。
たとえば、ある女性が自分の人生がうまくいかないのは”顔の問題”だけだと信じて、美容整形に通うようになったとしましょう。
最初は目を整形し、その時は満足しましたがディドロ効果で他の部分も気になるようになり、貯金をくずしてどんどん整形を重ね、まわりから見ても依存的に見えるほどのめり込み、お金がなくなり、会社を辞めてもっとお金の稼げる一線を越えた仕事に就いてもまだやめられない。
しかしSNSなどで自分の行動を肯定化する情報を集めて、確証バイアスによって自分の行動を正当化しようとする。
楽しいと思うことの都合の良い面だけを信じてしまう、楽しければ楽しいほど、気持ち良ければ気持ち良いほど自分の行動を維持するために自分の行動を肯定化する情報のみを集めて信じてしまう。
こうなるとなかなか抜け出せなくなります。
ガチャガチャであるシリーズを集め始めるとコンプリートするまでやめられなくなる。
しかし実際に手に入れてしまうと、その瞬間から満足感や快楽は薄れていき、そして新しいシリーズが出ると、またコンプリートするまでやめられなくなってしまう。
ディドロ効果を確証バイアスで正当化するのは、ある意味脳の本能です。
しかしこれが行き過ぎると不幸や破滅を生み出します。
時に自分が確証バイアスのワナにはまり込んでいないか冷静になって自分を見つめなおすことも大切でしょう。
新規探索性のワナ
選択の連続の中で確実なことしか選ぶことができないとなると何も決定することができません。
そこで未知の世界に勇気を出して飛び込んでいけるように脳は仕組まれています。
脳の快感を覚える部分を刺激するドーパミンを利用して、不確実な一か八かの賭け事に楽しみや興奮を感じるようなシステムが構築されたわけです。
このように新しい物事や未知の世界に触れたいという性質を「新規探索性」と呼びます。
”新規探索性の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考目の前の確実な利益かそれとも未来の不確実な勝負か~一か八かの賭けを脳科学で探る
あなたは目の前の確実な利益を選びますか?それとも未来の不確実な勝負を選びますか? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経外科医と ...
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新規探索性が高い人は、新しいビジネスに貪欲であったり知的好奇心が強かったりと積極性が強くチャレンジ精神が旺盛で、人として望ましいと思われる性質を強く備えています。
しかし一方で、賭け事やギャンブルなどにはまりやすく物事に熱中して我を忘れてしまいやすいという、あまり好まれない性質もまた強く持っています。
しかもおもしろいことに、ドーパミンはガチャガチャで期待通りのモノが得られた時よりも、得られる直前…ガチャガチャを回している時にもっとも多く分泌されます。
遠足当日よりも遠足前日に準備をしている時の方がドキドキワクワクした…そんな経験をしたことがあるはずです。
脳が不確実な一か八かの賭け事を好む新規探索性はある意味好ましい脳の性質と言えます。
しかし一方で新規探索性は危険もはらんでいます。
賭け事やギャンブルにはまっていてもお金をしっかりとコントロール出来ていて周囲を困らせていない状況は依存とはいいません。
これは脳の報酬系が刺激に対して反応を繰り返しているだけの状況です。
受験勉強などのようにある目的に向かって頑張っている時は報酬系が活発に働き同じ状況と言えます。
一方で、依存症とは特定の物質や行為・過程に対してやめたくてもやめられない、ほどほどにできない状態です。
依存症で特に重要視されるのは、本人や家族が苦痛を感じていないか、生活に困りごとが生じてないか、という点です。
働かないで朝から晩まで賭け事やギャンブルに夢中で挙句の果てに借金を抱えてしまう…そんな状況です。
依存症とはまさに脳が利益追求に走るあまりバグを起こした状態と言えるでしょう。
“中毒の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
参考【サウナの脳科学】サウナジャンキーで何が悪い?中毒を脳科学で探る
サウナが大好きで夢中になりサウナ依存となるのは良いこと?悪いこと? どちらなのでしょう? そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。 このブログでは脳神経 ...
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”好き”の感覚が自分でコントロールできなくなり暴走してしまった状態が“依存=中毒”と言えます。
新規探索性によって分泌されたドーパミンは時間とともに吸収されてなくなっていくので、幸福感や高揚感は自然と終息していきます。
しかし脳にとって刺激が強すぎるような快感はドーパミンの吸収を邪魔するので、いつまでたってもドーパミンは脳を刺激し続けて幸福感や高揚感が持続する…いわゆる「お祭り状態」となります。
一度脳の中がお祭り状態となるとドーパミンの吸収はますますブロックされるので無限にお祭りが続く状態となります。
またもう1つやっかいなのは、脳はドーパミンが発した幸福感や高揚感を鮮明に記憶しています。
一度脳に快感が記憶されると、「またあの快感を得たい!」という衝動が強くなり、ますます依存症にのめり込んでいきます。
そしてまた快感を得てしまうと、その快感は上書き保存され、どんどん欲求が強くなっていきます。
しかも一度依存症になると、脳の報酬系回路のプログラムが書き換えられてしまうため、依存対象を完全に断ったとしても、一度書き換えられたプログラムは元には戻りません。
つまり一度快感を覚えてしまうと二度と忘れられなくなるのです。
薬物をやめてはまた手を出して…と繰り返してしまうのはこのためです。
依存症から抜け出せないのは、決して意志が弱いからではありません。
「二度とやるまいと心の底から誓っても、また楽しく気持ちよくなりたいという脳の渇望には勝てない」
ガチャガチャで依存症になるまではまり込む人はあまりいないかもしれません。
しかし脳は簡単に依存症におちいりますので、くれぐれもガチャガチャの回しすぎにはご注意ください。
大人もはまるガチャガチャ
そう思いつつつい、何回も何回も百円玉を投入してガチャガチャを回し続けてしまうものです。
特にサウナに入ってサウナトランスで快感を味わった後は、ドーパミンによって気持ちも高ぶりガチャガチャにはまり込みやすくなります。
そんな時は「大人がガチャガチャにはまる脳科学的な3つの理由」を思い出して、脳にブレーキをかけてあげてください。
“ガチャガチャの脳科学”のまとめ
大人がガチャガチャにはまる脳科学的な3つの理由を脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- サウナで蒸されてトランス状態となっていると、ついガチャガチャを回し続けてしまいます。
- 大人がガチャガチャにはまる脳科学的な理由は、「期待効用」、「確証バイアス」、「新規探索性」の3つのワナです。
- サウナの後にガチャガチャを回し続けている時は、脳がバグっている時なのでご注意ください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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