屁理屈ばかり言う人を論破するにはどうしたらいいのでしょう?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 屁理屈を論破するために希望的観測と絶望的観測の意味をわかりやすく脳科学で説き明かします。
屁理屈とは?
屁理屈の脳科学
- 屁理屈を正しく論破するには、脳が生み出すプラス思考の希望的観測とマイナス思考の絶望的観測を理解することが重要です。
- 特に絶望的観測の「滑りやすい坂論法」は屁理屈の典型です。
- 「絶望よりは希望、希望よりは証拠、証拠がなければ熱意と責任」を理解して屁理屈を正しく論破しましょう。
「ああ言えばこう言う」「こう言えばああ言う」といった具合に非論理的で説得力がないことをいかにも筋が通ったことのように理屈っぽく言う人です。
屁理屈を言う人に親しみを感じたり好感を持ったりする人はほとんどいないでしょう。
どちらかと言うと不快で嫌われるタイプですよね。
屁理屈
「屁」はもともと「おなら」を意味しますが「頼りない」という意味もあります。
「筋の通った」という意味の「理屈」に「屁」が組み合わさって「苦しい言い訳」「言い逃れに過ぎない話」といった意味になります。
「屁」という言葉によって頼りない、納得できない、聞く気にもならないなどの否定的な意味が込められており、「屁理屈」は決していい意味では使われません。
屁理屈をいう人には特徴的な心理が働いています。
自分の否を認めたくない。
自分の過(あやま)ちを謝ることが苦手。
他人の話に耳を傾けようとしない。
プライドが高い。
否定的な考えばかり言う。
自分を正当化しようとする。
そんななんとも印象の悪い「屁理屈」ですが「屁理屈」という言葉が存在する以上、そこには当然存在すべき意味があるわけです。
脳が「屁理屈」を生み出す過程にはさまざまな要素が関わっています。
そこで今回は「希望的観測」と「絶望的観測」という2つの脳の性質を説き明かすことで屁理屈ばかり言う人を論破する方法を探っていきます。
自分に都合の良いことばかり予測する希望的観測
屁理屈には大きく分けて2つの種類があります。
1つ目は物事を自分にとって都合の良い方向にねじ曲げて考える「希望的観測」です。
2つ目は好ましくない結果が起きることを想像して過度に絶望してしまう「絶望的観測」です。
いずれも自分の都合の良いように話をねじ曲げる脳の悪い性質です。
希望的観測からは逃れられない
あなたは現在大学3年生で友人数人と食事をしながら将来について語り合っている…という設定です。
このような会話をする友人たちをしり目にあなたは一人冷静です。
あなたの意見が最も正しい判断でしょう。
友人たちは物事を自分にとって都合の良い方向にどんどん進めていきます。
この性質を「希望的観測」と呼びます。
希望的観測では、自分の主張に対して何か明確な証拠が与えられたわけでもないのにあたかも正しい推論を行っているかのように議論を進めていきます。
時に自分にとって都合の悪い情報も入ってくるかもしれません。
しかし希望的観測においては不都合な情報は無視されて、自分にとって都合の良い情報だけを採用して議論がなされます。
このように良い情報ばかりを並び立てて議論する方法を「チェリー・ピッキング」と呼びます。
チェリー・ピッキングにおちいりやすい人は自分に都合のいい情報だけを提示して相手を説得しようとする傾向があります。
「うまい話には裏がある」とよく言いますが、チェリー・ピッキングはまさに裏を隠して見栄えの良い表だけを主張する戦法です。
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希望的観測に巻き込まれると、冷静に考えれば筋の通っていない屁理屈とすぐに分かるような議論でも簡単に信じ込んでしまいます。
そんなふうに冷水を浴びせることができれば、希望的観測の呪縛から解き放たれるでしょう。
しかし相手との関係性やその場の雰囲気では、そのような指摘をすることは容易なことではありません。
たとえば目上の上司の楽観的な見通しに対して
などとストレートに反論できる人はそうそういないでしょう。
相手と対等な立場であったとしても、相手を傷つけてしまったり恨まれたりする可能性を考えればなかなか意見することは難しいでしょう。
事を荒立てたくない「いい人」はぐっと言葉を飲み込むのがおちでしょう。
希望的観測はあくまでもプラス思考で物事をとらえています。
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ですから相手の熱意が強いほど、それを否定するのは難しく飲み込まれやすいのです。
希望的観測は使いよう
ここまでの話の流れからすると希望的観測は悪い脳の性質と思われてしまうかもしれません。
しかし屁理屈において、希望的観測は決して悪いことばかりではありません。
先ほども言いましたが希望的観測はあくまでもプラス思考で物事をとらえています。
そしてそこには熱意が込められています。
ビジネスやスポーツなどでは「熱意」は評価されるべきものであって否定されるべきではありません。
たとえそこに根拠や証拠が不足していたり、ただの希望的観測であったとしても熱意を失っては前には進めません。
しかしその際には自分の発した言葉の責任は自分で取るという覚悟も合わせて示すことが必要です。
覚悟が強ければ強いほど、熱意は何倍にもなって相手に伝わるものです。
結果に確証が持てないことを進めるには、望的観測だけでは決してうまくいきません。
そのような言葉では相手に
と切り返されたらあっという間に玉砕です。
希望的観測に熱意と責任を上乗せして
ぜひ自分の責任でやらせてください!
うまくやってみせます!
