占いが当たるのはなぜなのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 占いが当たる理由であるバーナム効果をわかりやすく脳科学で説き明かします。
占いはなぜ当たるのか?
バーナム効果の脳科学
- 占いが当たる理由は「誰にでも当てはまる説明を無意識に受け入れてしまう」というバーナム効果が働くからです。
- さらには「占いが当たる」という情報によって「占いは当たるもので外れるわけがない」という情報操作がハロー効果によって引き起こされます。
- 血液型占いでは個人を無視して集団として性格を決めつける「ステレオタイプ」が働きます。
- 占いはこれらの脳のバグによって当たるように仕向けられた巧妙なワナなのです。
- 占いをどのように感じるかはあなたの脳次第ですが占いに翻弄されないためには科学的根拠に基づいた正確な知識を身につけましょう。
バーナム効果の脳科学
占いが当たる理由は「ほとんどの人に当てはまるような性格についてのありがちな説明を自分のことを言い当てられているとして受け入れてしまう」からです。
このような脳の働きを「バーナム効果」と言います。
そのように思っている人も多いでしょう。
しかし多くの人は知らぬ間にバーナム効果にあやつられています。
占いはバーナム効果をうまく利用して「当たる」と言うよりも「外れることがない」ようにうまくあなたの脳を誘導してきます。
この記事を読み終えた時にはあなたもきっと占い師の巧みな技を身につけているでしょう。
「バーナム効果」とは?
「バーナム効果」を知ると「占いが当たるのはなぜなのか?」…その理由が見えてきます。
「バーナム効果」のワナ
バーナム効果とは「あいまいな性格に関する記述を目にすると人は自分に当てはまっているととらえてしまう傾向」のことです。
「バーナム」の由来は誰でも楽しめるとされていたあるサーカスの団長の名前とされています。
「誰でも楽しめる」ということは言い換えればそのサーカスの楽しさは「誰にでも当てはまる」ということになります。
その結果「バーナム効果」という言葉が生まれました。
「あなたは○○という性格です。」
占いでそのように示されるとそれに合致する部分を後付けで自分の中から探し出してあたかも自分の性格を言い当てられたように思ってしまうわけです。
つまり占いが当たるかどうかは占いを受け取った側の解釈に依存しているのです。
占星術の専門家が新聞に無料で占星術を用いた性格診断についての広告を出しました。
多くの人が応募してきましたがその専門家は全員に対してまったく同じ内容の適当な性格診断の結果を送りました。
その後その性格診断が当たっているかの調査をしました。
結果はどうだったでしょう?
なんと94%もの人が適当な性格診断を当たっていると感じたのです。
この実験の詳細に関してはこちらの本を参照してみてください。
この実験からわかるように人はどのようなものであっても「これがあなたの性格診断の結果です」と言われると当たっているように感じ受け入れてしまうのです。
「バーナム効果」にはまる理由
バーナム効果は一種の脳のバグとも言えるでしょう。
よくよく考えてみるとある適当な性格診断が多くの人に当てはまるなんて何ともおかしな話です。
ではなぜバーナム効果のワナに人ははまってしまうのでしょう?
