人はいつでもどこでも、なぜ眠れないほどに不安になるのでしょうか?
そのような疑問に脳神経外科専門医であるへなおがお答えします。
このブログでは脳神経外科医として20年以上多くの脳の病気と向き合い勤務医として働いてきた視点から、日常の様々なことを脳科学で解き明かし解説していきます。
基本的な知識についてはネット検索すれば数多く見つかると思いますので、ここでは自分の実際の経験をもとになるべく簡単な言葉で説明していきます。
この記事を読んでわかることはコレ!
- 「不安」を和らげて治す方法をわかりやすく脳科学で説き明かします。
なぜ「不安」は存在するのか?
「不安」を和らげて治す方法の脳科学
- 不安は動物が生きていくためには欠かせない、脳が生まれつき備え持っている危険センサーの警報です。
- 不安を抱え込みすぎると、寿命に影響を与える可能性があります。
- 不安を和らげて治す方法をぜひ実践してみてください。
不安
『不安』 ふあん anxiety
不安は,日常生活の中で漠然とした特定できない曖昧な脅威を察知したときに、自我の危機としてだれもが経験する心的反応であり、不確定性と無力感を伴う心理的状態である。
しかし不安という言葉によって表現される意味と内容、程度、現われ方は多様である。
不安は主観的に体験される現象であるとともに、生体内の多システムのさまざまなレベルで生じる測定可能な生理的反応でもあり、同時に第三者が観察することのできる言語的および非言語的な客観性を帯びた行動的反応でもある。
きっとほとんどいないでしょう。
多かれ少なかれ、いつでもどこでも不安はわたしたちにつきまとってきます。
ではそもそもなぜ「不安」などというやっかいなものが存在するのでしょう?
あなたは神であり、これから新しい種類の動物を作ろうとしているとしましょう。
まずはハードウエア=外観(見た目)です。
自分の思いのままの動物を空想しながら描き上げました。
続いてはソフトウエア=中身(性格)です。
臆病な性格がよいでしょうか?
強気な性格の方がよいでしょうか?
ここで重要なのは脳の「危険センサー」です。
長く生きのびていくためには、敵から身を守る危険センサーが重要です。
せっかく新しい動物を作ったのに、すぐに敵に殺されて絶滅してしまっては意味がありません。
ではどのくらい危険に強く、どのくらい敏感に素早く危険を察知して対応できるようにすればいいでしょう?
まだ目に見えていない今後予想される危険に対してどのくらい感知できるようにしておけばよいでしょう?
心配しすぎて危険センサーの設定を高くしすぎると、臆病すぎていつも敵におびえてしてその場から一歩も動けなくなってしまいます。
しかし危険センサーの設定を低くしすぎると、すぐに敵に襲われてしまいます。
つまり「不安」を感じる度合いはほどほどにしておくのがちょうど良いのです。
危険センサーの設定は適度で適当なレベルに設定しておくべきです。
ではいったいどれくらいが適度で適当なのでしょう?
高くなりすぎず、とはいえ低くもなりすぎず…その調整はなかなか難しいものです。
“適当の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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できれば用心過ぎるくらいの設定の方がいいのかもしれません。
動いた影を見ただけでも、おびえてその場から一目散に逃げだすくらいの方が、逃げ遅れて敵に殺されるよりもずっとましです。
つまり臆病で心配性でいつも不安を抱える度合いは、エサを探しに行けなくなるほどでなくても、かなり高めに設定しておいた方がいいということです。
このようにしてどんな動物も、進化の過程で危険センサーをどんどん高めに設定して生きのびてきました。
“人類史の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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「不安」という危険センサーの警報は、生きのびていくためには欠かせないものであり、脳内にしっかりと組み込まれた大切な感情です。
そのようなことをしたら生きのびてはいけません。
わたしたちすべての人間が多かれ少なかれ何らかの不安を抱えて生きています。
100万年もの人類の歴史において、わたしたちは常に不安を抱えていたからこそ生きのびたと言えるでしょう。
ですから不安を感じること自体悪いことではありません。
しかし現在社会において、いつでもどこでも、眠れないほどに不安になるのでは逆に生きづらくなってしまいます。
「なんとか不安を和らげて治したい」そのように思っている人は少なくないでしょう。
なぜ「不安」は悪者なのか?
今までの話では、「不安」は人間が生きていく上では欠かせないものであり、生きのびるための重要な危険センサーの警報であり、決して悪いものではないと説明してきました。
あなたが今生きていられるのは、人間の祖先たちが多くの不安を抱えて敵から身を守って来てくれたおかげです。
しかしあなたが今生きている現代社会では、ほとんどの不安は命を脅かす危険とは直結していません。
脳の中が不安でいっぱいになっても、実際には自分の身に危険が及ぶことはほとんどないでしょう。
何かにつけて心配するのをやめられないから心配ごとを抱えているだけで、それらの90%くらいは不要な不安でしょう。
しかし現代社会においても、不安は時にわたしたちの命に影響をあたえることがあります。
狩猟時代のように不安によって外敵に襲われることはありません。
しかし恒常的な不安は慢性的なストレスにつながり、わたしたちの寿命を縮める可能性があるのです。
スズメにはアライグマ、フクロウ、ハヤブサなどたくさんの天敵がいます。
実験では、森の一部をネットで完全に覆(おお)ってスズメの天敵を締め出し、スズメにとって安心して生きていける環境の中でスズメに生活してもらいます。
そして森の中に目立たないようにスピーカーを数台設置します。
あるスピーカーからは「スズメの天敵となる動物たちの鳴き声」、あるスピーカーからは「穏やかな自然の音」を流します。
このような環境の中で、スズメはどのような反応をするでしょう?
