お金と上手に付き合っていくにはどうしたらよいのでしょう?
どうしてお金は貯蓄した方が良いのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- お金の貯蓄をおすすめする理由である「限界効用逓減の法則」の意味についてわかりやすく脳科学で説き明かします。
「限界効用逓減の法則」の意味を知ろう
「限界効用逓減の法則」の脳科学
- 「限界効用逓減の法則」とは“物事はある限界を超えると満足度が低下する”という現象です。
- お金がもたらす幸福度は「限界効用逓減の法則」によって上限が決まっています。
- 他人と比べる「相対的な価値」で満足するのではなくお金を貯蓄して心に余裕を持って成功者になりましょう。
限界効用逓減の法則
【限界効用逓減の法則】(げんかいこうようていげんのほうそく)
一定期間に消費される財の数量が増加するにつれて、その追加分から得られる限界効用は次第に減少するという法則。
「限界効用」とはある財の消費量を増加させていくとき、一単位増えることによって得られる主観的な満足度。最終効用。
なんだかわかったようなわからないような感じかもしれません。
しかしほとんどの人は知らず知らずのうちに「限界効用逓減の法則」に支配されて生きています。
たとえばあなたは砂漠の中にいるとしましょう。
太陽の光がじりじりと照り付け砂の上には蜃気楼(しんきろう)が揺らめいています。
あなたの口の中は渇きすぎてざらざらです。
持ってきた水は2日前に飲み切ってしまいました。
あなたは地平線に見えるオアシスに向かって這(は)うように進んでいますが一向に到着する気配がありません。
そんな時に誰かがあなたに水を売ってくれると言ったらあなたは1リットルの水にいくら払うでしょうか?
あなたは水を買いそれを飲みました。
のどの渇きは少し落ち着きました。
次にまた水を1リットル買うとしたらあなたは今度はいくら払うでしょうか?
そしてそのまた次の1リットルにはいくら払うでしょうか?
生きるか死ぬかの、のどの渇きの限界に達している状況であれば、最初の1リットルは全財産をはたいても惜しくないと思うかもしれません。
しかし次の1リットルにはそこまでのお金を払う気分にはならないでしょう。
高価な腕時計1個分くらいの金額でしょうか。
さらにその次となるとヘッドフォン1個分くらいの金額でしょうか。
そしてまた次となるとコンビニで売っている水1リットルの金額しか払いたくないと思うかもしれません。
「限界効用逓減の法則」
一定期間に消費される財の数量が増加するにつれて、その追加分から得られる限界効用は次第に減少するという法則。
「一定期間に消費される財」はこの場合は水になります。
つまり消費される水が増えるごとに水によって得られる満足度は小さくなっていき、ある一定量を過ぎると満足度はまったく得られなくなってしまうのです。
この法則は水だけでなくほぼすべての物事に当てはまります。
今回は「限界効用逓減の法則」を学ぶことでお金の貯蓄をおすすめする理由を脳科学で説き明かしていきます。
年収はいくらであれば幸せですか?
そう思うかもしれません。
しかし実際には脳はそうは感じていないのです。
そこには「限界効用逓減の法則」が大きく関わっています。
「年収はいくらあれば幸せですか?」
この質問を言い換えれば
「年収がいくらあれば追加収入があっても幸福度が変わらないですか?」
このような質問になるでしょう。
実は年収に関する調査研究は世界中で行われています。
そしてその結果はちゃんと示されて世界中で似たような金額が示されています。
たとえば日本での研究では、年収500万円までは収入が増えるほど幸福度は上がります。
そしてそこから900万円までは横ばいが続きます。
しかし1500万円に達すると金額が上がるにつれて幸福度は少しずつ下がっていくのです。
年収1億円以上の“最富裕層”の満足度は世帯年収を10段階に分けた中で下から5番目という結果も出ています。
ヨーロッパでもおおよそ年収1500万円前後で幸福度がもっとも高く、それ以上になると追加収入が幸福度に与える影響はゼロになることが報告されています。
億万長者には億万長者なりの悩みがあるのでしょう。
そのような悩みはオリンピックが開けそうな大きなプール付きのお屋敷に住んでいても帳消しにはならないということです。
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これについても調査した研究がちゃんとあります。
その研究結果では「高額当選を果たした数か月後には当選者の幸福度はすでにそれ以前とあまり変わらなくなっている」と報告しています。
アメリカでも似たような研究結果が報告されています。
「戦争直後の1946年のアメリカ人の幸福度」と「戦後経済成長した1970年のアメリカ人の幸福度」を比較する研究です。
1970年にはほぼすべての家庭に車と冷蔵庫と洗濯機とテレビがあり生活水準は1946年と比較して50%以上上昇しています。
しかし人々が感じる幸福度にはほとんど差がなかったのです。
この研究は世界18か国で行われましたが結果はいずれも同じものでした。
物質的な進歩は幸福度には何も影響をおよぼしていないということです。
この現象は研究を行った経済学者リチャード・イースターリンの名前から「イースターリンのパラドックス」と呼ばれています。
基本的な需要が満たされてさえいれば、生活がより豊かになっても幸福度は変わらないのです。
しかしわたしたちはいつも少しでも収入を増やそうと躍起になります。
年収が増えようが、宝くじで高額当選しようが、お金が増えることで幸福度が変化しないことはすでに研究で明らかであるはずなのに、なぜより多くのお金を求めようとするのでしょうか?