その答えは「人はそもそもさまざまな性格的側面を持っている」からです。
たとえば「おおらかで世話好き」の人がいたとします。
その人の性格占いをしたところ「神経質になることもあり他人のミスによく気づく」という結果が出たとします。
そのように思う人が多いかもしれません。
しかしこれを他人事ではなく自分のこととして考えてみるとこの占いは「当たっている」と感じる人が実際には多いのです。
普段はおおらかな人であっても自分のこだわっていること…たとえば趣味などに関しては細かいところまで神経質に気を配るというように状況によって人は見せる顔が変わるものです。
「神経質になることもある」と言われると脳は自分の中の神経質になる瞬間を探してしまうものです。
「どんな場面でも決して神経質にならない」なんて人はほとんどいないでしょう。
そのように考えるとほとんどの人は神経質な部分を見つけ出すことができるはずです。
「他人のミスによく気づく」というのもネガティブな意味ではなく世話好きで人の役に立ちたいという想いが強いといったポジティブな意味にとらえることもできます。
その結果この性格占いは「当たっている」と感じるわけです。
逆に言えばバーナム効果をうまく利用すれば占いは外れることはありません。
そもそも占いには決して外さないための魔法のような文章というものがちゃんと存在しています。
あなたは人から好かれ賞賛されたいと願っています。
あなたは自分自身に対して批判的な傾向があります。
あなたにはまだ利用されていない能力があります。
あなたには性格的に弱点もありますがたいていそれを補うことができます。
あなたは現在性的な適応に閲する問題を抱えています。
あなたは外面は自律的で自己管理しているように見えますが内面的には心配性で不安定な傾向もあります。
時々あなたは自分の決断や行動が正しかったのかどうか深刻に悩むことがあります。
あなたはある程度の変化と多機性を好み禁止や限定を加えられると不満を覚えます。
あなたは自分自身の頭で物事を考え証拠不十分な他人の発言をそのまま受け入れたりしないという自信があります。
あなたは自分のことを他人に率直に明かしすぎるのは賢明ではないと思っています。
あなたは時として外交的で愛想がよく社交的でありまた時として内向的で用心深く内気になります。
あなたが抱いている望みのうちのいくつかはかなり現実性のないものです。
あなたの生活における大きな目標の1つは安全です。
これらの文章は「不思議現象:なぜ信じるのか こころの科学入門」に記載されているものです。
これらの文章はいかようにも解釈ができるものであり誰にでも当てはめることが可能です。
言い換えればこれらの言い回しをうまく使いこなせればあなたも立派な占い師になることができるかもしれません。
バーナム効果のワナにはまってしまうのはある意味避け難いことなのです。
「バーナム効果」にだまされない方法
脳は自分に都合の良いものを集めて都合の良いように解釈しがちです。
自分への肯定感を高めることが目的であればそれも有効なのかもしれません。
しかし一方では「自分はできる人間である」という過大な自己効力感を抱いてしまう危険性もはらんでいます。
その結果自分にできると思って始めたことが失敗に終わってしまうと自己肯定感が低下してしまうことにもつながりかねません。
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科学的な根拠がない事柄によって不当に自分のパーソナリティが悪い影響を受けるという望ましくない結果を避けるためにはなによりも知識を身につけることが大切です。
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つまり
① バーナム効果というものがあるということ。
② 人は簡単にバーナム効果の影響を受けてそこからなかなか逃れることはできないということ。
この2つのポイントを押さえておくことで理不尽に自己肯定感を低下させることを防ぐことができるはずです。
「何か見落としていることはないか?」
「占いの結果がもし逆の内容だったら当たっていると感じるだろうか?」
「ハロー効果」のワナ
「ハロー効果」も占いが当たる大きな理由の1つと言えるでしょう。
「ハロー効果」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
ハロー効果という言葉をたとえ聞いたことがなくてもバーナム効果と同じように多くの人は知らぬ間にハロー効果にあやつられています。
そしてハロー効果はバーナム効果を増強させる効果も持ち合わせています。
「ハロー効果」とはどこか優れている(あるいは劣っている)点を見つけるとその他においても優れている(あるいは劣っている)と考えがちになる現象です。
“ハロー効果の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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脳は世の中のすべてのことを正しく把握しているわけではありません。
ですからわからない部分については推測するしかありません。
推測とは「ある事柄について情報や知識を元にして推量すること」です。
その際脳は「最初に持っていた情報」を指示する方向に物事を考えがちになります。
たとえば「とてもよく当たる占い師がいるんだって」と言われたとしましょう。
そう言われるとあなたはきっと「すごいね!どのくらい当たるの?」と聞き返すでしょう。
逆に「どのくらい外れるの?」と聞く人はほとんどいないでしょう。
つまり最初に良い情報を与えられるとそのほかの部分もすべて素晴らしいと推測してしまい「その占い師が言うことに間違いがあるはずがない」と思い込んでしまうのです。
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しかも脳は「当たるんだって」という話を聞くことで意識的に「当たる」という出来事を支持するような証拠を探してしまう傾向があります。