スズメにとって不安をあおる「天敵となる動物たちの鳴き声」を聞いたスズメは、不安を解消する「穏やかな自然の音」を聞いたスズメより、産んだ卵の数が40%も少なかったのです。
そればかりか、産んだ卵も小ぶりで、孵化(ふか)した卵の数も少なく、生まれてきたひなも病弱で多くは死んでしまいました。
この実験結果は、実際に自分の身に危険が及ぶような脅威がなくとも、不安をあおるだけで命に影響が及ぶことを証明していると言えるでしょう。
わたしたちは敵に対して不安を覚えるだけでなく、ありとあらゆるものに対して不安を感じてくよくよ思い悩みます。
その結果、慢性的な不安をいくつも抱え込むことになり、間違えた決断をしやすくなったり、時に病気になってしまったりすることもあります。
先ほども言いましたが、不安は生まれつき脳に備わった本能ですから排除することはできません。
しかし不安を和らげて治す方法は存在します。
「不安」を和らげて治す方法
「不安」を和らげて治すもっとも方法は、先ほどの実験で言えば「天敵となる動物たちの鳴き声」、つまり脳の中の危険センサーの警報をオフにしてしまえばいいのです。
古代ギリシャやローマの哲学者たちは、不安を取り除くために次のような方法を推奨していました。
あなたに影響を与えるものと、与えないものを見極めなさい。
あなたに影響を与えるものにはきちんと取り組むべきだが、あなたに影響を与えないものについては考える必要はありません。
一見すると簡単そうに聞こえるかもしれません。
しかし実際にやってみようとするとなかなかできないものです。
危険センサーの警報のスイッチがちゃんと存在し、オンにしたりオフにしたりできれば問題はないでしょう。
しかしそのようなスイッチなど存在しません。
そこで次に登場したのが「瞑想(めいそう)」です。
脳の中にプラス思考を張り巡らして、さまざまな不安を解決しようとするのが瞑想です。
“プラス思考の脳科学”についてはこちらの記事もご参照ください。
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瞑想には確かに不安を鎮(しず)める効果があります。
しかし効果が続くのは瞑想中だけです。
瞑想の世界から現実に戻ると、元の不安が再び襲ってきます。
哲学も瞑想も効果がある人もいるかもしれません。
しかし多くの人が望んでいるのは、もっと具体的な方法でしょう。
不安のメモ帳を作る
ノートを1冊準備して、表紙に「わたしの不安メモ」というタイトルをつけてください。
そして1日の中で時間を決めて、そのノートに自分が不安に感じていることすべてを書き出してみてください。
不安になって当然の深刻な問題も、ちょっとした些細(ささい)なことも、何となくの漠然(ばくぜん)としたことも、とにかく気になることはすべてです。
それを書き終えると、不思議とその日の残りの時間は、ある程度不安なこととは無縁でいられるはずです。
なぜなら不安なことはちゃんと記録されているので、ほったらかしにされたり忘れ去られたりしているわけではないと脳が認識するからです。
これを毎日の習慣にして、毎日新しいページに不安を書き出していきます。
週末になったら、その週に書いたことすべてに目を通してみてください。
すると、いつも同じ不安に悩まされ続けていることが具体的にわかってくるはずです。
頭から離れない不安なことは、あえて必要以上に考え込んでください。
そうすればそれ以外の不要な心配ごとは脳の中から自然に消滅していき、不安になって当然の深刻な問題の解決だけに集中できるはずです。
そして考えられる限り最悪の結果を想像し、それについて集中して考えるようにするのです。
そうしているうちにたいていの不安な問題は解決されていきます。
保険をかけよう
保険は人間が生み出した素晴らしい発明です。
保険の真価は、損害が発生した時の金銭的な補償にあるのではありません。
保険の有効期間は不安を減らせるという点にあります。
どんなことにも自分なりに最適な保険をかけておくことが、不安を深刻化させないもっともスマートな方法でしょう。
仕事に全集中
どんな仕事でも、仕事をしている時間は不安から気をそらすことができます。
仕事から得られる満足感は、哲学や瞑想よりもずっと不安をおさえこむのに効果的であり、最良のセラピーになります。
遊びや趣味の時間も不安を和らげる効果があるでしょう。
しかし遊びや趣味では仕事ほどの満足感や達成感は得られません。
仕事ほど気をそらせて不安を和らげてくれるものはないはずです。
「不安」を和らげて安眠しよう
ご紹介した3つの「不安」を和らげて治す方法をぜひ実践してみてください。
そう思っている人もいるでしょう。
不安を完全に消し去ることはなかなかできません。
しかし何もしなければ変わることはありません。
3つの方法があなたの人生を悩み知らずにして、良い人生を手にするチャンスを与えてくれるはずです。
「わたしはもう老人だ。これまでの人生ではいろいろな心配ごとを抱えていたが、そのほとんどは現実にはまったく起こらなかった。」
マーク・トウェイン(アメリカの作家)
不安を和らげて治すことができれば、マーク・トウェインが晩年になってようやく到達した境地に、あなたはもっと若いうちにたどり着くことができるはずです。
“「不安」を和らげて治す方法の脳科学”のまとめ
「不安」を和らげて治す方法をわかりやすく脳科学で説き明かしてみました。
今回のまとめ
- 不安は動物が生きていくためには欠かせない、脳が生まれつき備え持っている危険センサーの警報です。
- 不安を抱え込みすぎると、寿命に影響を与える可能性があります。
- 不安を和らげて治す方法をぜひ実践してみてください。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
今後も長年勤めてきた脳神経外科医の視点からあなたのまわりのありふれた日常を脳科学で探り皆さんに情報を提供していきます。
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