そう言われたら
となるでしょう。
物事はいいようです。
そして希望的観測は使いようです。
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究極の屁理屈である絶望的観測
絶望的観測はまさに屁理屈の王道です。
「滑りやすい坂論法」のワナ
みなさんは「滑りやすい坂論法」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
あなたには現在大学の法学部に通う息子がいます。
息子は子どものころから弁護士になるのが夢だと言って勉強をがんばってきました。
しかしいざ大学に合格すると、遊んでばかりいて勉強している気配がまったくありません。
そんな息子に妻は次のように言いました。
この会話を聞いていてあなたはどう思うでしょうか?
最初はそう思うかもしれません。
しかし本当にそうなんでしょうか?
このような議論を「滑りやすい坂論法」と言います。
「滑りやすい坂論法」とは比較的小さな最初のステップがその後起こるべきではない結果に導く一連の出来事を不可逆的に引き起こしてしまうという考え方です。
「滑りやすい坂論法」では条件文の推移性が用いられています。
条件文では「AならばB」「BならばC」という明確な因果関係が示されています。
先ほどの具体例で言えば「司法試験に通らないと弁護士になれない」という部分です。
司法試験に合格しなければ弁護士になれないのは確かなので、明確な因果関係を表現していると言えます。
つまり「滑りやすい坂論法」では最初の出発点は間違えていません。
正しい主張をしています。
しかしそのあとが問題なのです。
これらの主張には明確な因果関係があるとは言い切れません。
曖昧(あいまい)な因果関係に基づいていると考えるのが自然でしょう。
たとえば「弁護士になれないとお金に困る」は「弁護士になればお金に困ることはない」という内容を含んでいることになります。
しかしこの条件文に含まれる「弁護士になれば」を「公務員になれば」に変えても「サラリーマンになれば」に変えても成立します。
このことから「お金に困ることはない」を引き起こすと考えられるのは「弁護士になること」だけではないので、「弁護士になれないとお金に困る」という主張には何の明確な証拠もないことがわかります。
しかし論理の構造に惑わされそこで用いられている条件文の因果関係をしっかりと理解していないと、間違えた論法で導き出された結論であるにも関わらず人は説得されてしまうのです。
推移性とは「AならばB」と「BならばC」が成り立てば「AならばC」も成り立つとする考え方です。
たとえば
風が吹くと砂埃が舞って目が悪くなる。
目が悪くなると眼鏡が必要になる。
眼鏡を買う人が増えれば眼鏡屋が儲かる。
結果として風が吹けば眼鏡屋が儲かる。
この文章でも最初のステップは間違えてはいません。
風が吹けば確かに砂埃が舞って目には悪そうですよね。
しかしその後の条件文が正しい因果関係に基づいていないうえに、すべてを一連の不可逆的な(=後戻りできない)流れとして結論づけています。
最初の具体的な例では「司法試験に合格できないと将来幸せになれない」という結論になっていくわけです。
これこそが「滑りやすい坂論法」のワナなのです。
「滑りやすい坂論法」では一度坂道を滑り転げると、あとはひたすら転がり続けるだけになってしまいます。
絶望的観測を論破せよ
好ましくない結果(=幸せになれない)が起きることを想像して過度に絶望してしまう(=司法試験に合格できない)のです。
「滑りやすい坂論法」は脳のマイナス思考が生み出す負の産物です。
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では相手が「滑りやすい坂論法」を用いて絶望的観測であなたを論破しようとしてきたら、どのように対抗すればよいのでしょう?
最も簡単なのは相手に「その証拠を見せて欲しい」とせまることです。
先ほどの例で言えば「司法試験に合格できないと将来幸せになれない」は本当なのか証拠の提示を求めるのです。
もちろんこのように反論すれば口論になることは想像に難しくないので、問題の解決にはならないと感じる人もいるでしょう。
まずは条件文をひとつずつ確認していくことです。
そもそも息子が今も弁護士になりたいと思っているのかを確認することです。
もし弁護士になるという夢をあきらめていないのであれば可能な限り協力すればいいのです。
「滑りやすい坂論法」を使って屁理屈で勉強して弁護士になるように説得しようとしてもうまくいくはずはありません。
もう弁護士になりたくないというのであれば「お金に困る」や「幸せになれない」などの間違えた結論を押し付けるのではなく、その理由を聞いて新しい目標について相談に乗ることです。
このように理論立てて息子と話をするためには、妻の滑りやすい坂論法が破綻した論理であることを見抜けているかが鍵となります。
あなたも一緒に坂道を滑り転げていては論破することはできません。
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希望と絶望のバランス
「屁理屈」を希望的観測と絶望的観測という観点から脳科学で探ってきました。
屁理屈は使いようです。
希望的観測から物事を始められる人は、仮に失敗しても「また新たに挑戦しよう!」と気持ちを切り替えやすいものです。
しかし絶望的観測の傾向が強い人は、失敗を恐れるあまり挑戦すらしないので失敗しない代わりに成功の可能性もありません。
屁理屈であってもプラス思考の屁理屈、根拠のない自信は有益に働くこともあります。
屁理屈を正しく論破するには
「絶望よりは希望、希望よりは証拠、証拠がなければ熱意と責任」
これに限ります。
“屁理屈の脳科学”のまとめ
屁理屈を論破するために希望的観測と絶望的観測の意味をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 屁理屈を正しく論破するには、脳が生み出すプラス思考の希望的観測とマイナス思考の絶望的観測を理解することが重要です。
- 特に絶望的観測の「滑りやすい坂論法」は屁理屈の典型です。
- 「絶望よりは希望、希望よりは証拠、証拠がなければ熱意と責任」を理解して屁理屈を正しく論破しましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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