これを「確証バイアス」と言います。
「占いが当たる」というポジティブな情報を知らされてしまうと確証バイアスが働きその素晴らしさを裏付けるために否定的な情報には目が向かなくなってしまいます。
そこにバーナム効果が加わると占い師の言葉はもう信じずにはいられなくなってしまうのです。
たとえばあまり当たらないと噂されている占い師がいたとします。
ハロー効果が働けば最初の時点でこの占い師の印象は最悪です。
そのような占い師が何を言っても信じられずすべてが外れていると感じられるでしょう。
しかし仮にその占い師が言ったことが当たったとします。
期待していなかった占い師が大当たりな占いをすると脳はバグを起こして期待していた占い師が同じ占いをした時よりも評価は大きく跳ね上がります。
この現象を「ゲインロス効果」と言います。
脳は感情が変化する量が大きいほどより強く印象に残そうとします。
つまり印象が悪いというマイナスのところから大当たりな占いをするというプラスのところまで感情が大きく変化することによって本来得られるはずのものよりももっと大きな効果が得られるのです。
「ステレオタイプ」のワナ
ステレオタイプは血液型占いの時に登場する脳の現象です。
「ステレオタイプ」とは性別や出身地や職業などの特定の集団やカテゴリに対して個人の違いを無視して1つの特徴でまとめてとらえる現象のことを言います。
“ステレオタイプの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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ステレオタイプもバーナム効果を増強させる効果を持ち合わせています。
血液型占いはABO血液型によって人の性格や行動を異なる特徴にわけて分析する占いです。
たとえば
A型は几帳面(きちょうめん)でまじめ
B型は明るくマイペース
O型はおおらかでおおざっぱ
AB型は二面性のある変わり者
あるグループの成員の違いを1人ずつ詳細に把握するよりも共通している部分を先に把握してから個々の違いを知ることの方が効率が良いことが証明されています。
ですから個々の分析をするよりもまずは血液型で分析をしてそれから個々の分析に移る方が効率的なのです。
ステレオタイプによって血液型で分類されるとすでにこの時点でハロー効果が働きおおよその性格が言い当てられます。
そしてさらに「あなたは×型なので~な性格です」と言われるバーナム効果か働き占いの結果を信じずにはいられなくなるのです。
ですから多くの人は血液型占いを「当たっている」と信じやすいのです。
しかしステレオタイプのようにグループに所属する人をまとめて特徴づけることには当然大きな問題があります。
そもそも日本人のおける血液型の人数の比率はかなり偏りがあります。
A:O:B:AB = 4:3:2:1
10人いれば4人がA型、3人がO型、2人がB型、そしてAB型は1人ということになります。
圧倒的少数派であるAB型の特徴が「変わり者」であったことを思い出してください。
多数派から見たら「自分達とは違う」=「変わり者」ということです。
これは一種のハラスメントであり「ブラッドタイプハラスメント」と呼ばれます。
“ハラスメントの脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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少ないものは目立ち目立つ者同士は関連づけられやすいのです。
そして最終的には偏見や差別を生み出します。
“偏見と差別の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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そもそも血液型によって性格が決まるという説は科学的根拠に乏しく否定されいます。
上村晃弘、他:疑似性格理論としての血液型性格関連説の多様性 パーソナリティ研究:15(1), 33-47, 2006
しかしそれでも多くの人は血液型占いを信じてしまうのです。
占いが当たっているのか外れているのかを最終的に判断するのはあなた次第です。
「バーナム効果」をはじめとして「ハロー効果」や「ステレオタイプ」などさまざまな現象が重なり合って脳は占い通りに生きようとしてしまいます。
それを避けるには先ほども言いましたが与えられた占いの情報に流されるのではなく正確に検証するために科学的根拠に基づいた正しい知識を身につけることが何よりも大切です。
そしてこれらの脳のバグによってわたしたちは占いに翻弄(ほんろう)されていることを自覚しなければなりません。
“バーナム効果の脳科学”のまとめ
占いが当たる理由であるバーナム効果をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 占いが当たる理由は「誰にでも当てはまる説明を無意識に受け入れてしまう」というバーナム効果が働くからです。
- さらには「占いが当たる」という情報によって「占いは当たるもので外れるわけがない」という情報操作がハロー効果によって引き起こされます。
- 血液型占いでは個人を無視して集団として性格を決めつける「ステレオタイプ」が働きます。
- 占いはこれらの脳のバグによって当たるように仕向けられた巧妙なワナなのです。占いをどのように感じるかはあなたの脳次第ですが占いに翻弄されないためには科学的根拠に基づいた正確な知識を身につけましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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