お金の価値はどこにある?
お金がもたらす幸福度は「限界効用逓減の法則」によって上限がほぼ決まっています。
それでもお金を求め続ける理由はお金に「絶対的な価値」ではなく「相対的な価値」を求めているからです。
たとえばあなたとあなたの同僚が仕事で大きな成果を達成したとしましょう。
それに対するご褒美として会社から特別ボーナスがもらえることになりました。
あなたなら次のどちらを選ぶでしょうか?
A あなたひとりだけが100万円の特別ボーナスを受け取る。
B あなたは150万円、同僚は200万円の特別ボーナスを受け取る。
あなたが大多数の人と同じように考えるのであれば、おそらくあなたは『A』を選ぶはずです。
実際にあなたに支払われる金額は『B』の方が多いことは明らかです。
それでも多くの人は『A』を選ぶのです。
このように脳にとってお金の価値で重要なのは「絶対的な価値」ではなく「相対的な価値」なのです。
つまりただ単純に金額が多い少ないではなく、他人と比較してよりも大きい金額であることこそがお金の価値を引き上げるのです。
相対的な価値はなにも他人との比較だけではなくあなた自身の過去との比較によっても大きく変化します。
たとえばあなたの社会人になりたてのころの年収が500万円で、現在の年収が1500万円だとしましょう。
一方で社会人になりたてのころの年収が1500万円で、現在の年収が1000万円の人がいたとすると、あなたはきっとこの人よりも高い幸福度を感じるはずです。
これまでの年収の合計額は相手の方が多いにも関わらず年収が下がるよりも上がっている自分の状況に対して幸せを感じるわけです。
結局、「お金がもたらす幸福度の度合い」はお金の価値をどう解釈するかでどのようにでも変化するということです。
これは決して悪いことではありません。
なぜならお金があなたを幸せにするかどうかはあなた次第ということなのですから。
お金と上手に付き合う方法
いよいよお金の貯蓄をおすすめする理由を考えていきましょう。
「お金がもたらす幸福度」はあなた次第ということは説明しました。
英語には“ファック・ユー・マネー”という表現があります。
上司ともめて“ファック・ユー”と捨てゼリフを吐いてオフィスから飛び出して結果的に会社を辞めざるを得なくなっても構わないだけのお金という意味です。
いつ上司にたてついて会社を辞めても経済的に困らないだけの貯金と言うことになります。
一般的に“ファック・ユー・マネー”はおおよそ年収分の金額とされています。
つまりそれだけのお金があればたとえ収入がゼロになっても次の収入源を確保するまでの経済的な自立が保証されるわけです。
しかも“ファック・ユー・マネー”があれば心に余裕が持てるので物事を客観的にとらえ広い視野で生きていくことができるようにもなります。
十分なお金は持っているが使うお金は少ないというのが理想的な状態と言えるでしょう。
お金を貯蓄する以外にもお金と上手に付き合っていく方法がいくつかあります。
まず1つ目は所得額や資産額のわずかな変動にいちいち反応しないことです。
しょっちゅうお金のことを考えたからといってお金が速く増えるわけではないのですからあまり考えすぎてもしょうがないということです。
2つ目は裕福な人と自分を比較しないことです。
そんなことをしても幸せにはなれません。
誰とも自分を比較しないことが一番です。
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“「限界効用逓減の法則」の脳科学”のまとめ
お金の貯蓄をおすすめする理由である「限界効用逓減の法則」の意味についてわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 「限界効用逓減の法則」とは“物事はある限界を超えると満足度が低下する”という現象です。
- お金がもたらす幸福度は「限界効用逓減の法則」によって上限が決まっています。
- 他人と比べる「相対的な価値」で満足するのではなくお金を貯蓄して心に余裕を持って成功者になりましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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